超人クラブ アナザー その23
「だから、力いっぱい端折ってるじゃないか」
「どこがですか」
「あっ、一ノ谷先生、僕はいいんで菊留さんを優先してあげて下さい」
もの解りのいい裕也は正人にそう言った。
正人は仏頂面で裕也に答えた。
「裕也君」
「はいっ?」
「コイツには親切にしなくていい」
「えっ、なぜですか?」
裕也は不思議そうに正人を見やった。
「こいつは酷い奴なんだ」
「えっ、ひどい?」
「以前、コイツに我が家直伝の退魔用の呪を教えたんだ」
「そうなんですか」
「完璧、完全なる呪文を」
「それで?」
「どうしたと思う」
「どうしたんですか?」
「こいつは、その呪文の前に、「天地開闢の理によりて」とかなんとかいう
枕言葉をつけやがって下さったんですよ」
『つけやがって』の所に彼の怒りの度合いがわかろうというものだ。
「まっ、枕言葉ってあの、「八雲たつ」とか「あしひきの」とかいうあの」
「そうだ。なんの意味もなさない。かっこつけるだけのあの枕詞を」
「……そうなんですか」
「なっ、酷いだろ。原作レイプだろ。
コイツに関わったのがそもそもの私の不幸の始まりだ」
拳をふるふると握りしめて真面目に怒る正人。
怒り心頭とはまさにこの事だろう。
裕也は驚いて目をみはった。
礼儀正しい正人がこんなに怒るのをはじめてみた。
どおりでしょっぱなから態度が冷たいわけだ。
「なんでそんなモノをつけたんですか?」
裕也はこそっと隣に座る義之に耳うちした。
「だって!かっこいいじゃありませんか。結構気に入ってるんです」
義之は親指をぐっとたてウインクしてみせた。
かっこいいって……。子供みたいな人だ。この人。
裕也は目をまるくして義之をみた。
さわやかな笑顔に邪気がない。
「……そうとう一ノ谷先生に嫌われれてますよね」
「平気です。通常運転ですから」
義之はなんとも兵な返事を裕也にかえした。
さすが、一ノ谷正人の友達だけのことはあると思った。




