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ザ☆旅行記Ⅲ 愉快な仲間たち  作者: 小宮登志子
第6章 南方の紛争
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真っ白な騎馬集団

 トカゲ王国軍は、その日から、少しずつ南方に後退を始めた。後退の途中で諸侯連合軍の攻撃を受ける危険はあるが、プチドラによれば、「御曹司は決断力に乏しいので、トカゲ王国軍が完全に見えなくなったところで、初めて『しまった』と思って、追撃を始めるだろう」とのこと。

 プチドラの予想通り、諸侯連合軍の動きは鈍かった。プチドラ(隻眼の黒龍モード)とわたしは、時々、上空からこっそりと偵察に出かけたが、諸侯連合軍は、進むでもなく退くでもなく、同じところに留まり続けた。最初からエルブンボウと隻眼の黒龍を使いたくないが、動いてくれないなら、いきなり切り札(御曹司の目の前で「バーカ」)の使用も止むを得ない。


 後退を始めてから5日後、ようやく、諸侯連合軍が動き出した。隻眼の黒龍に乗って、いつものように偵察に出かけると、北方で砂塵が舞っているのが見えた。何かがうごめいているようで、耳を済ませば、かすかに「わぁー」という鬨の声が聞こえる。

「プチドラ、あれは、ひょっとすると……」

「ようやく諸侯連合軍が動き出したようだね」

「ここからはよく見えないわ。もう少し近くに行ってみましょう」


 北方から、真っ白な騎馬集団が全速力で迫ってくるのが見えた。

「なに? あの、白いのは……」

 全員、雪のように白い馬に白い甲冑という騎馬軍団が、大挙して押し寄せてきている。

「あれはツンドラ候の騎士団だよ。勇猛果敢で有名なんだ。見たところ、ツンドラ侯以外に追っ手はいないようだね。ということは、兵力は1万から2万くらいかな」

 ツンドラ候は帝国の北端に広大な領地を有し、巨人の国と国境を接しているそうだ。常に巨人との抗争を余儀なくされているため、先祖代々武門の家柄で、その騎士団は帝国最強の名をほしいままにしている。伝統的に、ドラゴニア候とは政治的なライバル関係にあるらしい。

「あの非常識なくらい大きいのがツンドラ侯?」

 真っ白な集団の先頭には、2メートル30センチを超えてそうな大巨人が白馬にまたがって、巨大な剣を振り回している。巨人の血が四分の一程度混じっているらしい。普通サイズの馬が可哀相なくらいだ。

「そう。あれが現在のツンドラ侯、『無敵の』エドワード。でも、『単細胞』とも呼ばれているらしいよ」

 なんというか、べたなネーミング。「無敵」で「単細胞」とは……なんとも言いようがない。

「プチドラ、そろそろ引き揚げましょう。相手の正体も分かったことだし」

 隻眼の黒龍は南方に向き変えた。今から戻れば、迎え撃つ準備のためにの時間は十分ある。でも、諸侯連合軍がやっと動き出したと思ったら、ツンドラ侯が単独で追撃とは、総司令官がよく許したものだ。いくら無敵だからといっても……

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