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【書籍化、コミカライズ】転生難民少女は市民権を0から目指して働きます!  作者: 鳥助
番外編

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錬金術師の道(4)

 あれから一か月が経ち、体調を万全にした私たちはバジリスク討伐にコーバスから離れた森までやってきた。その森は鬱蒼としており、森の中は薄暗い。


「バジリスクって透明になるんでしたよね」

「そうそう。バジリスクの皮は特殊でね、魔力を籠めると透明になるようになっているんだ。それだけじゃなくて、魔力を纏っているから並大抵の攻撃を防いでしまう。透明な上に硬く素早い、しかも魔法を使ってくるから戦うには厄介な相手なんだ」

「大きさは二メートル五十センチ前後でAランクの魔物としては小ぶりだ。皮は透明になるが、それ以外は透明にならない。バジリスクを認識したい時は、それ以外の部分を確認する必要がある」

「それ以外……目や爪や口の中って訳ですか。この鬱蒼とした森の中でそれを見分けるのは大変ですね」


 バジリスクについて復習をすると、とても厄介な相手だと分かる。透明になるから認識しづらい、魔力を纏っているから並大抵の攻撃は通じない、その上素早い。それだけじゃなくて、魔法も使ってくる。流石、Aランクだけの事はある。


「しかし、オルトーは本当に大丈夫なのか? 魔法は使えるらしいが……」

「ふっふっふっ、舐めてもらっては困るな。これでも冒険者ランクはBを貰っている。しかも、錬金術も使うからそこらのBランクとは訳が違うよ」


 えっ、オルトーさんがBランク!? 私と同じだ……。冒険に出た素振りは見せていなかったのに……。


「しかも、私には魔法具があるからね。こいつのお陰で、色んな危機を乗り越えてきた」


 そう言って見せてきたのは、左手首に巻かれた腕輪だ。その腕輪が一瞬光ると、途端に大きくなり、それは杖の形に変化した。


「ほう、魔法具か……珍しいな」

「魔法具ってなんですか?」

「魔法具はね、まだ魔法が未発達の時代に発明された魔力に反応する道具の事さ。魔法具を応用して作られたのが現代の発火コンロのような魔道具なんだよ。だけど、現代魔道具とは比べられないくらい、昔の魔法具の方が強力な物が多い。なぜ、昔に作られた魔法具が強いかというのは……」

「あー、そういうのはいい。話が長くなりそうだ」


 ちょっと聞いてみたかったけど、今はバジリスク討伐の方が大事だ。辺りを見渡してバジリスクを見つけようとするが、鬱蒼した森の中にバジリスクの姿は見えない。もしかしたら、透明になって潜んでいるかもしれない。


 注意深く辺りを見渡した時、魔力の波動を感じた。何かいる!? そう思って、魔力を感じた方向を見ると、目の前に氷の刃が迫ってきていた。あまりにも速い魔法に対処が出来ない!


 眼前に迫った氷の刃に立ち尽くしていた時、目の前に魔法の壁が現れた。魔法の壁は次々に襲い掛かる氷の刃を防いで見せる。


「魔法の発動には気配がある。それを感じ取れる私がいる限り、魔法の先制攻撃は当たらないよ」


 魔法の壁はオルトーさんが発動させたものだった。凄い……私では反応出来なかった魔法を簡単に防いで見せた。


「むっ、今度はそっちか!」


 すると、オルトーさんがすかさず杖を振って、魔法の壁を作った。その次の瞬間、魔法の壁に無数の風の刃が当たって砕けていく。凄い、こんなに早く反応出来るなんて。


「ほう、やるな」

「オルトーさん、凄いです!」

「ふふふっ、もっと褒め給え。その内、リルも魔法の発動を感じ取られるようになる。いいや、バジリスクと戦う時は魔法の発動よりも、魔力探知の感覚を使った方が良い。バジリスクは魔力の塊みたいなものだからね」


 バジリスクは魔力の塊……それなら私でも探知出来そう。鬱蒼とした森の中を目視で確認するが、バジリスクの姿は確認出来ない。ここは感覚で探すしかない。


「そこだ!」


 その時、ヒルデさんが何もない所に剣を振った。すると、何もないのに剣が弾かれる。えっ……もしかして、ヒルデさんには分かるの?


