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【書籍化、コミカライズ】転生難民少女は市民権を0から目指して働きます!  作者: 鳥助
最終章 冒険者ランクB

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300/365

300.家探し(1)

 冒険者ギルドに依頼をした翌日、早速私たちは動き始めた。冒険者ギルド内にある資料室へ行き、素材のありかを調べ始める。色んな書物を漁って、目的の素材がどこにどんな風に生えているかを見る。


「うーん、ここには載ってませんでした」

「こっちもだ。載ってなかった」

「次の書物を調べましょう」

「そうだな。資料はまだある、しらみつぶしに探していこう」


 何冊か読んでみたが、中々見つからない。でも、まだ読んでない本のほうが多いので悲観するのはまだ早い。すぐに違う本を手に取って素材のありかを探していく。


 二人で地道に本を見ていく。黙々と本を読むだけなので、ちょっと肩が凝ってきちゃった。いつも体を動かしてばかりだから、黙って何かをするのは久しぶりで体が硬くなる。


 少し解して、また本を読み続けた。集中して読んでいると、読んでいた本の上に手が乗った。何かと思いを顔を上げてみると、隣にいたヒルデさんが手を乗せたみたい。


「リル、見つけたぞ」

「本当ですか?」


 ヒルデさんの言葉に私は嬉しくなった。差し出された本を見てみると、確かにそこには素材の詳細が書かれている。素材の特徴や効果、生える場所まで詳しく載っていた。


「やりましたね、まずは一つめです」

「この調子で他の素材も見つけていこう」


 一つ見つけると俄然やる気が漲ってくる。ヒルデさんは本に書かれたことを他の紙に書き写し、私は本を読み漁って素材のありかを調べ始める。


 ◇


 午前中、みっちり書物を読み漁った。見つけた素材の詳細は二つ、残り三つ必要だ。順調に素材のありかが見つかって本当に良かった。この調子で残りの三つも見つかればいいな。


「素材のありかを調べるのも大事だが、リルの家を探すのも重要だぞ」


 昼食を食べに来たお店でヒルデさんにそんなことを言われた。


「町に住むことが夢だったんだろう? だったら、それを実現するために動き出さないといけないぞ」

「でも、先にヒルデさんの薬が……」

「いいや、リルの夢も同じくらい大事だ。というわけで、午後はリルの家探しに行くぞ」


 Bランクになってすぐに解体所の仕事を始めて、家探しをしている暇はなかった。仕事が終わっても、今度はヒルデさんの体を元に戻す薬を手に入れるために動き出していたので、自分の家は後回しにしていた。


 確かにそれも重要だけど、ヒルデさんの薬のほうが重要だなぁ。そんな考えはヒルデさんにはお見通しで、私の家探しも同時進行するつもりのようだ。


「家探しなら私もやったことがある。力になれることがあると思うぞ」

「そうですね、ヒルデさんはもう家に住んでますから。でも、いいんですか? 私の家探しに時間を使ってしまって」

「いいも悪いもない。私とリルの仲じゃないか、少しでも力になりたいんだ」

「ありがとうございます。じゃあ、その……家探し手伝ってもらってもいいですか?」

「もちろんだ。協力させてくれ」


 こうして、午後の時間は私の家探しの時間になった。昼食を食べ終えた私はヒルデさんに連れられて、大通りを歩く。


「家を探すには専門のところに行かなければならない。この町の住居は全て役人が取り仕切っていて、家を探すには役場に行かなくてはならない」

「へー、そうなんですね」

「その役場なんだが四つに分かれていて、それぞれで受け持つ地区が違う。北、南、東、西。リルはどの辺に住みたい?」


 地区が四つに分かれているのか。そしたら、私の希望はある。


「ヒルデさんと同じ地区に住みたいです」

「私と同じ地区でいいのか?」

「はい。近い方が何かと便利ですし、その地区なら私もよく知っているので不安はないですし」

「そうか、なら私が住んでいる東地区の役場に行くぞ」


 大通りをそのまま進んでいき、私たちは東地区の役場を目指して歩く。歩いて数十分、目的の役場に辿り着いた。役場はとても大きな建物で、大通りに面している立地のいい場所に建っていた。


 その役場の中に入ると手前に小さな四角いカウンターがあり、その奥にはとても長いカウンターが設置されていた。カウンターの中では役人と思われる人たちが働いていて、色んな手続きをしているみたいだった。


「住居関係はこっちだ」


 ヒルデさんが先に行き、私が後をつける。初めての場所なのでどこに行ったらいいか分からないが、経験者のヒルデさんについていけば間違いなさそうだ。そのままついていくと、一つのカウンターの前についた。


