ドーン捜索隊
ミーの町を出発したドーン捜索隊は(パルチザンではないが)野を越え山を越え、南方に向かって進んだ。わたしとマリアが馬車に乗ってることもあり、隻眼の黒龍で飛んでいくのとは段違いにスピードが遅い。メアリーと配下の精鋭は騎馬隊だけど、全体の速度はボトムに合わせざるを得ない。
とにかく早くドーンを拾って帰ろうということで、プチドラは隻眼の黒龍モードで上空から偵察、マリアは適当に時間をあけながら感知魔法で「索敵」を続けた。でも、だだっ広い平原が続いているだけで、ドーンの影も形もない。こうして、なんの手応えもないまま、時間だけが過ぎていった。
「同じような景色が続くのは、なんだか退屈ね……」
「そうですね。でも、もう少し先に大きな川があります。南に進むためには川を渡らなければなりませんが、近くに橋はなさそうです。少しばかり面倒かもしれません」
ここからは何も見えないけど、さすがマリア、感知魔法の力。
果して、小高い丘を越えると、東から西に、それなりに大きな川が流れていた。川岸には葦が生い茂っている。水の流れはそれほど速くなさそうだけど、川幅は数十メートル、渡るとなると、結構、大変そうだ。
「カトリーナ様、とりあえず安全を確認しますので、しばらくお待ちを」
メアリーは一番に馬を川の中に乗り入れ、慎重に周囲の様子を伺いながら川を渡り始めた。見ていると、川は一番深いところでも馬の膝が隠れる程度で、気合で渡ろうと思えば渡れないことはない。でも、わたしとメアリーが乗っている馬車が渡れるかどうか。
すると、隻眼の黒龍が馬車のすぐそばに降り、
「マスターとマリアはボクの背中に乗ってよ。二人を対岸まで渡した後、今度は馬車を運ぶから」
なるほど、「窮すれば通ず」ではないが(それほど窮していたわけではない)、なんとかなるものだ。こうして、わたしたちは、全員無事に対岸に渡ることができた。
「あら、これは?」
対岸で再び馬車に乗り込んだマリアが言った。何かを感じたのだろうか。
「どうしたの?」
「わたしたちは包囲されているようです。相手の正体はハッキリしませんが、それなりの人数です」
今日は厄日らしい。大方、野盗か(満州ではないが)馬賊の類だろう。でも、その程度の相手なら、余程の大軍でなければ大した脅威ではない。
マリアは神経を研ぎ澄ませ、
「来ました」
どうやらお出ましのようだ。周囲から、黒いフード付ローブをまとい馬に乗った賊が多数、迫ってきた。人数はこちらの2倍以上。その数を頼みにしているのだろうか、隻眼の黒龍を前にしているのに、賊にしては実に堂々としたものだ。




