超人クラブ アナザー その233
葛城裕也との間に気まずい空気が流れたその時。
「おはよう、高森」
雑踏の中、生徒用玄関の入り口から聞き覚えのある声が響きわたった。
人垣がさっとわれた。
割れた先にいたのは案の定、角田先輩だった。
先輩は艶やかな長めの髪を首の後ろで束ね、第一ボタンまできっちり絞められた制服姿でスクールバッグを肩にかけ優等生的なオーラを嫌味なまでに放ってその場に立っていた。
10メートル程離れた俺と先輩の間に立つ人間はひとりとしていない。
先輩は真っすぐその道を突き進んでくる。
驚くにあたらない。先輩がいれば、皆先輩に注目し道を開ける。
それは俺にとってあまりにも見慣れた光景だった。
『おっどろいた。氷の貴公子の登場かよ』
『二年の角田か。アイツがプライベートで人に声をかけるなんて信じらんねぇ』
『氷の貴公子様。いつもながらに美しいわぁ、あのクールさがたまんなぁーい』
『あの子、高森要だよね。氷の貴公子とお知り合いなんてすごい』
『いいなぁ。美形とわんこ。すっごい絵になるぅ。』
一般生徒の小さな声が拡声器をとおしたみたいに大音量となって耳に響いてくる。
超能力って厄介だ。俺は数日まえから続いているこの現象に辟易した。
そして聞き慣れたシャッター音。
俺達は恰好の被写体だったらしい。
気が付けばたくさんのスマホを向けられ写真をとられていた。
先輩の美貌は男女を問わず魅了する。
アナザー世界でも先輩の信者は存在し彼らから『氷の貴公子』というあだ名を進呈されてるらしい。
妙に納得した。
先輩の穏やかな口調とはうらはらにその目は笑っていない。
黒曜石の双眸が氷の輝きを伴って俺の横に立つ裕也を睨みつけている。
険のある眼差しをうけて裕也は口を開いた。
「……あなたは……あの時の」
「……離れろ」
先輩の口から言葉がもれた。




