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【書籍化、コミカライズ】転生難民少女は市民権を0から目指して働きます!  作者: 鳥助
第五章 冒険者ランクC

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285.スタンピード(8)

 ジャイアントスパイダーとの戦いは順調だった。私の炎の竜巻がとても効いたのか、抜けてくるジャイアントスパイダーはほとんどいなかった。


 お陰で手持無沙汰になった二人は苦戦している隣の冒険者たちの助太刀に行った。押され気味だった隣の冒険者たちはその助太刀でなんとか戦線を維持できたみたいだ。


 そうやって冒険者同士が協力し合って戦えば、波のように押し寄せるジャイアントスパイダーも敵ではない。戦いは長く続くが、まだ戦線を維持できている。


「いっけぇっ!」


 炎の竜巻が消えると、また炎の竜巻を作ってジャイアントスパイダーの群れに当てた。それに触れたジャイアントスパイダーは燃え上がり、竜巻に巻き込まれるとその体を回転の力でバラバラにする。


 オークの時よりも楽に大量に倒すことができている。ここで早く倒しておいて、第四波に備えておきたいところだ。炎の竜巻を三本に増やし、ジャイアントスパイダーを次々とせん滅していく。


「その調子だ、リル!」

「今回はリルの魔法が大活躍だな!」


 離れたところで戦っているハリスさんとサラさんが声をかけてくれる。二人の目から見ても、かなりの勢いでジャイアントスパイダーを倒しているので驚いているみたいだ。


 二人は他の冒険者たちと一体ずつ仕留めていくので、せん滅力が段違いだ。この調子で残りのジャイアントスパイダーも倒したい、そう思った時だ。奥から異様に高い位置にある赤い目玉が見えてきた。


 それはいくつもあり、ゆっくりとこちらに近づいてきていた。そして、その高い位置にある目の持ち主が、炎の竜巻の明かりによって姿が露になる。


 ジャイアントスパイダーよりも三倍はある体をした、特別な個体が出現した。


「キラースパイダーだ! 気をつけろ、口から物を溶かす酸を吐き出すぞ! 尻からは毒のついた糸を出す!」


 とうとう現れた。ジャイアントスパイダーの特別な個体、その名もキラースパイダー。その大きな体だけでも脅威なのに、酸と毒糸を吐き出す危険な魔物だ。


 にわかに冒険者たちが騒ぎ出していると、キラースパイダーの口から酸が吐き出される。吐き出された酸は両者の間に落ち、シューッという音と煙を出した。あれは強い酸だ、当たったらひとたまりもない。


「あんな巨大な蜘蛛、どうやって倒せば……」

「剣は届かない。槍はどうだ?」

「槍だって届かないぞ」


 隣にいた冒険者たちはキラースパイダーの大きさにたじろいでいるみたいだ。今までで一番大きな魔物だから、気持ちは分かる。でも、確かに言えることは、これを倒さないといけないということだ。


「でかい魔物が現れたな」

「どう倒す?」


 すると、二人が戻ってきた。二人の目にはキラースパイダーが映っている。


「一撃では仕留められませんね。あんな巨体で動き回られると困りますし……足の節を狙って切断しましょう」

「なるほど、攻撃回数は多くなるが、確実に動きを止められるな」

「動き回られるよりはいい。それでいこう」


 まずは足の節の切断を狙う。私たちは強く頷くと、すぐに配置につく。今度の私は剣を抜き、サラさんと一緒にキラースパイダーに向かっていった。


「これを喰らえ!」


 ハリスさんが付与魔法のついた弓矢を連射した。物凄い勢いで飛んでいった弓矢はキラースパイダーの第一関節を貫き、二本の足が切断される。残る足は六本だ。


「キシャァァッ!」


 距離を詰める私たちを見たキラースパイダーはお尻を高く上げ、毒糸を吐き出した。


「触れるなよ!」

「はい!」


 広がって飛ばされた毒糸。私たちはそれに触れないように避けて走る。でも、避けるのを見ていたキラースパイダーはさらに毒糸を吐き出してきた。


「くっ、これじゃあ中々近づけない」

「糸が邪魔ですね」


 毒糸を避けることで精一杯になった。どうにかして近づかないと、そう思っていると一本の弓矢が糸を吐くお尻に向かっていく。そして、爆発を起こした。


「キシャァ!!」

「毒糸が止まった、チャンスだ!」

「行きましょう」


 ハリスさんの爆発矢のお陰でキラースパイダーからの毒糸攻撃が止んだ。その隙に私たちは距離を詰めて、キラースパイダーに襲い掛かる。


「はあぁっ!」

「やあぁぁっ!」


 サラさんが左側を、私が右側を狙う。無防備な足の節を狙って身体強化した一撃で切りつける。その一撃を受けた足は切断された。そして休まずもう一本の足を切りつけると、その足も切断される。


