表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化、コミカライズ】転生難民少女は市民権を0から目指して働きます!  作者: 鳥助
第四章 冒険者ランクD

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

90/365

90.メルクボア戦(1)

 一週間、ハイアントと戦った。途中、Dランクゴブリンの乱入はあったものの、しっかりとハイアントと戦い合えたと思う。


 ハイアントの攻撃力、防御力、素早さは分かった。攻撃パターンも頭の中に入ったので、今では難なく対処できている。


 また攻撃するタイミングも計れたのは良かった。相手の行動パターンが分かっているから、それに合わせて攻撃を与えることができる。


 そのお陰で回数をこなすごとに早く戦闘を終了させることができた。体にかかる負担も減らせたし、今度からは楽に狩ることができるだろう。


 十分にハイアントと戦ったし、次はメルクボアと戦うことに決めた。

 討伐料と肉の買取で最大6000ルタもいく、高値がつく魔物だ。


 ここは狩り方を探って、しっかりと倒し方を学びたい。でも、討伐料が高かったから強い相手なんだろうな、ちょっと怖い。


 今日も平原にやってきた。辺りを見渡しながら平原を歩いていると、ハイアントやゴブリンを見かける。そういえば、メルクボアは中々見かけなかった。


 探そうとすると見つからないのか、メルクボアらしき姿は見えない。この間は簡単に見つけることができたのに。仕方がないので平原を歩きながらメルクボアを探していく。


 歩き回ってしばらくしたら、メルクボアらしき姿を見つけることができた。駆け足で近寄ってみると、それはメルクボアだった。


 全体的に丸みを帯びた体をしており、たてがみも生えている。体長は明らかに私よりは大きい。目を凝らしてみると顔には牙があり、外に突き出ていた。


 今までは遠目で見ていただけだったので、近づいてみてみるとその大きさは脅威だ。こんなのと戦うってどうすればいいんだろう、今のままでは案が思い浮かばない。


 いや、考えないとダメだ。普通の冒険者よりも身体的に劣っているんだから、考えることで劣っている部分を補わないと。


 まず、相手は自分よりも大きな魔物だ。今までの攻撃では通用しない可能性がある。皮も厚そうだし、簡単に剣の一撃が体の奥まで届かないと思う。


 今までの剣の振り方じゃダメ、深く突き刺す攻撃を与えないと倒れてくれない。普通の力でも通用しないと思うから身体強化ありの剣の攻撃が有効そうだ。


 剣でのダメージがあまり期待できない今、有効なのは魔法攻撃となる。火で燃やすか、雷で感電させるか、風弾で打撃を加えるか。どれが通用するかは分からない、試してみないとね。


