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【書籍化、コミカライズ】転生難民少女は市民権を0から目指して働きます!  作者: 鳥助
第四章 冒険者ランクD

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89.ハイアント戦(3)

 初めてのハイアントと戦った翌日、同じ平原へとやってきた。周囲を見渡すとポツポツとハイアントが徘徊しているのが見える。


 あと、ハイアント以外にも魔物はいる、メルクボアやDランクのゴブリンだ。だけど今日もハイアントだけと戦う予定なので、他の魔物は無視していく。


 昨日の戦いを忘れない内に今日もハイアントと戦いたい。しかも今日は複数のハイアントと戦う予定なので、気を引き締めていかないと。


 他の敵からは見つからないように離れてハイアントを探していく。しばらく歩いていくと、ハイアントを見つけた。近い距離に2体もいるから、お目当ての複数戦闘になりそう。


 でも、ちょっと距離が離れているから少しだけ引きつけて、近くのハイアントがいる場所まで移動する必要がありそうだ。そうと決まったら行くしかない。


 心を落ち着かせて深呼吸をする。落ち着いて戦えば昨日のように上手くいく、大丈夫。うん、いけそう。


 魔力を高めて体中に行き渡らせる、身体強化だ。不測の事態があるかもしれないから、今日は始めから身体強化ありで戦っていく。


 準備完了だ、ハイアント狩りの開始。


 まずは片方のハイアントに向かって駆け出していく。ある程度近寄るとハイアントはこちらに気づいて臨戦態勢を取る。10mくらい離れた位置で立ち止まる。


 目の前のハイアントは顎をギチギチと鳴らしながら、じりじりと近寄ってくる。その間にもう1体のハイアントの位置を確認する。


 右後方に20mくらいの距離にいる。ちらりと見ると、どうやら向こうもこちらを認識しているようだ。じりじりと近寄っているように見える。


 このままだと後ろを取られてしまう。2体が前に来るように方向を変えて後ろに下がっていく。


 ゆっくりと後ろに下がっていくと、2体が近づいてくる。なんとか視界に2体のハイアントを入れることができた、これで後ろを取られることはない。


 その場で剣を構えながら待っていると、あっという間に距離を縮められた。5mほどの距離まで近寄ってきた時、2体は丁度並ぶような位置になっていた。


 さぁ、ハイアントの複数戦だ。


 顎がギチギチと鳴る音が聞こえる。2体のハイアントが目の前にいるだけで、すごい威圧だ。怖気づきそうになる心をなんとか奮い立たせる。


 睨み合いが続いて数分、ようやくハイアントが動き出した。左のハイアントが突進を仕掛けてくる。顎の攻撃がきそうだ。


 腰を低くして待っていると、すぐ目の前に開いた顎が迫ってきた。


 ガチンッ


 接触する寸前で後ろに飛んで噛みつきから逃げる。だが、ハイアントはまだ止まらない。後ろ足を動かして後を追ってくる。それからは連続の噛みつく攻撃をやってきた。


 ガチンッ ガチンッ ガチンッ


 リズムよく閉じられる顎をリズムよく避けていく。もう1体に少しだけ視線を向けると、ちょうどこちらに向かってきていた。前足を上げていないところを見ると、こちらも顎の攻撃らしい。


