超人クラブ 幕間
mスタジオ
「今日はおつかれー、もう帰っていいわよね」
義之とひかりの座る1番ボックス席にウイスキーボトルとグラスを運ぶシーンを
撮り終えた美咲は、オープンセットに反射板やライトを当てているスタッフの横を
すり抜けると、台本チェックをしている助監督を捕まえてそう言った。
「えーっ、ちょっと待ってくださいよ。美咲さん、
この後、もうワンシーンあるはずなんですよ」
小声で言う助監督に美咲は不満げだった。
「ええっ、もうワンシーン?、そんな話、聞いてないですよ。
第一、台本貰ってないですし」
「はあーっ、それなんですよねー。俳優さんが帰らないように
上からストップかけてくれって言われたんですけど
ぶっちゃけ台本が書けてないらしいんです」
「やっぱりね。それで?作者の紫雀はどこ?私が一言ガツンと言ってあげるわよ」
「丸ビルの地下牢で執筆させてます」
「えっ?あの辛気臭い地下牢で?」
地下牢はオープンセットで別に本物ではない。
「あそこに籠ってるっていうの?なぜ?」
「いや、マジで今、行かない方がいいですよ。病気がうつりそうです」
「はぁっ?一体何の病なの」
「エタリたくなる病らしいです」
「ええっ?エタる?エタるって何?」
「「なろう」で言う所のつまりですね。執筆を途中でやめる事ですね。
信じられないんですが、あの人、今、スランプらしいです」
「スランプ?作家でもないのに?」
美咲は呆れたという顔をする。
「不安なんでしょうね。自分に自信がないから、
作品にファンの励ましコメント一つでも入れば違うんでしょうけど」
「ふーん、コメントねぇ。でも、この小説って視点がころころ変わるし、
作品としては面白くないんじゃないの?スライムつぶしてレベル上げもないし、
異世界に生まれ変わりましたも無いし、マイナーすぎるんじゃないかな」
「美咲さん、そんな身も蓋もない言い方」
助監督は渋い顔をして美咲をたしなめた。
「ねぇ、紫のバラと封筒と便箋用意してくれない?」
「えっ、なんでですか?」
「必要なのよ。お願い」
「わかりました。ちょっと小道具探してきますね」
「これでいいですか?花の方は造花なんですけど」
「うん、これで充分よ」
美咲は助監督が持ってきた便箋に何やら書きつけると
丁寧に折りたたんで封筒に納めた。




