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超人クラブ 桜花恋歌 その11

その週の日曜日の朝。

俺は角田先輩に連絡を入れ、強引に家に遊びに行く約束をとりつけた。


角田家のはなれ。

本館はコンクリート造りだがこちらは純和風の平屋。

ふんだんに木材が使われた総ヒノキ造りの家だ。


部屋は3室、

通されたのはたたみ十畳の和室。

一角に炉があり上座に床の間が設えてある部屋だ。

とこには「達磨大使」の掛け軸が飾ってあった。

座卓の上に出された緑茶が適当にぬるくなった頃。


廊下から衣擦れの音がした。

さっと障子あいて、いつもながらに見事な所為で浅黄色の着物を着た先輩が部屋に入ってきた。

先輩は玲瓏れいろうたる声音で詩を暗唱している。


『春は桜の あや衣

 秋は紅葉の 唐錦

 夏は涼しき 月の絹

 冬は真白き 雪の布

 見よや人々 美しき

 この天然の 織物を

 手際見事に 織り給う

 神のたくみの 尊しや』


「おはよう。先輩」

「おはよう、高森。この詩しってる?詩人・武島たけしま 羽衣はごろもの『うるわしき天然』」

「いえ、はじめて聞きました」

「日本の唱歌だけど、歌より詩として詠じた方が僕は好きだな」


相変わらずの結構なご趣味で……。

俺には詩を詠じる趣味はない。

こういう所は正反対と言う他はなく、かみ合わない会話をしてしまうのは仕方がない。


都会にありながら角田家のはなれは、せわし気な雑踏を思わせるうるささは微塵みじんもなくただ静謐せいひつな空間がそこにある。


「ここは、いつもながら静かですね」

 形の良い松の樹々の間に作られた人工の池にカコンと鹿威ししおどしの音が鳴り響いた。

 日常とは別空間にいるみたいな、そんな感じ。

「そうだな」

この空間では学生服姿より、着物を着て凛とした佇まいの先輩の方がより一段と存在感をます。

しばらく、板間の方のテラス戸のそばに立って庭を眺めていた角田先輩は振り向いて、いつもの爽やかな笑顔で俺に話しかけた。


「高森要、わざわざ家に来たのは何故。何か僕に言う事があったんじゃないのか」


「その通りですよ。先輩」

俺はいつもより、緊張した面持ちで返事をかえした。




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