超人クラブにようこそ その13
菊留先生を取り巻いていた黒い霞は跡形もなく消え去っていた。
空気が浄化されたのかあたりに爽やかな風が吹いている。
佐藤先輩が引き上げた男の人はすぐに立ち上がって誇りを払ったりしていたが
角田先輩が引き上げた女の人はもろに自分の体重を先輩の体に預ける形になって
勢い余って二人とも壁に叩きつけられたので暫く立ち上がる事ができなかった。
俺と泉で「大丈夫ですか」と声をかけながら助け起こそうとするが、壁にしこたま背中をぶつけた先輩は傷みのあまり起き上がれていない。着物の前もはだけ草履も片方脱げている。
女の人は、自分を助けてくれたのがジャニーズ系のイケメンだと知って、どぎまぎしながらお礼を言っていた。
「あっ、あの、助けてくれてどうもありがとう」
「いえいえ、ケガもなさそうで何よりです」
答えたのは菊留先生だ。
「あの、彼は」
「ええっ、大丈夫です、こちらで対処しますから」
面白くなかったのは男の方だったらしい。
「紗季、さき、もういくぞ」
ろくにお礼も言わずに女の人を引っ張って逃げるようにその場を去っていった。
当然といえば当然だろう。
終始、紗季と呼ばれた女性は顔を赤らめてじっと先輩を見つめてたんだから。
泉は男女がその場を去ったのを横目で見送ったがすぐに先輩に駆け寄って怒ったように言う。
「先輩、だめじゃないですか、下着くらい着てくださいよ」
「ごめん、熱いのは苦手なんだ、大丈夫、下に短パンははいてる」
「もう、まるみえなんだから」
両手で着物の襟に手をかけ直そうとする。
「痛いよ、泉、大丈夫、自分で出来るから」
「あっ」と泉は先輩の腕を見て叫ぶ、
先輩の腕に痛々しい引っかき傷ができている。
「先輩、また、猛禽を腕にとまらせたでしょう。
とまらせる時にはミトンを使ってってあれほど言ってるのに」
自分のカバンからスプレー式の消毒薬を取り出し容赦なく先輩の腕に振りかける。
さらに取り出した包帯を腕に巻こうとして手が止まった。
「……これは?」
猛禽がつけた傷以外に妙にはっきりしたこげ茶色の鉛筆くらいの細さの棒線が二本
くっきりと肌についている。その傷を見て先生の顔が険しくなった。
「また、やられたんですか、角田君」
「……」
「私が一度意見して」
「先生、大丈夫です、大丈夫ですから今は何も言わないでください」
先輩は必死な顔で訴える様に言う。
先生は嘆息した。
「わかりました。耐えられなくなったら言いなさい。それくらいの労力は惜しみません」
皆を見回しコホンと咳ばらいをして言う。
「動けますか?角田君」
「はい」
「とにかく、場を代えましょう、撤収です」
先生の言葉に、皆速やかにその場を後にした。




