表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ザ☆旅行記Ⅲ 愉快な仲間たち  作者: 小宮登志子
第8章 裁判と帝国宰相
52/66

裁判の開始

 帝国法務院は皇帝の宮殿から離れた場所にある。判決は皇帝の名前で出されるが、裁判自体に皇帝は関与しないからだという(すなわち、帝国法務院の独立性・政治的中立性が確立されているということ)。裁判は、帝国大法官のほか4名の法官で構成される合議体によって行われ、帝国大法官及び法官の当事者との接触・贈答行為等は禁止されている(違反した場合には、最高で死刑のうえ財産没収もある)。さらに、裁判の公正さが疑われるような事情(帝国大法官や法官への接待、証人への暴行・脅迫、偽証(これは犯罪である)等)があれば、申立てによって再審が認められている。


 法廷では、御曹司とその弁護人が既に到着していて、ヒソヒソ話で打ち合わせをしていた。御曹司側にも証人として女性が一人、すごい目つきでわたしをにらみつけている。どこかで見た顔だけど、思い出せない。帝国法務院の記録係が既に所定の席につき、羽根ペンを握っている。わたしたちは原告側の席についた。

 しばらく待っていると、つかつかと靴音高く、黒い法服を着て白いかつらをかぶった5人組が現れた。帝国大法官と4人の法官だ。帝国大法官は木槌でトントンと机をたたき、開廷を宣言した。

 すると、ツンドラ候の弁護人は訴状を読み上げ、

「まず、ドラゴニア候アーサー・ウィリアム……(略)……ブラッドウッドを父親殺害の罪で告発する。次に……」

 御曹司の名前を聞いたのは初めてだ。それにしても長い名前。簡単に呪いをかけられないようにという意味もあるのだろうか。

 こうして訴状の読上げが終わると、

「被告は原告の主張を認めるか?」

 帝国大法官は尋ねた。御曹司は、ひと言、

「否認する」

 そこで、ツンドラ候の弁護人は、わたしを証人に申請した。わたしは、まず、御曹司の騎士団がご隠居様のお城に攻めてくるのを見たこと、ご隠居様の死体を見たことを証言した。

 なお、証人尋問が始まる頃になると、ツンドラ候はスヤスヤと寝息を立て始めた。法廷は退屈で眠くなるのは分かるけど、自分の訴訟で居眠りとはいかがなものか。ちなみにツンドラ候は、この日の法廷が終わるまで、目を覚まさなかった。


 一方、御曹司は、わたしがいかがわしい人物であると力説し、証明力を減殺する法廷戦術を取った。そのいかがわしさを立証するために呼ばれたのが御曹司側の証人、その名は、マーガレット・アンジェラ・クリスティアーナ・バスターブレイカー。すっかり忘れていたけど、。御曹司側の証人は御大だったのね……

「この女は、本当はすごくインランな魔女で、ご隠居様を寝技でたらしこんで、意のままに操っていると噂されていました」

 マーガレットは、わたしがいかに悪辣な女であるかを印象づけたいのか(個人的な恨みもあるのだろう、多分)、派手に身振り手振りを交えて証言した。でも、帝国大法官も法官も眉毛ひとつ動かさない。ポーカーフェースなので、表情からは、何を考えているか、まったく見当がつかなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