最後に残ったのは
わたしたちは荷車に戦利品を満載してウェルシーに戻った。ドーンたちが略奪した品々のほかに、シュヴァルツ将軍の部隊から得た鹵獲品が含まれている。
館に戻ると、わたしは前回と同じように子供たちに囲まれ、その一方で、エレンとドーンは抱き合って再会を喜んでいた。
ともあれ、ウェルシーではどうにか、合法的にわたしの支配体制が確立できたことだし、それはそれで良しとしよう。問題は経済的な、すなわち……
「カトリーナ様、マーチャント商会への借金をなんとかしませんと……」
ポット大臣はわたしに何十通もの請求書や督促状を見せた。
「払いたくないけど、やっぱり払わないとまずいのかな……」
「非常にまずいです……と言いますか、一般常識の見地から申し上げますと、払わないということは、あり得ない話です。カトリーナ様は、このたびウェルシー伯爵になられたわけですから、『借りた金を返さない』みたいな噂が立てば世間の笑いものですし、他の諸侯から相手にされなくなります」
「でも、もともと利子がものすごく高かったんじゃなかったっけ? 暴利行為で契約自体無効にならない?」
「利子はこちらの窮迫につけ込んだものですが、現にお金を受け取っています。通常の場合、受け取った金額に12%前後の年利をつけて返済するのが相場ですので、少なくともその程度は……」
どうやら払わないわけにはいかないようだ。でも、できる限り値切らなければ。
マーチャント商会との交渉は、思いのほか有利に進んだ。マーチャント商会「最強」の将軍と精鋭部隊は既に消滅し、「2番目」はわたしの配下になっている。今ならマーチャント商会と戦争しても簡単に負けることはないだろう。そこで、「場合によっては唯一絶対的な紛争解決手段で」と強気に押したのが功を奏したのか、一応、こちらの言い分が通った形になった。
そして、最終的に、①受け取った金額に年11.52%の利息をつけて返済する、②宝石産出地帯に設定された抵当権は債務の返済が完全に滞らない限り実行されないということで合意し、新しい契約書にサインした。
「これくらいの利息なら、まだ、なんとか……」
ポット大臣の顔に、ちょっぴり明るさが戻ってきたようだ。とはいえ、債務残高はまだ天文学的数字だけど。
…… えいっ、えいっ、えいっ ……
「どうした、このへっぴり腰は! もっと気合を入れていくんだ!!」
館の中庭から、子供たちとドーンの声が響く。今日の体育の授業はドーンの担当らしい。
それにつけても…… 金の欲しさよ……




