超人クラブ アナザー その274
裕也の母親は湖東一宮の『相方』だった。
相方と言えど恋愛も結婚も自由だ。
母は相方に指名された後、結婚し裕也が生れた。
裕也は、生れてからすぐに湖東一宮の本部に引き取られ養育される。
相方の両親を持つ子供は、次の相方になる可能性が高いから大事に育てられる。
子供は週三日だけ両親と過ごすことを許された。寮に入っているようなものだ。
一般家庭を考えれば変な話だが、生れた時からこの環境なら変だと思わなくなる。
子供たちは養育棟で過ごす間、陰陽師を理解するために、年に見合った陰陽師の術法をならう。
ほんの手ほどき程度だ。だが、裕也の陰陽師としての才能は群を抜いていた。
その才に惚れ込んだのは湖東の当主ではなく、たまたま屋敷を訪れていた湖北一の宮の当主だった。
裕也は請われて湖北一宮に籍を移し一ノ宮の養子に迎えられた。六歳の冬の事である。
「ボン、可愛らしいお子やなぁ。どこの子や。
こないなとこで一人で遊ばんと、向こうで皆とあそんだらええのに」
正月三が日が過ぎてまだ寒い屋敷奥の池のほとりで、裕也は杖をつく初老の男性に声をかけられた。
見知った顔ではない。どうせ、亡くなった母親の葬儀に来た弔問客の一人だろう。
裕也は興味なさそうな顔で男に言った。
「おじさん、誰?」
「わてか、わては湖北一ノ宮と言われとるもんや」
「一ノ宮様?」
「そうや」
「……偉い人なんだね」
俯いて足元にしゃがみこんだ。
どこから入り込んだのか、小さな子猫が足にまとわりついてじゃれていた。
「えらくなんかないよ」
「一の宮様は、呪術の達人で使い魔を使役し物事の吉兆を占う偉い人だって、母さんが言ってた」
「そうか。わて、そう言われとんのか」
子猫はみゃうみゃう鳴きながら裕也をみあげている。
裕也は撫でるわけでもなくじっと子猫をみつめていた。




