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ザ☆旅行記Ⅲ 愉快な仲間たち  作者: 小宮登志子
エピローグ(後日譚)
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兵半ば渡らば討つべし

 宴会は、急きょ、中止となった。斥候の報告では、南方からゆっくりと北に向かって進軍してきたところの、金貨の山と頭蓋骨を旗印にした数千人の部隊が、現在、山塞から少し南の地点で野営中(多分、食事中)であるとのこと。

「今すぐに夜襲をかけましょう。こんなところで攻められるとは思いもよらないでしょう。」

 メアリーは槍を握りしめ、やる気満々だけど、プチドラは酔っ払って寝ている。マーチャント商会最強の将軍が相手とすれば、さすがに今すぐ夜襲は危ないと思う。とはいえ、日中に正々堂々と勝負を挑むのは更に無謀だろう。メアリーの配下と猟犬隊を合わせても数的には敵の部隊にはるかに及ばない。相手も戦争のプロフェッショナルとすれば、プチドラの航空支援で勝てるかどうか……


「あの~、ところで、マーチャント商会の軍隊が、こんなところにどんな用があって来たのでしょうか?」

 と、マリアの素朴な疑問。

「帝国とトカゲ王国の戦争が無期限休戦で、南方にいる意味がなくなったら帰る途中じゃない?」

 以前、メアリーから、マーチャント商会がトカゲ王国討伐のための諸侯連合軍に最強の将軍と精鋭部隊を派遣したという話をきいた。本社から撤収指令が下って自分たちだけで帰る途中ということだと思う。撤収といっても、一体、どこまで戻るんだか……

「メアリー、マーチャント商会の部隊の帰る先がどこか、知ってる?」

「本拠地に戻るのか途中どこかで補給するかは知りませんが、しばらくは北上を続けると思います」

「ということは、今日わたしたちが渡った川を……」

「はい。川を渡らないと北へは行けませんが…… あ、なるほど」

 メアリーも気付いたようだ。軍記物によく出てくるように、渡河途中の奇襲はセオリーだから。


 メアリーによれば、シュヴァルツ将軍は、通例、軍を前軍、中軍、後軍の三つに分け、後軍の先頭に本営を置いて指揮をとっているという。ならば、中軍の最後尾が川を渡り始めた時が攻撃のタイミングだろう。

 プチドラは酒樽に浸かり、気持ちよさそうに寝息を立てている。明日の朝にでも説明しよう。プチドラには、隻眼の黒龍モードで最初に空から中軍の最後尾を攻撃してもらおう。同時に、猟犬隊が中軍にモロトフ・カクテル(ガラス瓶じゃないけど火炎瓶)を投げつければ、炎によるダメージを与えるほか、川に浮いた油で火炎のバリアができるだろう。これにより、敵軍を、中軍と後軍の間で分断することができる。

 メアリーとその精鋭部隊には、後軍の先頭、シュヴァルツ将軍の本隊を攻撃し、とにかく戦闘開始直後に将軍を討ち取ってもらおう。総大将がやられれば、敵の兵士たちは戦意を喪失して混乱を来すだろう。そうなれば、あとは、どうなっても勝てる。

 ただ、問題があるとすれば……

「メアリー、その相手の将軍、『ヤツ』って、マーチャント商会最強でしょ」

「ええ。マーチャント商会では、最強でした。でも、ご安心を」

 メアリーはにっこりと笑みを浮かべた。自信満々だけど、本当に大丈夫?

「姉は本気のようです。マーチャント商会の尖兵して戦うのではなく…… だから、心配いらないでしょう」

 マリアはわたしの耳元でささやいた。

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