超人クラブ 幕間 其のニ
「さあ、いきましょう」
「えっ、どこにですか?」
「丸ビルの地下牢よ」
そう云うと美咲は艶然とほほえんだ。
エレベーターホールを通過して地下通路まで来ると地下牢の
オープンセットの方から薄気味悪く何者かが、ぶつぶつと何か呟いている声がする。
よくよく聞いてみると声の主は案の定、紫雀だった。
「かーけーなーい。かーけーなーいよぉ」
風に乗って聞こえてくる声の不気味な事
それはそれは、この世のモノとは思えない。
牢屋の中を覗き込むと警察の取調室にあるような簡素な机の上で
紫雀はパソコンの画面をにらんでいる。
「紫雀せんせ。こんな所でなにしてるんですかーっ?」
声に反応し、紫雀はびくりと体を震わせた。
眼の下にクマを作って半分開いた眼で、恐る恐る美咲の方を振り仰ぐ。
何度も眼鏡をかけ直して、震える声で言葉をつむいだ。
「ななななんでしょう。……ここにはたたたっ立ち入り禁止って」
「先生、台本は?」
「まっ、まだですって、云ったのに。あっ……なんで助監督がここに」
「でしょうねぇ」
あきらめ顏の助監督を遮って美咲が言う。
「せんせ、超人クラブの感想、お待ちかねのファンレターきてますよ」
「………えっ?……ファンレター?……いやいや、信じませんとも。
そんなもの、来るわけないでしょ……人気ないし……」
「信じないんだ。あーあ、じゃこれは捨てるわね」
美咲は人差し指と中指にはさんだ封筒を持ち直し
破り捨てようとする。
「あっ、あっ、あの、ちょっと待って。なんって」
小さな声で紫雀が聞き返してきた。
「えっ?何ですか。聞こえませんけど」
「だから、何って書いてあったんでしょうか」
美咲は便箋を取り出して読み始めた。
「拝啓、紫雀様、いつもあなたの作品を愛読しています。
執筆、大変でしょうが頑張って下さい。あなたのファンより」
紫雀の顔がみるみる明るくなった。
「うわぁー。なんか元気出た。よーし頑張るぞー。なんか書けそうな気がするわ。
紫のバラの人。私頑張ります!」
封筒に造花を添えて渡すと紫雀は大事そうにそれを引き出しにしまった。
美咲と助監督は笑いをかみ殺してその場を辞した。
エレベーターに乗ってから二人とも大笑いしていた。
「むっ、紫のバラの人だって。ガラスの仮面ですか。美咲さん、冗談きついです」
「単純よね。だってぇ~。あんなに簡単に引っかかるとは思わなかったのよ」
「でも、これで安心ですね。当分はエタラないでしょう」
「そうね。半年は持つんじゃないかしら」
二人上機嫌で現場に戻ると、ちょうど
ひかりと菊留先生の会話の収録が終わった所だった。
一連の経過を話すと二人とも大笑いしていた。
スタッフ全員で大笑いした後で暫くしてから監督が言った。
「でも、大丈夫なんでしょうかね。あの人もしファンレターが嘘だとバレたら、
……今度こそ浮上できないほど落ち込むんじゃ……」
すみません。
自分を叱咤激励しないと書けなくなりそうで、思わず幕間かいてしまいました。




