超人クラブ 菊留先生の憂鬱 その八
放課後、部活そっちのけでカウンセリングルームにやってきた佐藤仁は
私の事を気に入ってくれたらしく色々質問してきた。
その大半が超能力に対する質問だったので、自分の過去世の話も当然彼に話した。
「じゃあ、さぁ、先生って薬の力で作られたエスパーってこと」
「まぁ、そうですね、階級で言えばS級」
「S級ってどのくらいの力」
「瞬時に学校が消失するくらいでしょうか」
「すごい、よく能力が暴発しないね」
「一応、リミッターをかけてるので」
彼に両方の手にはまった指輪を見せる。指輪自体には何の効力もない。
指輪をすることで使える力が半減する。そう信じて暗示をかける。
「ふーん、アイテムはなんでもいいの?」
「いいと思うけど、このやり方が君に効くかどうかはわかりません」
「大丈夫、きっと俺にも効く」
「君の「俺と僕」を使い分ける基準って」
「信頼度かな」
「そうなんですか」
「だから、智花には俺だよ」
「大山さんと友達なんですか?」
「だって、同じ中学だったし」
そういえば、同じ崎津中出身だった。
「私と君との信頼度が増した所で一つ聞きたいのだけど」
「うん」
「大山さんの英語が非常に悪いのは」
「だって、そりゃ、先生、あいつ、授業中ねてるもん」
「寝てるって」
「だから、言葉通り」
「寝てるって言っても単語の一つや二つ頭にのこってても」
「あーっ、それ無理、先生に起こされてもぴくりともしないし、
絶対完全熟睡してる」
「ぴくりともしない?……。」
本当にそんな事があるのだろうか。
「そうそう、それも毎度毎度」
道理で英語の先生が何とかしてくれって泣きついてくるはずだ。
「それにね先生、あいつ英語だけは勉強する必要を感じないって公言してるよ」
噂に違わずすごいポリシーの持ち主だ。
英語は勉強する必要がないと公言するだけならまだしも
勉強しないことを実践している人間はそう多くないだろう。
「そうですか。困りましたね」
「困るって何が?」
「この学校は評価点1があると留年なんです」
「えっ、マジ?」
「マジです」
「あいつ、それ知らないと思う。教えないと」
慌てる彼に言う。
「という訳で、近々彼女を説得する予定なので協力をお願いしますね」
彼はこの言葉が引っかかったらしくむくれた声で応じる。
「先生が俺に近づいてきた理由ってそういう事?」
「まさか、単に君と友達になりたかったからですよ」
「ふーん」
疑わしそうに私を見たが気づかないふりをしやり過ごす。
「そろそろ下校時間ですね。じゃ、今日のカウンセリングは
この辺でやめにしますか」
「えーっ、ただの雑談だったのに、カウンセリングとか」
「この部屋を使うときの理由は一応そうなってます」
椅子から立ち上がって窓を閉め戸締りとしようとする私に彼が言う。
「俺、もうちょっと先生と話がしたいんだけど」
「明日、伺いますよ」
畳みかける様に彼を追い出し私もカバンを持ってカウンセリングルームをでた。
「じゃ、また、明日、佐藤君、気を付けて帰るんですよ」
「せんせーのケチ!」
舌打ちする彼に笑顔で手を振って別れを告げ職員室に戻った。
小二時間、雑用かたずけてから同僚に挨拶をして帰路につく。
時計は8時を回っている。
この頃になるとさすがに夏でも暗くなる。
電車に乗り込み次の駅でおりた。
今日はいつもと経路が違う。
ストックしてある食料がなくなったので買い物をするために
スーパーやコンビニ、雑貨、ゲーセン、学習塾などなんでもある駅に降りたのだ。
飲み屋街も近いから、すれ違う人も学生やリーマンが多い。
明るい表通りから、ちょっと薄暗い通りに入る。スーパーはその先にある。
30分ほどメモを見ながら買い物してスーパーから出てくると入り口で声をかけられた。




