超人クラブ アナザー その195
もうろうとする意識の中で俺は夢を見ていた。
やたらきれいな星降る夜の夢。
その夢の中で角田先輩が『高森、海が見たい』と言ったから。
嬉々として俺は海に出かける準備をした。
水着を着て、上にパーカーをはおり、ネオンに彩られた街並みを眼下に見下ろして。
高い塔から先輩を抱きかかえて空を飛んだ。
先輩の艶めいた髪が風をはらんで俺の頬をなぶった。
遠くを見つめる奥二重の双眸が憂いをひめて瞬き。
先輩をかかえたまま一気に海岸線にでた。
一ミリに満たない小さな石英が寄せ集まってできた砂浜は、
月光に照らされて白く輝いていた。
途中、手が滑って、
抱えていた先輩を海に落としてしまった。
無数の飛沫と泡が生じ、先輩は一旦、水の中に消えた。
浮き上がって水面から顏をだした先輩は笑いながら、
『僕だけ濡れるのは不公平だ。高森も入れよ』
と言って空中から海面を覗き込んでいた俺の足をひっぱった。
派手な水音がして俺も海に落ちた。
足がつく。
腰くらいまでの水につかる浅瀬だ。
海水が冷たかった。
『ひどいなぁ。ワザとじゃないのに』
いいながら、心は弾んでいた。
海なんて久しぶりだ。
はしゃいで水を掛け合って、波に逆らって泳いだ。
潜るのも、海藻の上に座るのも、岩から飛び込むのもみんな。
楽しかった。
いつの間にか暗かった海は明るくなっていた。
夢だってわかる。現実味の無い紺碧の海。
寄せては返す波の音が静かで穏やかで。