 始めの攻撃は決まった、魔法攻撃だ。魔法攻撃で相手を弱らせて、弱ったところを剣で刺して倒す。うん、このやり方でやってみよう。


 剣を抜き、メルクボアに近づいていく。今回は不意打ちはしない、先にメルクボアを知ることが重要だからだ。


 近づいていくとメルクボアがこちらに気が付いた。10mくらい離れたところで立ち止まると、メルクボアの大きさが目に見えて分かる。


 こんなに大きな相手と戦うのは恐怖でしかない。たじろぎそうになる心をしっかりと繋ぎ止めて、剣を構えてメルクボアの様子をうかがう。


 メルクボアは鼻息を荒くして、じっとこちらを睨んでいる。すると今度は前足で地面を何度も踏んできた、何かをするつもりだ。


 黙って対峙をしていると、頭を低くしてメルクボアは突然駆け出してきた。真っすぐに突進してくるが、ハイアントの速度と変わらない。


 接触する寸前で横にずれて避ける。まるで牙で突き上げるかのように頭を上げて立ち止まった。なるほど、牙で突き上げる攻撃だったのか。


 メルクボアから離れるように少しだけ走って距離を置く。メルクボアは鼻息を荒くして、体をこちらに向けて、また駆け出してきた。


 タイミングを見計らい、横に飛んで避ける。避けた後、牙を突き上げる仕草をしたメルクボア。やっぱり、あの動きはこういう攻撃に繋がっていくんだ。


 一つメルクボアの攻撃方法が分かった。速度もハイアントと変わらなかったので、避けやすいのは良かったな。


 また距離を取り、今度は手をかざす。魔力を高めて手に集中させる。使う魔法は火、魔力を魔法に変換して火球を作っていく。


「ブボォッ」


 またメルクボアが突進をしてきた。火球を作りながら、避けるタイミングを見計らう。十分に引きつけた後、横に飛んで避ける。メルクボアは牙を突き上げてその場で停止した。


 ここだ! 少し離れた位置まで下がると、火球を放つ。真っすぐに飛んで行った火球はメルクボアの体に直撃して、燃え上がった。


 火が燃え移ったのに、しばらくはメルクボアの反応は変わらなかった。皮が分厚いからなのか、熱が伝わるのが少し遅いらしい。


 火を気にせずにこちらに向き直った時だ、メルクボアの反応は変わった。


「ブボォッ」


 ようやく体の一部が燃え上がっていることに気づいたのか、その場で暴れだした。前足を地面について、後ろ足で頻繁にジャンプを繰り返す。


 その内、体を地面に横たえてゴロゴロと転がり出した。すると、段々と火が消えていき、完全になくなってしまう。


 それからゆっくりと立ち上がると、先ほどよりも荒い鼻息を出してこちらを睨み付けてくる。少なからずダメージは与えられたらしい。


 でも、そのせいでメルクボアは怒ってしまったようだ。前足で何度も地面を踏みつけて、こちらに攻撃をする機会をうかがっている。


 しばらく睨み合っているとメルクボアが突進をしてくる、先ほどよりも速い。先ほどよりも速い動きで横に飛んで避けると、メルクボアが通り過ぎていく。


 先ほどのような牙を突き上げる攻撃ではなくて、ただの突進だった。攻撃方法は変わったとしても脅威には変わりない。


 そのメルクボアは大きく旋回をして、またこちらに駆け出してきていた。どうやら止まらずにずっと走り回ってくるタイプの攻撃らしい。


 こちらも攻撃をしなければ、いつまで経ってもこの状況から抜け出せない。手をかざして魔力を高めていく。今度は圧縮した火球を作っていく。


 この作成には時間がかかる。意識を集中して急いで作っていくが、それよりもメルクボアの攻撃のほうが速い。


 すぐ目の前に迫ってくると、引きつけてから全力で横に飛んで避ける。避けたらまた集中して火球を作っていく。どんどん火球に火を詰め込んでいくと、完成した。


 メルクボアを見てみると大きく旋回してこちらに向かってきている。火球を構えながら放つタイミングを見計らう。


 だんだん近くなってくるメルクボアを引きつけて……ここで放つ! 火球は真っすぐメルクボアに飛んでいき、私は横に飛んで突進を避ける。


 避けた先でメルクボアを見てみると火球が着弾した。


 ゴオォォォッ


「ブボォォオオッ」


 メルクボアの前面から激しい炎が立ち昇る。走る速度が落ちていき、ぐるぐるとその場で回って暴れだした。すると、地面に寝転がりなんとか火を消そうと体を地面に何度も擦りつけた。


 すごく暴れているため、近寄るのは危険だ。とりあえず、落ち着くまで観察を続けてみる。


 ゴロゴロと何度も地面に擦りつけていくと、次第に炎が落ち着いてくる。だんだん火が小さくなっていき、煙になって消えた。


「ブホッ、ブホォッ」


 煙が立つメルクボアがよろよろと立ち上がる。どうやら、圧縮した火球では倒せなかったみたいだ。


 大丈夫、まだ風と雷が残っている。立ち上がったメルクボアと再び対峙した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] えーと。一体、資料室で何を調べたんです? ハイアントでも思ったんですが、自分で探すならともかく図書館とかではなく情報が絞られてるであろう資料室で、管理者のお爺さんが持ってきてくれた以上…
[良い点] 今更ですが仕事一つ、モンスター一種に対してしっかり時間を掛けるのいいですね。 [気になる点] 主人公は今何歳になりましたか? 季節の行事があるとそのへんが分かりやすいかも? [一言] 身体…
[一言] こんがり、焼かれるボア?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