超人クラブ アナザー その276
「これ、待たんか」
一ノ宮は眼をしばたいた。
子猫を抱えた目の前の子供は池の水面に立っている。
「ほうっ、たいしたモンやなぁ」
水面に氷を張るのは上級の陰陽師にしかできない。
たかが六歳の子供がそれをやってのけたのだ。
「ボン。何にもせえへんからこっちに戻ってきや」
「ほんと?ほんとに何にもしない?」
「ああ、約束や」
「わかった」
裕也は一歩踏み出そうとして足がすくんだ。
「だめ、動けない」
薄氷の上に立っているも同然だった。裕也の貼った氷面はあまりに薄くて頼りない。
動けば亀裂が入りかねない。
「大丈夫や。ダメと思うたらダメになる。自分の力を信じるんや」
「怖いよ」
「少しずつ、池の淵に向かって進むんや」
一ノ宮は池の真ん中から淵に歩いてきた裕也をヒョイと抱き上げた。
「ボンは正義感の強いええお子やな、ボンやったら、オカンが救えたかもしれへん」
「言ってる意味がわからないよ。僕には何もできなかった。だから母さんは死んじゃったんだ」
「そやな。ボンには何の力もない。仕方ない」
まだ、泣いてる裕也に一ノ宮は言った。
「ボンはくやしいか?」
何が?と裕也は思う。
「真奈さんは湖東一ノ宮の相方やった」
そうだ。相方だったんだ。
「相方になったから死んだんや」
その通りだった。
「どうや。ボン、力をやろうか?」
「力?どんな……力なの?」
裕也はぐいっと乱暴に目をこすり涙を拭った。
「権力や。陰陽師の中で一番強い。最高位。湖北一ノ宮という地位や」
「一ノ宮になれば、母さんを救えたの?」
「一ノ宮には掟を変える権限がある。ボンが一ノ宮になって相方の制度を変えたらええ」
「……そんな事。してもいいの?」
「儂には無理やった。でも、ボンなら出来るやろ」
「……うん」
「ボン。陰陽師の技を身に付けろ。誰より強くなれたら、この地位をお前に譲ってやろう」
「ほんと、約束だよ」




