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【書籍化、コミカライズ】転生難民少女は市民権を0から目指して働きます!  作者: 鳥助
番外編

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アルセイン子爵(5)

 正式にアルセイン子爵として叙爵された私に与えられたのは……スタンピードで滅亡した町、それと復興金十億ルタだった。しかも、この十億ルタ……国への借金だ。


 領地持ちと同時に膨大な借金を抱えることになった。だけど、いい事はある。三年間の税金免除、これは大きい。


 だけど、この話を聞いたジルゼム様は「ケチだな」と言った。十億ルタと三年間の税金免除がケチ……。流石は公爵様だ、私といる次元が違う。


 この資金を使い、私はアルセイン領を復興させないといけない。やるべきことが多くて、何から手を付けていいのか分からなかった。なので、即行ジルゼム様とトリスタン様に相談した。


 すると、先ずやるべきことは手紙を書くことだと言った。……手紙? 一体なぜ? 町をまず元通りにするのが先決じゃないの? そう思っている私に二人は説明してくれた。


 まずは周辺貴族への認知を優先にすること。そのために、手紙はかかせないらしい。


 まだ、アルセイン領が復興を始めたことを周辺の領主は知らない。だから、アルセイン領に領主が出来て、復興を始めます。という、認知をしてもらうことが必要だと言った。


 今後、周辺の領と関わりが出てくるだろうから、新任の礼儀を取るのが常識らしい。これで、挨拶の手紙がなかったら、その領との交流は取れないと思ってもいい、と脅された。


 貴族ってその辺が難しい。だから、その注意を受けて私が始めたのは手紙を書くこと。


 それと並行して、アルセイン領の領民も増やさないといけない。その手段に有効なのが、難民とスラムに住んでいる人達を引き受けることだった。


 他領に領民を下さい、なんて言ったら恨まれる。領民が減ればそれだけ税収が減るという事だから。


 でも、税を払っていない存在であればきっと快く引き渡してくれる。それに、その人達を救いたいという気持ちがあったから、積極的に手紙に書いていった。


 二領隣まで書けばいいと言われたが、用心には用心して三領隣まで書くことにした。なので、かなりの手紙を書く羽目になり、書き終わる頃には手首が死んだ。


 でも、これでアルセイン領が復興を始めた事が知られたはずだ。貴族との交流の第一歩を踏み出せたわけだ。


 そして、その返信は必ず来る。なぜかと言うと、復興には様々な物資が必要だ。その物資を売りつけようと貴族たちが躍起になるからだ。


 そう、みんな……私が貰った復興金が目当てなのだ。だけど、これがチャンスだと二人は言った。


 何も伝手のない領主が復興金をきっかけに他領の領主と交流を持てる。それは、今後の領地運営に大事な貴族との繋がりが出来るという事。


 領地を栄えさせるためには、繋がってくれる他領の力も必要だ。だから、そのきっかけが貰える復興金という餌を有効活用しなければならない。


 そこで、私の手腕が問われる。この初めの一歩を踏み外せば、復興は複雑で難しいことになってしまう。だから、慎重に見極めないといけない。


 領地運営……考える事が多すぎて頭が痛くなる。二人はこんな事を平然とやっていたなんて、凄すぎる。私も二人に負けないくらいに努力しなければ。


 気合を入れ直すと、次の段階に入っていく。それは、町の視察だ。


 ◇


 スタンピードで滅んだ町の視察。町の復興はまず視察から始まる。ジルゼム様の支援を受けて、私は大勢の地方官吏を連れて町の視察に訪れた。


 まず、私が目にしたのは崩れた外壁だった。門は打ち破られ、門近くの外壁が崩れている。スタンピードの威力が凄まじかったことを物語っていた。


「門付近の外壁には修理が必要ですね。ですが、門以外の外壁は崩れていません。では、門付近の外壁の修理を項目に入れますか?」

「はい、お願いします」


 ジルゼム様が派遣してくれた地方官吏がこの町の修繕ポイントを紙にまとめていく。私はそれを確認しながら、町の視察へと乗り出した。


 外壁から町の中に入ると、そこには想像とは違った光景が残っていた。


「……あまり家が崩れてませんね」


 門付近は惨憺たる光景だったのに、町の建物は無事なものが多かった。門に近い家は半壊していたが、その奥の建物は平気だった。そのまま進んでいくが、やはり損壊した建物が少ないように見える。


「どうして損壊した建物が少ないか分かりますか?」

「これは憶測ですが、道に人が溢れていたんじゃないでしょうか? 魔物は人を見ると襲う習性がありますから、建物に目が行くよりも早く、道に溢れた人達を見ています」


 建物の損壊が少ないのはそのせいなのかもしれない。じゃあ、逃げ出そうとしていた人達は……。そこまで考えて、首を強く横に振った。


「建物の中も見て見ましょう」

「では、あそこの建物に……」


 そう言って、私たちは適当な建物の中に入っていった。閉められた扉を開けると、中は思ったよりも綺麗だった。


 埃が溜まっていたり、蜘蛛の巣が張っているが、損壊している様子は見受けられない。その建物の奥へ行くと、そこはキッチンだった。


 棚を開けると、食器がそのまま残っていたり、調理道具がそのまま残っていたりしていた。正直、このまま洗えば問題なく使えそうなものばかりだった。


「状態のいい道具や食器が沢山ありますね。こういう物が沢山あると、必要な物資が減っていきます」


 じゃあ、元々家にあった物を再利用するっていう考えでいいんだ。この辺りは人手がある時に集めて、どれくらいの数があって、どれくらい足りないのか調べる必要がありそうだ。


 そうして、地方官吏と一緒にその家をくまなく見ていった。使える物、使えない物。それらをリストアップしていき、今後の復興に役立てる。


 一通り家の中を見終わると、外に出た。


「全部の家の中を見るのは我々では無理です。それは後の領主様の手腕に任せるとして、我々は町の状態の確認をしましょう。門、外壁、建物。それらを重点に見て、派遣する職人を決めていきます」

「では、先に町全体を見て、修理が必要な建物がどれくらいあるか確認しましょう」


 やる事が決まると、私たちは町の全容の確認を始めた。


 ◇


 その日の夜。町の広場に天幕を設置して、みんなで夕食を食べた。ジルゼム様が派遣してくれた地方官吏は皆優秀でとてもいい人たちばかりだ。


 夕食の時もこの町の復興をどうすればいいのか、真剣に話し合いをした。おかげで、色々な意見が聞けたことで様々な可能性が見えてきた。


 有意義な話し合いも終わり、それぞれが床につく。私も用意された簡易ベッドに横たわり、寝ようとした。だが、中々寝付けなかった。


 そういえば、コーバスとホルトのみんなは何をしているんだろう。私がこんなことになってしまって、会いに行く暇がなくなってしまった。


 だから、事情を説明するために手紙をしたためた。今頃、手紙を読んで驚いているだろうなぁ。まさか、私が領主だなんて……信じられないかもしれない。


 時間が出来たら、みんなに会いに行きたいな。でも、もう……以前のように仲良く出来ないのかな? それを考えると心細くなってくる。


 みんなに会いたい気持ちだけが膨らんでいった。

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― 新着の感想 ―
師匠は駆けつけてくれるんじゃないかな
まさかの連日投稿!?∑(゜_゜) 凄い! 無理し過ぎず、楽しく頑張ってください。 しかし、公爵と伯爵、本当に良い人たちですね!
手首〜〜〜!!(絶叫)w
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