「ふぅ、並大抵の力じゃ剣は通らないな。これは、初めから身体強化を使うしかない」

「ヒ、ヒルデさん! どうして、場所が分かったんですか? もしかして、ヒルデさんには見えているんですか?」

「奴の爪と目が見えた。だから、攻撃したんだ」


 えっ、この鬱蒼とした森の中でそんな小さな物が見えるの? 流石Aランクの冒険者、私とは経験が違う。


「奴はかなり素早い動きで、止まらずに動いている。当てるには身体強化か身体超化が必要だ」


 身体強化が必要だと言いつつ、生身の体で剣を当てたヒルデさんは凄い。というか、二人とも凄い! この二人に負けないように、私も考えて攻撃をしなくっちゃ。


「止まらずに動いているか……。なら、その道を作ってあげよう」


 オルトーさんは杖を木に向けて翳した。すると、杖の先から光が噴射して、木にかかる。その光は蜘蛛の巣の形をしていた。


「私の魔法具はね、魔力を触れるようにする物。形、強度、特質を自由に変えられるんだ。だから、こうして魔力の蜘蛛の巣を張り巡らせることが出来る」


 オルトーさんが周りの木に光を噴射させると、周囲はあっという間に光の蜘蛛の巣で埋め尽くされた。


「これでバジリスクが通る道が限定された」

「なるほど、いい案だ。奴は蜘蛛の巣のない所を動いているみたいだ。これなら、攻撃が当てやすい」

「まだまだ、私の力はこんなものじゃない。バジリスクを五秒、同じ場所に留まらせてくれ」

「分かりました」


 そういえば、バジリスクへの秘策があるんだった。その為にもバジリスクを一定の場所に留まらせなくっちゃ。その為には、バジリスクの居場所を突き止める必要がある。


 バジリスクからの魔法攻撃は続いている。その度にオルトーさんが魔法の壁を出現させて、防いでくれていた。その間にバジリスクを認識しなきゃ。


 意識を集中してバジリスクの魔力の気配を感じる。錬金術で魔法をいつも使っていた私には、魔力はとても近い存在になっていた。その近い存在を見つける。


 これは私の魔力。近くにあるのが、オルトーさんの魔力。少し離れた所にヒルデさんの魔力。そして、バジリスクの魔力は……あった! これだ!


「バジリスクの魔力を探知出来ました!」

「よくやった。なら、あの場所でバジリスクを止めるぞ!」

「はい!」


 ようやく探知出来たバジリスクの魔力。タイミングを見計らい、指定された場所にバジリスクが来るのを待つ。じっと待っていると、そのタイミングが来た。


 私とヒルデさんは身体強化で一瞬でその場所に移動した。すぐに私は魔法の壁を出現させる。その次の瞬間、魔法の壁に大きな衝撃が走った。バジリスクが衝突したみたいだ。


「オルトー、今だ!」

「任されよ!」


 オルトーさんは腰に括り付けた瓶をバジリスクに向かって投げた。その瓶はバジリスクに当たり、中に入っていた液体が飛び散った。


 それを見届けた私たちはすぐにバジリスクから距離を取った。すると、その液体の効力が発揮していく。


 透明だったバジリスクの体が浮き出てきたのだ。灰色の鱗を纏った、牙や爪が生えたトカゲの姿が露になる。


 だけど、効力はこれだけじゃない。


「ギ、ギャッギャッ」


 バジリスクの体が痙攣しだした。


「チャンスか!?」


 その一瞬の隙を付き、ヒルデさんが襲い掛かった。だけど、それに気づいたバジリスクが瞬時に移動する。ヒルデさんの攻撃は当たらなかったが、バジリスクの動きは変わった。


 明らかに動きが遅くなっている。


「よし、透明解除と麻痺付与が効いたみたいだ! 討伐するチャンスだぞ!」


 オルトーさんが作った対バジリスク専用の薬品が効力を発揮した。透明解除だけじゃなくて、素早さを封印するために麻痺も施している強力な薬品だ。


「麻痺付与してもまだ動けるのが憎いところだね。麻痺の効果を高める調合をした方が良かったようだ。もっと、強力にするには素材から変えないといけないな……。どんな素材がいいだろうか?」

