超人クラブ アナザー その228
コンコンとノックの音がした。
「……要、入るわよ」
返事をまたずにガチャッと戸が開いた。
電気のスイッチが入る音がしてパッと部屋が明るくなった。
ドアのすぐそばに佇む姉の姿を認めて要は声をかけた。
「……何か用?ねーちゃん」
「要。あんた、なーんか悩んでるでしょ」
「……うん、悩んでる」
「最近のあんたは変わったわよね」
「……そうかなぁ。別に変えたつもりはないけど」
動揺を隠してベッドから身を起こし作り笑いで答える俺。まさか?気づかれた?
「ううん。変わったわよ。素直になって可愛くなった」
サッと頬が紅潮した。
「はずいなぁ。俺、男なんですけど、可愛いとかやめて欲しいんですけど」
照れ隠しでプイッと横を向きそう言うと姉はぷっと噴出した。
「この受け答えもうける~。もうっ、ほんと可愛いんだから」
姉は可愛いは正義の人だっけ?
彼女はベッドの端にポンと腰かけ俺の頭に手を伸ばし髪の毛をわしわしと撫でまわした。
「……ねーちゃんはぜんぜん変わんないんだね」
ほんとに変わらない。向こうの姉もこんな事してくる。
「あら。そうかしら、こんな事すんの久しぶりじゃない?」
「いつぶりだったかな」
「五年くらいかな」
「そうだっけ」
「そうそう、あんた劇団に入った後どんどん憎たらしくなってさぁ。
その頃から会話もなくなったじゃない」
五年ってこっちのオレが劇団に入って三年目くらい?
随分前から姉と会話をしなくなったんだ。
うわぁ。環境ってこわいや。
「……そうだったかな」
「それで要。何悩んでんの?恋愛なら相談にのるわよ」
言いながら姉は立ち上がって俺と向き合った。
「……恋愛じゃないからいい」
「そう、恋愛じゃないのね。何に悩んでるかしらないけど」
姉は俺の顏をじっと覗き込んで一呼吸おいた。
「要」
「……」
「決断に迷ったら、やりたい事じゃなく、まず、やるべき事を優先しなさい」
「……わかってるよ」
「そうすれば後でやっておいて良かったって思えるわよ」
「……ありがとう。ねーちゃん」
ねーちゃんは不思議だ。いつも的確な言葉を俺にくれる。
やるべき事。
そうだ。悩んでる場合じゃない。
とりあえず今はやるべき事をやる。
俺は今そこにある問題から片づける事にした。




