表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ザ☆旅行記Ⅲ 愉快な仲間たち  作者: 小宮登志子
エピローグ(後日譚)
65/66

河畔の戦闘

 一夜明け、わたしたちは川の南岸に移動し、それぞれの持ち場についた。川岸には葦が生い茂り、身を隠すには格好の障害物となってくれる。

 メアリーは、不思議な光沢を放つミスリル製のプレートメールに身を包んで槍を片手に天を仰ぎ、何やらつぶやいていた。思うところがあるのだろう。プチドラは一晩のうちにアルコールが完全に分解されたようで、本来の隻眼の黒龍の姿に戻り、スタンバイ。

 やがて、斥候から、「シュヴァルツ将軍の軍団が行軍を再開」との報がもたらされた。予想していたように、前軍、中軍、後軍の順にゆっくりと北に向かっている。後軍の先頭を進む豪奢な馬車にシュヴァルツ将軍が乗っていることはミエミエとのことだ。


 午後になって、軍隊は川のほとりに到達した。一時、川を前にして小休止したが、やがて前軍から順番に川を渡り始めた。それほど深い川ではない。ここは気合でということだろう。

「よかった。うまくいきそうね」

「はい。でも、カトリーナ様、本番はこれからです」

 メアリーは槍を握り、その時を待っている。

 そして、中軍が渡河を始め、最後尾が川の畔にさしかかると……


 …… げっ、あれはなんだ! うっ、うわぁ!! ……


 中軍最後尾の兵士が悲鳴を上げると、同時に、体は真っ黒焦げにされていた。隻眼の黒龍がはるか上空から急降下、中軍と後軍の間に割って入り、中軍めがけて火を噴いたからだ。さらに、葦の間に潜んでいた猟犬隊がモロトフ・カクテルを投げつけ、たちまちのうちに渡河中の中軍は炎に包まれてしまった。

 メアリーと配下の精鋭部隊は、間髪を入れず、一気にシュヴァルツ将軍の本営に攻めかかった。大小さまざまな火の玉がカチューシャ・ロケットのように後軍に降り注ぐ。あれ? この火の玉はシナリオになかったけど……

「姉の魔法です。今日は一段と派手ですね~」

 と、マリア。なるほど、本気とはこういうことか。確かにすごい。


 勝負は本当にあっけなくついた。メアリーの槍がシュヴァルツ将軍の心臓を貫き、そのまま高々と持ち上げると、マーチャント商会の兵士たちは、われ先にと逃げ出した。「総大将がやられた」との報は伝染病のように軍全体に広まり、燃え盛る炎の恐怖と相まって、兵士たちは恐慌を来した。こうなれば、もはや収拾がつかない。

 こうして、マーチャント商会最強部隊はバラバラになり、あっさりと消滅してしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