「シャァァッ!」


 キラースパイダーがこちらを向き、口から酸を吐き出した。これは避けれない、私は魔法の壁を作りだしその酸を受け止めた。その時、グラリとキラースパイダーが揺れて、体が地面の上に落ちる。


「こっちの足は全部切り落としたぞ!」


 どうやら、サラさん側の足が全部切り落とされたらしい。片側の足が無くなったキラースパイダーはもう立てなくなった。だったら、やることは一つ。サラさんと一緒にキラースパイダーの頭に剣を突き刺した。


「キシャァァッ!」


 頭を突き刺されたキラースパイダーは雄たけびを上げ、動かなくなった。よし、キラースパイダーの討伐完了だ。傍にいたサラさんとハイタッチを交わす。


「キラースパイダーは他にもいる、どんどん倒していくぞ」

「はい。次は隣のキラースパイダーを狙いましょう」

「よし、行くぞ!」


 私たちはキラースパイダーの上から飛び降りると、他のキラースパイダーに狙いを定め走っていった。


 ◇


 ジャイアントスパイダーとキラースパイダーの群れは冒険者の手によって、討伐されていった。ここまで戦うと冒険者同士の連係も様になってきて、相乗効果が生まれる。


 大きな怪我を負う冒険者がいない中、スパイダーたちは駆逐された。残ったのは大量の死骸だけだ。こうして、第三波も大きな損傷もなく終わることができた。


 戦いが終わると後ろで待機していたギルド職員が前に出てきて、戦線を少しだけ後ろに下げた。その下げた戦線で私たちはつかの間の休息を取ることになる。


 回復ポーションを飲み、食事を食べて、体を休める。眠らずに済む薬を飲んだからか、睡魔はないのが救いだ。そんな中、近くにいる冒険者同士で情報交換という名の会話が交わされる。


「次はどんな魔物がくると思う?」

「そうですね……オーガかワイバーンが来ると思います」


 隣で戦っていた魔法使いが話しかけてきたので、予想を話してみた。次は山の中腹に生息している魔物がくるだろう、そう思って話すと、隣の冒険者たちはみんな顔色を悪くした。


「オーガとワイバーンか……俺はまだ戦ったことがないんだ」

「俺も戦ったことがない」

「私もないわ」


 なんと、隣で戦っていた冒険者たちは戦った経験がないと言ってきた。そうすると、苦戦することが目に見えて分かる。


「オーガは魔法を使ってきて、軽い怪我ならすぐに治ってしまいます。ワイバーンは空飛ぶトカゲなので、素早さが厄介です」


 少しでも戦いやすくなるように特徴を話すが、隣の冒険者の表情は優れない。これはもしかしたら、隣の戦線が崩れる可能性が出てきた。


「とにかく、協力して倒すしかないな」

「初めて戦う魔物だとしても、協力しあえれば乗り切ることだってできる」

「そうだと、いいんだけど……」


 隣の冒険者たちの表情は暗い。次の第四波、まずいことになるかもしれない。隣の戦線が崩れたら大変なことになる、どうにかして戦線を維持しなくっちゃ。


 そんなことを考えていると、空が明るくなってきた。すると、周りがざわつき始める。その理由は空を見ればわかる。山がある方向から、空に黒くうごめく何かが見えていたからだ。


 それが遠くてなんなのかはっきりとは分からない。それでも、黒い物体がなんなのかは分かる。山に生息している空を飛ぶ魔物と言えば、ワイバーンだ。


 ワイバーンの群れがまっすぐこちらに向かってきていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] キラースパイダーの倒し方で足を潰すにしても最初から片側四本を狙えばもっと早く仕留められたような。そして、足を潰せるなら首を落とるたような…… 次はワイバーンの群れですか。ここまで来ると下位ラ…
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