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超人クラブ 菊留先生の憂鬱 その十五

大山智花は開成南高校の夏用セーラー服の襟を正し、ワインレッド色のリボンを

結びなおしてからカウンセリングルームの扉を二回ノックした。

毎年恒例、夏休み前の説教タイムである。

中学の三年間。夏休みと言わず、休み前には必ずと言っていい程呼び出され

説教されていたのでもう慣れっこだ。


そして、毎回受ける説教の内容が全くと言っていいほど同じなので、馬耳東風と聞き流す体制もすでに心の中で出来ていた。


だが、扉を開けると担任の菊留先生と差し向かいで座るその席に、同じクラスの佐藤仁がいる。

いつもなら英語を担当する坂田先生がいるはずなのだが、予想外の人物が座っていたのでだいぶ面食らってしまった。

普段とは違うアプローチにすっかり頭の中はパニック状態になる。


「なっ、なんで佐藤君がここにいるんですか」

呼び出された理由は最低ランクに位置する英語の成績についてのはずだ。

彼はそれに関して何を発言する権利ももたない。

ため口を聞く同級生とはいえ彼がここにいる理由が見当たらない。

「大山さんとお友達だとお聞きしたのであえて同席をお願いしました。」

すっきりと理由を述べる担任の憎たらしい笑顔、なんなのコイツ、殴ってやりたい。

大山智花は心の中で歯噛みしたがそれでも一応、自分に与えられた権利を行使してみる。


「先生、英語の成績は個人情報だと思うんですが、先生には守秘義務が」

笑顔を浮かべそういうと、担任は悲しそうな顔をして返事を返す。

「私もそう思ったんです。でも智花さんの場合、英語の成績が評価点1であることは、とても残念なことに全校生徒が知る公然の秘密になっています。もはや隠す必要もないかと」


シェークスピアの舞台ハムレットの様に

嘆いて見せる先生の演技力はベテランの俳優並みといってよい。


心にもない白々しい演技と思いながらも反対側に座る佐藤仁を見ると

彼は彼で必死になって笑いをこらえ机に突っ伏していた。


「でっ、ですから、なんで彼がここに?」

恥ずかしさのあまり顏が真っ赤になるのを自覚しながら、

同じ質問を繰り返す。


「彼は智花さんの事をとても心配しています。

 いわばオブザーバーとしてここにいるわけです」

「オブザーバー……そんなものは必要ありませんから彼に退出するように言って下さい」


再度不満を表明するが、担任は聞き入れてはくれなかった。

彼女は担任がいままでと一味違う手ごわい相手である事をようやく理解した。



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