「ここ、いいか?」

「ここは住居関係の窓口ですが、間違いありませんか?」

「間違いない」

「では、おかけください」


 役人と思われる青年に促され、私たちはイスに座った。


「今日の御用はなんでしょうか?」

「家を探しに来た。私ではなくこの子の家だ」

「この子……子供が住む家ですか。失礼ですが、必要なものが揃っているか確認させていただいてもよろしいですか?」

「もちろんだ」


 子供が家を借りたい、っていうから怪しまれちゃったかな? でも、普通はそうだよね。子供が一人で家を借りるなんていう話は聞かないと思うから。


「では、市民権や冒険者証はありますか?」

「冒険者証ならあります」


 私はマジックバッグの中から冒険者証を取り出すと、その役人に渡した。役人はちょっと信じられないような顔をして冒険者証を見てみると、目を丸くして驚いた。


「Bランク……この子供が、本当ですか?」

「もちろん本当だ。なんなら冒険者ギルドに確認を取ってもらっても構わない」

「すいません、驚いてしまって。確かにBランクの冒険者なら市民権がある扱いなので、町に住んでも大丈夫です」


 まぁ、普通ならそうだろう。こんな子供がBランクになるなんて信じられないよね。でも、信じてもらって良かった。


「町に住む権利はあるみたいですね。では、家を借りるお金はありますか?」

「お金ならある。冒険者証から口座を確認してもらえればいい。リル、いいか?」

「いいですよ」

「では、失礼して口座を確認させていただきます」


 役人が装置の前に移動すると、装置を使って冒険者証から口座を確認する。装置の画面を見ていた役人の顔が驚愕した。それを見ていた私たちは顔を見合わせて、してやったりと笑う。


 口座をしっかり確認した役人はちょっと慌てた様子で話しかけてくる。


「失礼しました、家を借りれる資金はあるみたいですね。住む権利も住む資金もありますし、問題はありませんでした。では、具体的にどんな住居に住みたいか、話を移させてもらいます」


 申し訳なさそうに頭を下げる役人は話を進める。


「住居にはお一人で住まわれる予定ですか?」

「はい、そうです」

「でしたら、一人用の住居をご希望でよろしいですか?」

「どうしてそんなことを聞くんですか?」

「中には作業用の部屋が欲しいとか、友人が泊まれる部屋が欲しいと言って二人用以上の家を希望される方がいらっしゃいますので」


 そっか、部屋が多い方がいい人もいるんだ。私の場合は呼ぶ人もいないし、一人用で十分だと思う。


「一人用で大丈夫です」

「かしこまりました。では、こちらが今空いている家のリストになります」


 役人が下の棚から大きな冊子を取り出してテーブルの上に置いた。


「こちらに家の間取り、備え付けの備品、住所が書かれています。これを見て頂いて、希望する家を教えてください。あちらに席がありますので、ごゆっくりご覧ください。何か分からないことがありましたら、遠慮なく聞いてくださいね」

「分かりました」


 指し示された場所は仕切りのある机が並んでいて、そこで落ち着いて見れるらしい。私たちは席を立ち、大きな冊子を持ちながらそっちの席へと移動した。


「じゃあ、中身を見ましょうか。結構量があるんですね」

「良かったな、色々と選べるぞ」


 席を移動すると、早速冊子の中を見ていく。冊子を一枚捲ると、一枚の紙に間取りの絵が書かれており、その端には色んな情報が載っていた。


「ここは大きな一部屋になっている家ですね」

「一部屋に台所、リビング、寝室が一緒になっているところか。使い勝手は良さそうだが、別々の部屋のほうが良くないか?」

「そうですね。できれば寝室は個別の部屋が欲しいところです」

「なら、リビングと台所は一緒になっていて、寝室は別の部屋のものを探そう。トイレとシャワーはどうする?」

「別々についていたほうがいいですね。シャワーじゃなくてお風呂がついたものがいいです」

「なるほど、確かにそうだな。じゃあ、それも考慮しながら家を探していこう」


 ヒルデさんがいると色んな必要な条件が出てくるから調べやすい。私たちは次々に条件の合う家を探し始めた。

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― 新着の感想 ―
[気になる点]  この世界は、市民の家にも浴室があるんですか?
[良い点] 貯金額はBランクとしても多かったのかな。 単純にあんまり休まずここまで駆けてきたから、一般的な速度でランクを上げるより早い分の期間分丸々生活費が浮いてるのも案外大きそう。贅沢も子供の贅沢レ…
[一言] 再生用ポーションの素材を採りに行く事を考えると今家を借りるのは時期尚早なような。素材を採りに遠出する事になったら借りたばかりの家を長期間留守にする事になって留守にしてる家にムダにお金を払い続…
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