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超人クラブへようこそ その23

「さて、行きますか」

終始、先輩の病室で穏やかな話をしていた菊留先生はそういうと立ち上がり扉をあけた。

病室の外には当然、先生がじっと見つめていた廊下がある。

「角田君、お姉さんと話をしますか?」

振り返って尋ねる先生。

「えっ……?」

角田護の姉は一年前、交通事故で亡くなっている。

そして、菊留先生の能力は『見えざるモノを見せる力』だ。


「姉が……そこにいるんですか?」

信じがたいという面持ちで尋ねる。

超人クラブのメンバーでも個々の力は推し量りがたい。

英語では、神秘的、超自然的、魔術的、といった意味合いで使われるオカルトという現象もよほどの事象に出会わないと信じられない気持ちになるのは仕方のない事だった。でも、菊留先生の実力を考えれば先生の言っている事は真実なのだろう。


「話したい。姉さんと……お願いします。先生」

菊留先生は頷くと例の呪文を唱えた。

病室の中央に微粒な光が集まり、やがて人の形を取り始めた。

こういう現象は何度見ても不思議という他はない。

「菊留先生って、イタコの素質もあったんですか?」


イタコとは、生者との意思の疎通をはかる仲介者として死者を呼び出しその言葉を伝える伝道師の事だ。


「死者を呼び出すなんてそんな事できませんよ。

 そこにいる何かを感じるだけです」

「そうなんですか」

「高森君、君は勉強以外のどうでもいい知識ばかりをよく覚えていますね。

 その情熱を勉強に向けてくれるとうれしいんですが」


菊留先生は俺の国語の成績が良くないことを暗に言って一端の教師らしく

嘆かわしいという表情をして見せる。

俺は「ああっ、この人本当に教師だったんだな」というどうでもいい感想を持った。


部屋の中央で人型になった光は、やがて光を放つことを

やめて、生きているかと惑うような妙齢な美女に変化した。

服装は金糸、銀糸を織り込んだ豪奢な振袖を身に着けている。

顔立ちは先輩によく似ていた。


「菊留先生、顕現させていただいた事に感謝いたします」

彼女は先生にお礼をいってから、角田先輩と向き合った。

先輩は自力でベットから身を起こした。

「夢見姉さん……。」

「何も言わなくていいのよ。護、あなたは一年間、よくがんばったわ。

 さあ、母様の所へ参りましょう。自由を勝ち取るために」

自分に言い聞かせるように語気が強くなった。


思えば彼女の人生は、すべて、母親が敷いたレールの上を走っていた。

自分の意思はどこにもなかった。

彼女の不幸は母が望むことをすべて

卒なくやってのけるその才能にこそあったのだろう。


習い事は茶道、書道、日舞だけでなく、合気道、弓道に及ぶ。

公の場にでれば、完璧なお嬢様を要求され

言動、行動に気に入らない所があれば折檻を受ける。

一挙一動を指示される毎日、服装すらも母の好みが入る。

その多干渉は異常というほかはない。

彼女の瞳に決意の光が宿った。

亡くなってから初めて母親に逆らう決心をしたのだ。


「菊留先生、立ち会っていただけますか?」

「おじゃまでなければ」

「ぜひ」


母と本心から話をするのはこれで最後になるだろう。

母を泣かせることになっても仕方のない事だ。

私がいなくなった後、母はすべての矛先を弟の護に向けている。

それだけは阻止しなければならない。

弟の精神こころを守るために。



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