 頭を突っ込ませて開いた顎で襲い掛かってくる。


 ガチンッ


 だけどそれを避ける。もちろん、それで諦めるハイアントではない。さらに頭を突っ込ませて、噛みつく攻撃を仕掛けてくる。


 ガチンッ ガチンッ


 何度も襲い掛かってくる顎を避けていく。そろそろ、こちらからも攻撃を仕掛けないと……そんなことを考えているとハイアントの頭同士がぶつかり合った。


 ゴチンッという鈍い音が響くと、ハイアントの動きが止まる。


「ギチギチギチッ」

「ギチギチッ」


 お互いの顔を見ながら顎を鳴らしている、あれは怒っているんだろうか? ハイアントの生態は良く分からないけど、チャンスだ。


 左のハイアントの頭を目がけて剣を振った。バキッという外殻にヒビが入る音がする。


「キィィッ」


 前足を上げて身悶えするハイアント。もう1体のハイアントはこちらを見て、再び顎をギチギチと鳴らす。するとまた顎の攻撃を仕掛けてきた。


 ガチンッと顎が閉まる音が聞こえる。後ろに避けていた私は一歩前へ踏み込んで剣を振るった。バキッと外殻にヒビが入った音がする。


「キィッ」


 こちらも前足を上げて身悶えをした。2体はこちらを見てきて、今度は前足を上げてくる。


 2体のハイアントは交互に足を前に突き出しながら攻撃してきた。シュッ、シュッと素早い足の連続攻撃に避けるので忙しい。


 だけど、タイミングを合わせて剣を振るった。剣は右のハイアントの左足を叩き切った。


「ギィィッ」


 今度は左のハイアントの攻撃に合わせて右足を叩き切る。


「ギィィィッ」


 2体のハイアントは残った前足をうねうねと動かして身悶えをした。さぁ、次はどんな攻撃でくるのか。剣を構えながら待っていると、今度は前足を下ろしてきた。


 顎をギチギチさせて相談しているように見える。しばらく睨み合っていると、左のハイアントが先に動き出した。前足を下ろして突進してくる。


 動きを見極めて避けるタイミングを計る。顎を開いて頭を突っ込ませた時に、後ろに飛ぶ。すると飛んだ後に顎がガチンッと閉じる。


 ここで一歩前に踏み出して、力一杯に剣を振る。ヒビの入った頭にぶつかり、頭が砕ける音が響いた。


「ギィィッ」


 様子見のために後ろへと飛んで、もう1体のハイアントを見る。もう1体のハイアントは前足を上げて、こちらに向かってきていた。


 残った右足を使い、足を引いては突いてくる。足が2本じゃないから避けるのは簡単だ。そして、タイミングを見計らい残りの右足を叩き切る。


「キィィッ」


 前足を全て失ったハイアントは体を起こしながら身悶えする。その隙を狙って、一歩前に踏み込んで軽くジャンプする。


「はぁっ!」


 振り上げた剣を力一杯に振り下ろす。隙だらけだったハイアントの頭に渾身の一撃が入った。


 バキンッ


 外殻が割れて飛び散る大きな音が響いた。頭が完全に割れたハイアントは悲鳴も上げられず、地面にドシンッと落ちる。


 すぐにもう1体のハイアントを見ると、立ち上がりたくても立ち上がれないような動きをしていた。今倒したハイアントは完全に沈黙している。


 動けないハイアントに近づいて、トドメに剣を振るった。にぶい音と共にそのハイアントも完全に沈黙する。


 同時に2体との戦闘が終了した、終わった途端にどっと緊張が押し寄せてきた。なんとか無事に終わって本当に良かったな。


 ふぅ、一息ついた時だった。


「グギャーッ」


 聞き慣れたゴブリンの声が聞こえて振り返った。そこにはあの日みたゴブリンソードがこちらに駆け寄ってくるのが見える。


 どうやら戦闘に時間をかけすぎてしまい、他の魔物に見つかってしまったようだ。しっかりとハイアントと戦えたのはいいけど、こういうことがあるなら戦い方を見直さなくてはいけない。


「グギャギャッ」


 いやみったらしい笑みを浮かべて立ち止まり、じりじりと距離を詰めてくる。他の魔物はいない、ゴブリンソードだけだ。


 気を引き締めて剣を構える。


 ◇


 今日は2体のハイアントと4回戦った。途中、ゴブリンソードとゴブリンアーチャーが乱入してきたが、なんとか倒せた。


 なんだか忙しくて、今日は昨日よりもへとへとになっている。なんとか重い体を引きずって冒険者ギルドへと辿り着いた。


 列に並ぶと疲れからか自然と眠気が襲ってきた。うつらうつらとしてしまい、このまま寝入って――


「次の方、どうぞ」


 はっ、いけない。カウンターに行かなくちゃ。

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― 新着の感想 ―
足落とした時、身悶えてるときに追撃行くにはあかんのやろか? わざわざ敵が体勢整えるのを待つのは何故?
[良い点] モンスター相手の戦闘で、はじめににらみ合いをするのは他の人の作品ではあまり見ませんが、柔道やボクシングなどスタートと同時に攻撃したりせずに間合いを測ったりしますね。
[一言] コツコツ大事
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