超人クラブ 幕間
「カララン」
高森要がいつも通り呼び出されたファミレスに入ると店員が声をかけてきた。
「おひとり様ですか?」
「あの、いえ、連れがきてるはずなんだけど」
そう言いながら店内を見回し、超人クラブの面々をさがすと
奥まったテーブル席に菊留先生が座っている。
先生は相変わらず分厚い本読んでいた。
「ほらっ、あそこです」
先生を指示して了解をとると、店員は頷いて忙しそうに厨房の方に消えていった。
ファミレスというのは、一人の客に長時間構っていられるほど暇じゃない。
人気店ならなおさらだ。
「菊留先生」
声をかけながら席に近づくと先生は今、気が付いたといった風情で
顏をあげた。
「やぁ、高森君」
「先生、何読んでるんですか?」
「六法全書です」
「六法全書?先生は弁護士にでもなるつもりなんですか?」
「いえ、この間、不退去が刑法の何条か思い出せなかったんで本を買ったんです」
「それで、ついでに読んでいると」
「まぁ、そうですね。なかなか覚えられなくて」
先生は笑いながらコーヒーを口に運んだ。
超人クラブの集会はいつも日曜に行われる。
土曜の夜にゲームざんまいし生活リズムが崩れ眠たい俺には結構つらいものがある。
あくびをしながら先生と差し向かいで座ると
来客を告げるファミレスのベルの音が響いた。
入ってきたのは佐藤仁先輩と角田護先輩だった。
「先輩、こっちです」
声をかけると二人は軽く手を挙げてこちらにやってきた。
「おはようございます。先生」
「おはよ、高森」
「全員そろいましたね。じゃあ、話を」
「あれっ、泉と智花先輩は?」気が付いて俺が尋ねると
「連絡してません。」と先生は即答した。
「実はですね。この小説を書いてる紫雀から指令がありまして」
「えっ?」
「はっ?」
「はい?」
「原稿が書けないのでお前らで場繋ぎしろと」
先生は自分の携帯を取り出しメール画面を見せながら言う。
「ええーっ」
「またぁー」
「あいつ、ほんとにサイテー」
「この話4話までしか書くつもりなかったのに、二話目を直してたら
ずるずる書くことになったって言ってたし」
と怒る高森要
「二話目投下するのに一か月かかったのはそのせいですか」
先生ははーっとため息をついた。
「そうですよ。渡される台本もほんと酷いです。
俺のセリフはほとんど『アドリブで』とか書いてあるし」
めったに感情を表さない佐藤先輩も一緒になって怒っている。
「あーっ、僕もです。ぎりぎりでセリフ変更させられる事も多いですしね」
三人は喧々囂々、不満の表明を始めた。
当分収まりそうもない作者への恨みつらみで場が盛り上がっている所へ
菊留先生の携帯にメール受信マークがついた。
新たなメールを確認した菊留先生は言った。
「困りましたね。男性だけで「愛について語れ」という指令がきています」
「えっ?」
「はっ?」
「はい?」
顏を見合わせる三人
「せんせー、やっぱ、無理、智花と泉、呼んだ方がいいと思うけど」
「そうですね……」
先生は試案するように天井を見上げた。
少し離れた席からこの様子を伺う謎の人物は
机に突っ伏して戸惑う四人の様子を笑いながら見ていた。
彼らは知らなかった。この人物こそが紫雀本人であることを。
続く




