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超人クラブ 先生(リサーチャーフェイバリット)の実力 その11

部屋の中に誰かいる。

耳を澄ましてあたりを伺う菊留先生の前にアレンは立ちはだかって強い口調で言った。

「どうして、僕をここへ連れてきたんですか」

憎むような、怒りに満ちた目を先生に向ける。

あたりを気にするのをやめ、先生はアレンと向き合った。


「グローム教授に何を言われたのかわからないけど、君はずいぶんとリアム・ローレンを誤解しているようだね。」


「誤解なんかしていない。先生は確かにすごい。ビルを破壊して、さっきだって、ダイレクトでこの部屋まで瞬間移動して。」


アレンの言葉にため息をつく。

「研究者のお気に入りにふさわしい実力がある。それに比べて僕は」

首を左右に振って否定する。

「それが誤解だと言うんです。」

「なにが誤解なんですか。僕は」

「アレン、君には誰にも負けない癒しの力がある。そうでしょう?」


「こんな力、何の役にも立たない。」

「本当にそう思ってるんですか。」


語尾が強くなり、そして、先生の顔は悲しそうだった。

先生は長椅子の横にあるサイドテーブルの引き出しからペーパーナイフを取り出した。

そして逆手でナイフ握り、思いっきり左の手のひらに突き立てた。

左手はみるみる血に染まっていく。


「先生、何てことするんですか。」

仁が慌てて叫んだが後の祭りだった。

先生はさらに手のひらをぐりぐりとえぐり始めた。

苦痛に顏がゆがむ。

「先生、止めて下さい。」

仁の言葉を無視して先生は血液のしたたりおちる血まみれの左手をアレンに差し伸べて言った。


「さあ、アレン、君が治してください。」

「イヤです。自分で治せるでしょう。」

「……まだ、足りませんか?」


先生は右手で左手首を掴み圧を加えた。

『ボキッ』と鈍い音がする。途端に左手首がだらりと下に垂れ下がった。

「せんせい!」

悲鳴に近い仁の叫び声。


「私は治しません。君がやるんです。」

「もし、僕が治さなかったら?」

「そうですね。私は出血多量で死ぬかもしれません.」

そう言って自分では治す意思がない事を表明する。


「わかりました。やればいいんでしょう?」

アレンは先生のすぐそばに座り込み暫く左手を見つめ、両手で包み込んで額に押し当て目を閉じた。

仁は信じられない光景を間のあたりにする。

アレンが目を閉じた途端に先生の左手首の骨は元の角度に戻り、ものすごいスピードで傷がふさがり始めた。


「わかりますか?アレン。

医者が何年もかけて習得する技術をなんの苦労もなく君は施すことができる。

 すごい事ですよ。生まれながらに君はこの能力をもっている。

 これこそが、真のリサーチャーフェイバリットの実力なんです。」


アレンは眼に涙をためて先生を見る。

「残りの能力は薬で引き出された後付けにすぎない。君はもっと自分に誇りを持つべきなんです。」


『自分に誇りを持つ』かつての自分に出来なかったからこそ、あえて先生はアレンにこの言葉を告げた。


彼のコンプレックスが無くなるようなるにはまだまだ時間がかかるだろう。

しかし、この若者の未来を思えば凍えた心が氷解するのを願わずにはいられなかった。



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