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ザ☆旅行記Ⅲ 愉快な仲間たち  作者: 小宮登志子
第8章 裁判と帝国宰相
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しっかりしろ弁護人

 マーガレットの御大は張り切って証言していたが、一般論としては、噂話は伝聞証拠だから効果は限定的なはずだ。ならば、念のために反対尋問で注意喚起するくらいで十分。わたしは弁護人の耳を引っ張って、

「今の話は単なる噂、都市伝説よ。直接見たかどうか尋ねればいいわ」

「そうですね、そのとおりです。分かりました。さすがですね」

 なんだか頼りないけど大丈夫だろうか。弁護人は帝国大法官から反対尋問を認められ、

「バスターブレイカーさん、あなたは、ブラッドウッドさんが魔法を使うところをご覧になりましたか」

「いいえ。でも、みんな、そう言っていましたわ」

「ということは、なるほど。はい、分かりました」

 おいおい(納得してどうする)……


 法廷での陳述は続いた。わたしは「ご隠居様からエルブンボウと黒龍マスターの地位をいただいた」と証言し、実物を示した。

 弁護人は頼りないが、今のところトラブルはない。心配なのは「カトリーナ・エマ・エリザベス・ブラッドウッドを名乗る無法者がウェルシーを不法占拠している」と告発されることだけど、そうなりそうな気配はない。ウェルシーの一件の詳細は、皇帝や帝国宰相など、政治の中枢にいる人しか知らないのだろう。


「ねえ、マスター、ちょっと…… ボクも、ちょこっと言っておきたいことがあるんだけど、いいかな」

 不意にプチドラがわたしの服の袖を引っ張った。なんだろう。わたしは、もう一度、弁護人の耳を引っ張り、

「プチドラじゃなかった、ここにいる隻眼の黒龍も証人に申請して頂戴」

「イタタ…… 分かりました、はい」

 弁護人がプチドラ形態の隻眼の黒龍を証人(「人」か?)に申請すると、帝国大法官は、あっさりと、

「よろしい。認めよう」

 すると、御曹司の弁護人は、即座に異議を申し立てた。

「帝国法務院でドラゴンが証言をするのはいかがなものかと……」

 さすがプロフェッショナル、御曹司の弁護人はなかなかの切れ者かも。でも、こちらの弁護人はこれに対して反論しようとしない。この弁護人、本当に大丈夫だろうか。

 プチドラは小さな手を挙げて帝国大法官に発言の許可を求め、

「エルフやドワーフの証言の例はあります。ドラゴンが排斥されるいわれはないと考えますが、いかがですか」

 ツンドラ候の弁護人よりもプチドラの方が、よほど弁護人らしく見える。雇い主が単細胞のツンドラ候でなければ、この弁護人、とっくにクビになってるのではないか。

 帝国大法官は、しばらく間を置き(その間に考えたのだろう)、厳かに言った。

「異議には理由がない。よって、隻眼の黒龍を証人として採用する」

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