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超人クラブ 先生(リサーチャーフェイバリット)の実力 その4

教授は言いたい事を全部言うと部屋を出て行った。

教諭と入れ替わりにアレンが入ってきた。

アレンはボードに刺さっていたナイフを一本回収して俺に話しかけてきた。


「ねぇ、仁、君の超能力はオールマイティーなんだってね」

「……それが何か?」

「僕の為に死んで」

シュッと音がして耳もとでバァフォッと音がした。

横目で見てもはっきりとわかるフォルム。

アレンが寄越して投げたナイフがベッドのマットに突き刺さった音。


驚きのあまり目が丸くなる。

「なんだ。怖いの?安心してよ。僕はナイフ投げはうまい方なんだ。

 狙ったものを外さない程度にはうまいよ」

それって確実に刺さるって事?

「おい、ちょっと、冗談はよせよ」

「冗談?何言ってるの?本気だよ」


アレンは自嘲気味に笑って見せる。

「教授にとって僕は役立たずの実験体だ。

 教授が君を見つけたとき、君の能力にほんとに狂喜乱舞してたよ」

アレンは眼を伏せて言う。

「その時の僕の絶望を君は理解できないだろ」

彼はベットの端に座って俺の目の中を覗き込む。

菫色すみれいろの瞳がもの言いたげに訴えかけてくる。


彼はさらに言葉を続けた。

「君が死んだら、君の心臓を食べるよ。そうすれば

 君の能力は僕のモノになるでしょ」

「なんだ。その悪魔儀式的な何か。

 そんなんで俺の力が君のモノになるわけないだろ。」

「君はグリム童話を知らないんだね」

「知ってる。シンデレラとか白雪姫だろ」


「白雪姫は実の母親に美しさを嫉妬され殺されそうになる。

 殺害を命じられたのは猟師で女王は姫を殺し肝臓をとってくるように命じるんだ。」

「それから?」

「白雪姫の美しさを自分のものにするために猟師が持ってきたイノシシの肝臓を

 彼女の肝臓と信じて塩ゆでにして食べるのさ」

死者の血肉が強壮剤や媚薬になるとする考えは欧州をはじめ世界中に見られる。


「知ってるよ。カニバリズムっていうんだ」

「なら、いいよね。君の心臓をたべても」

アレンはそう言うと俺の耳元のすぐそばに刺さったナイフを引き抜いて

俺の頬に当てる。

ナイフの冷たい感触が否が応でもこの状況を説明している。

「おい、せって。アレン」

アレンは恍惚とした表情で俺の頬を傷つける。

ナイフを引いた後は血が滲んできてすぐさま赤い球を結んだ。

「痛っ」

アレンはクスリと笑ってその傷をなぞり

指についた血をぺろりと舌で舐めとった。

「君の血も鉄の味がするんだね。ひとし

アレンの異常性にぞくっと背中が寒くなる。

「アレン、君は頭おかしい。なんでそんな発想になるんだよ」

俺はやるせない気持ちになってアレンに言葉をかける。


「そう、僕はおかしい。そんな事わかっている。

 でも、君の存在が僕の心をおかしくさせるんだ」


アレンの心の内が判って彼の為に死んでもいいと思ってしまえるのは

なぜだろう。泣きたいほどの深い絶望

……彼の心がナイフの様に俺の心に突き刺さってくる。

もともと俺には自殺願望があるのだからこのまま死んでも構わない。

どこで死んだって同じだ。アレンの為に死ぬのも悪くない。

そんな気持ちが頭をもたげる。


その時、智花の顔を浮かんだ。

「約束して、明日は無傷で学校に来るって」

彼女はそう言って俺から眼鏡を奪った。


「ごめん。アレン、今、君に俺の命をくれてやるわけにはいかない」

「わかってる。ごめん、僕も君と同じテレパスだから」


彼はそう言って再び俺の頬の傷を指でなぞった。

いたみがすっと消えていくのがわかる。

菊留先生と同じ癒しの能力だ。この能力は俺にはない。

わからない。先生の力を継承しながら

俺の何を羨んで心臓を食べたいと言ったのか。


破壊しかできない俺の能力より、壊れたものを再生させる

アレンの能力の方がずっと素晴らしいと思えるのに。




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