「こんな時に調合の事を考えるのは止めてくれ。だが、これで討伐をしやすくなった」

「討伐がしやすいのなら、素材の皮を傷つけずに持って帰りたいな。もう一つ協力してくれたら、最高品質の素材が手に入るんだが……やってみないか?」

「最高品質の素材! いいですね!」


 その話を聞くと、バジリスクが最高品質の素材にしか見えなくなった。こうなったら、ほぼ新品状態の素材をゲットしたい。


「なら、もう一度バジリスクの足止めを頼む」

「任せておけ。リル、もう一度だ」

「はい、やりましょう!」


 みんなのやる気がグンと上がったような気がする。目視でバジリスクを確認しながら、ある場所に移動するまで待つ。そして、タイミングを見計らい、身体強化を使ってバジリスクとの距離を詰めた。


 ぶつかる瞬間、魔法の壁を出す。バジリスクは急な方向転換が出来ずに、魔法の壁にぶち当たった。


「よし!」


 オルトーさんはバジリスクに杖を向けると、太い縄のような光が飛び出していった。その光の縄はバジリスクの体を捕らえると、その体にグルグルに巻かれていく。


 あっという間に、バジリスクの体は手足と一緒に光の縄で拘束され、身動きが取れない状態になった。これなら、一回でトドメを刺せる!


「よし、このまま……おっとっと!」


 だけど、バジリスクも黙ってはいられない。乱暴に暴れ出し、魔法を連発してきた。


「杖は私が持つ! オルトーは魔法の対処を!」


 ヒルデさんがオルトーさんから杖を貰うと、バジリスクが暴れないように力いっぱい光の縄を引っ張る。その横ではオルトーさんは、バジリスクが放つ魔法を魔法の壁で受け止めていく。


「リル! 今の内、トドメを刺すんだ!」

「魔法に気を付けろ!」

「分かりました!」


 今、自由に動けるのは私しかいない。すぐに、魔法の壁を解除して剣を握った。暴れまわるバジリスクにトドメを刺すには、頭がいい。あとは、タイミングを見計らうだけ。


 バジリスクの頭の方に移動した時、ある一点に違和感を覚える。この感覚……もしかして。


「魔法の壁!」


 後ろを振り向いて、魔法の壁を出現させた。すると、氷の刃が降り注いできた。やっぱり、あの感覚は魔法発動のものだったんだ。私にも魔法の発動を感じる事が出来たよ。


「トドメ!」


 氷の刃を防ぐと、バジリスクの頭目掛けて身体強化の乗った剣を突き刺した。かなり抵抗はあったが、剣は深々と頭に刺さる。その瞬間、バジリスクは断末魔を上げ、痙攣して動かなくなった。


「よし! 最高品質の素材を手に入れたぞ!」

「よくやったな、リル」

「はい!」


 みんなで協力して、バジリスクを討伐することが出来た。やっぱり、仲間がいるのって凄い! こんな強い敵も倒せちゃうんだから。


 仲間に恵まれた事に感謝をして、みんなで喜び合った。

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― 新着の感想 ―
リル魔道具編がはじまる!予感
魔力の物質化って結構すごいのでは
透明になる事を知っているのならもっと専用の準備をしていくべきなのではと思いました。防犯用のカラーボールみたいな物を洗えば落ちる染料で用意するとか。 あと、皮しか透明化出来ないのなら霧を出すみたいな水魔…
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