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ザ☆旅行記Ⅲ 愉快な仲間たち  作者: 小宮登志子
エピローグ(後日譚)
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突然バーサーカー

 ドーンはわたしのもとへにじり寄り、

「せっかくの宴会中ですが、ちょっとした事件です。斥候によれば、ここより南、馬をとばして1時間程度のところで、金貨の山と頭蓋骨を旗印にした軍団が野営を始めたとのことです」

「金貨の山に頭蓋骨?」

 どこの軍団だろう。わたし的には、あまり良い趣味とは思えないが……

「それは、マーチャント商会最強、シュヴァルツ将軍の旗印です」

 耳元でささやく声が聞こえた。振り向くと、知らないうちに、マリアがわたしのすぐ後ろに座っていた。

「あら、マリア、どうして? もしかして、話が聞こえてた?」

「いえ、ただならぬ気配を感じましたので、少しばかり精神を集中して……」

「感知魔法なの? まあ、いいわ。ところで、そのシュヴァルツって、何者?」

「ああ、ちょっと声が大きいかも」

 マリアはわたしの口を押さえようとしたが……


 しかし、少し遅かったらしい。突然、メアリーがすっくと立ち上がり、

「なに、シュヴァルツ!? あのクソチビめ! 宴会は止め!! 攻撃の準備を!!!」

 そして、大きな盃を思い切り力を込めて床にたたきつけた。一体、なんなんだ?

「実は、シュヴァルツは、わたしたち姉妹の仇敵なのです。姉はその名前を聞くと、条件反射的に、あのとおりで……」

 詳細は秘密ということだけど、とにかく、マリアがマーチャント商会に囚われたのは、そのシュヴァルツが元凶ということで、メアリーは「いつの日か必ずヤツを殺す」と誓いを立てていたそうだ。なお、「クソチビ」については、シュヴァルツは種族的にはドワーフで、ドワーフの身長は平均的にヒューマンの3分の2程度というところから。

「でも、闇雲に仕掛けたって返り討ちにあうだけよ。とりあえず、落ち着いて!」

 しかしメアリーは、わたしの言葉も耳に入らないようだ。引きとめようとした配下の兵や猟犬隊員を、文字通り、蹴散らしている。プチドラは騒ぎに気付かず酒樽に浸かって寝てるし、これはちょっとまずい。

「わたしにお任せを」

 マリアが立ち上がり、メアリーの後方から、静かに歩み寄った。そして、ゆっくりと手を伸ばし、背後からメアリーをそっと抱きしめると、どんな魔法を使ったのか、メアリーはすっかり大人しくなった。


「申し訳ありません。ヤツの名前を聞くと、体が勝手に……」

 メアリーは面目なさそうに言った。

「せっかくの機会だから、ここでヤツを討ち取っちゃいましょう。その方が、何かと今後のためにもなるし……」

 わたしは「ふぅ」と小さくため息。メアリーにも意外な弱点があったようだ。「シュヴァルツ」と耳にするたびにバーサークされてはかなわない。早々にその元を取り除くに限る。でも、相手はマーチャント商会最強。やっつけることができるかどうか。

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