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超人クラブ 桜花恋歌 その40

「……なぜ、先輩にとってこの世が地獄だと言えるんだ。お前の一方的な思い込みだろ」

「お主には、解らぬか。愚か者め」


「ああ、解らなくていいよ」

「お主が初めて、護に会った時。あれが偶然だと思うてか」


「えっ?」


 初めて会ったのは、あの蝉のお墓を作った時だ。


 あれは偶然じゃなかったのか?

 一体どうゆう事なんですか……

……角田先輩。



高森要は初めて角田護に会った日の事を思い返した。

三人の上級生が蝉を捕まえて両手で蝉の胴体を引きちぎる。

救急箱をもった執事をつれて、なぜ、先輩はあの場に現れたのか。


タイミングが良すぎる。

ただの散歩なら救急箱なんか持って歩くわけがない。


先輩の能力は生き物全般の意思の疎通。

離れた所からでもその声を聴くことができるという。


ゾッとした。

もし、体を引き裂かれる蝉の悲鳴が先輩の耳に聞こえていたのだとしたら。

あらゆる動物の駆除される断末魔の叫びが先輩の心に届いていたとしたら、


こんなむごい能力なんて他にあるだろうか。

先輩は生き物の生殺与奪が人間の側にある事を悟って

人嫌いになってしまったとしたら。



『君は優しいんだね。僕は角田護。君の名前は?』

先輩は俺を見てほんとうに嬉しそうに笑った。


自分と同じ考え方をする子供と初めて出会ったのだとしたら。


『ねぇ、桜さん。ぼく、今日初めて友達なりたい子供とあったよ』


小学校3年生くらいの子供が桜の古木に話しかけている。

奥二重の黒目がちの双眸が水晶みたいにきらめいて楽し気で。


『その子、高森要って言うんだ。

 また会えるかな?いつか一緒の学校になったらいいな』


彼は嬉しそうに微笑んだ。


痛いほどの想いが胸に響いてきて。

ぽろりと涙が零れ落ちた。


なんだ……今の?木霊の記憶?

最低だ。俺。

俺は先輩の気持ちなんか、ちっとも理解していなかった。


小学校を卒業して、中学生になって

同じ学校の中に高森要おれを探して、いないことに失望して……。

それから二年の歳月がたった。


中学2年生の夏。

角田護先輩と俺はようやく同じ塾で一緒になった。




『たかもり、お前、あの先輩と知り合い?』

塾友に言われてそちらに顏を向けると先輩と目が合った。


あわてて目を反らす。


『いいや、なんでだろ。最近、よく目が合うんだ』

『なんだか意味深だよな~。あの先輩よくお前をみてるぜ。告られたりして!』

『バーカ、そんなわけあるか』


いくら美形でも男だし、やっぱゴメンこうむる。

告られるんなら女の子がいいに決まってる。


塾友にからかわれてから余計、先輩を避けるようになった。

今にして思えば先輩はただ単に、俺と友達になりたかっただけなのだろうと思う。


先輩が開成南に進学し、次の年に俺も同じ学校に入学した。

先輩は俺を書道部に誘ってくれた。




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