超人クラブ 俺は先輩のワンコじゃない 後編
いやいやいや、ちげーし。俺って先輩にとってワンコなの?
まず、その言葉にショックを受けた。
俺は先輩のペットみたいなもの?
手がかかって可愛いだけの?
思わず、俺の手を掴んでいた角田先輩の右手を振り払う。
「あっ」
先輩は一言そう漏らすと信じられないと云うふうに
自分の右手を見て、その後俺を凝視した。
大きく見開かれた奥二重の瞳、半開きの唇は紡ぐ言葉を失って……。
なんだよ。あの目。まるで自分が傷ついたみたいな顔して。
傷ついたのは俺なんですけど……。
先輩の瞳はみるみる潤んできて今にも泣きそうな顔になっている。
居たたまれなくなって俺はうつむいた。
「あっ、あの、先輩、ご、ごめんなさい」
「……。」
先輩より先に謝る俺ってほんとバカ。
沈黙が怖い。
「あっ、あの部活行っていいですか。皆、待ってるんで」
腐女子軍団五人組にそう告げると俺は先輩の手を握りしめ
一礼して、なかば強引にその場を離れた。
俺が先輩の手を握った事で
腐女子軍団が黄色い悲鳴を上げていたがそんな事知ったこっちゃない。
「僕、何か気に障る事言った?」
ああっ、自覚ないんですね。思いっきり言いましたとも。
俺のプライドを粉々にする程度には。
「………別に、あの」
「ごめん。気に障ったのなら謝る」
えええーーーっ。
学園のプリンスに謝らせたなんてファンクラブに知れたら俺、八つ裂きにされます。
「急ぎましょう。ほんとに書道部は部長頼みなんだから。
先輩がいないと何も始まらないですから」
俺は笑顔でこのセリフを先輩に言えただろうか?
言ったつもりだが、自信がない。
「そうだね」
「先輩」
「何?」
「俺にも漢字書かせて下さい。……なんて」
「そうだな。まずは名前からな。女性は結婚して苗字変わるけど、
男はそうはいかないだろ。名前が綺麗に書けるのはいい事なんだ」
全く持って先輩らしい言い回し。
「そうですね」
「へえっ、ワンコねぇ。角田そんなこと言ったんだ」
次の日の放課後、カウンセリングルームで数学の赤本めくっていた佐藤先輩が言った。
「そうなんですよ。俺のプライド、ズタボロで」
「角田らしいじゃん」
「何がですか?」
「だって、もし、ファンの前でお前の事、特別だとか。好きだなんて言ってみろ。
どうなると思う?」
「あっ……。でも、俺男ですよ」
「ファンの前じゃ男とか女とか関係ないと思うぞ。
ワンコ(ペット)って言う事でお前の事守ったんだろ」
「だから、これは角田なりの愛情表現」
なるほど……。いやいやいやっ、ちげーし。
「先輩、俺は角田先輩のワンコじゃありませんから!」
言い終わらぬうちにガラッと扉の開く音がした。
「あっ、ここにいたんだ。高森、部活に行こう。部活」
「角田先輩」
有無を言わさず連行される俺。
「ちょっと、ちょっと、俺まだ話の途中で」
「放課後は部活に勤しむ。これ我が校の方針ですよね。菊留先生」
「はい。そうですよ。高森君、こんな所で入り浸ってないで部活に行きなさい」
「はいはい、わかってますって」
ガラッと扉がしまった。
「でも、なんだかんだ言っても、高森やっぱりワンコだよな」
「そうですね。どう見ても角田君の一番のお気に入りですね」
二人がいなくなった後で
菊留先生と佐藤仁がこんな話をしているとは夢にも思ってない。
いつまでも鈍感な高森要であった。
END




