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【書籍化、コミカライズ】転生難民少女は市民権を0から目指して働きます!  作者: 鳥助
第五章 冒険者ランクC

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281.スタンピード(4)

 群れを成してオークが迫ってくる。ゴブリンの時とは違い、圧が増していた。それもそうだ、ゴブリンの数倍は大きな巨体をしているのだから。


 目に見えるのは普通のオークばかりで、特別な個体はまだ見当たらない。それでも、数の多さで圧倒されそうだ。


 地面を埋め尽くすほどのオークを目の当たりにして、緊張感が漂う。ゴブリンの時には余裕の雰囲気だったが、今はその余裕がないように感じる。Cランク以上の魔物だからだろう、気を抜けばこちらがやられてしまう。


 魔法使いたちが前に出て、魔法を放つ準備をする。私も前に出て、手を前にかざした。まず、試す魔法は雷だ。感電死させるためには、一体どれくらいの魔力が必要なのか確認しなければ。


 どんどん距離を詰めてくるオーク。顔が確認できるほど近づくと、冒険者たちは一斉に魔法を放ち始めた。あちこちで詠唱する声が聞こえ、次々と魔法を放っていく。


 私も魔力を高めて、雷魔法を発動させた。


「くらえっ!」


 手からほとばしる雷は真っすぐにオークに向かっていった。数秒で雷がオークに触れると、数体が感電した。体を震わせてその場で立ちすくむオーク。しばらく、身動きが取れなかったオークだが、その体がふらつき、地面の上に倒れた。


「動く気配はないな。どうやら、その威力でオークを倒したみたいだ」

「これくらいの威力……これでやってみます」

「頼んだぞ。抜けてきたオークは私たちで倒す。リルは手あたり次第にオークを倒していけ」


 ちょっと強めの雷魔法でオークは倒れてくれた。ゴブリンの時よりも少し魔力を使ってしまうけれど、魔物が強くなっているから仕方がない。変に力を弱めて倒せなかった方が大変だ。


「それじゃあ、ガンガン放っていきます。お二人とも、後のことはお願いします」

「任せておけ」

「やってやるぞ」


 私は手を前に構え、雷魔法を放つ。ほとばしった雷は数体のオークに当たり、感電する。体を震わせると、フッと体の力が抜けて地面に倒れた。


 一瞬で数体を倒しただけでは、まだ足りない。オークたちは無数にいて、徐々に距離が縮まっていく。そうはさせまいと、ハリスさんが矢を番えた。


「俺の矢を喰らえ!」


 付与魔法つきの矢が放たれた。前に出てきたオークの頭部が吹き飛ばされて、その場に倒れる。いつもよりも威力が弱いのは、数を倒すために威力を抑えているのだろう。次々と矢を射るとオークの死体が量産されていく。


 私の雷魔法とハリスさんの付与魔法つきの矢、それでオークを倒しても抜けてくるオークはいる。それをサラさんが対処する。


「よし、行くぞ!」


 前に出てきたオークに向かっていき、剣を振るった。オークの振るった武器とぶつかると、力の差でオークの武器が飛ばされる。


「くらえっ!」


 手ぶらになったオークの懐に飛び込んで剣を振るった。その重い一撃でオークは絶命して、地面の上に倒れる。


「二人はこのまま奥にいるオークを討伐してくれ。私が二人を守る、安心してくれ」


 サラさんが私たちの前に立ちはだかり、守ってくれる。これで安心して後方から攻撃ができるね。


「任せたぞ、俺たちは奥のオークの数を減らす」

「魔法に集中できます。任せました」

「あぁ、任せろ!」


 私は手を構えて魔法を打つ準備をすると、ハリスさんは矢を番える。前ではサラさんが仁王立ちしてくれる、頼もしい後姿を見てやる気が漲ってくる。


 オークとの戦いは始まったばかりだ。


 ◇


 オークとの戦いはゴブリンの時より厳しい戦いになった。肉が厚いせいで攻撃が通り辛いのが理由だ。ゴブリンの時よりも戦線が後ろに下がっているような気がする。


 ここにきて、場所によって押されているところとそうでないところが出てきた。多分押されているところは強い冒険者じゃないのだろう、そのしわ寄せが両隣の冒険者たちに科せられた。


 私のところもそうだ。片方の隣にいた冒険者が押され気味でオークが前に出てきたのだ。そのオークは真っすぐ進まず、こちらにも進み出てくるから対処が厳しくなる。


 こちらの前に出てくるオークの数が多くなると、サラさんの仕事が増えた。休むことなく、次々とオークを切り伏せて倒していく。だけど、隣からなだれ込んでくる数が多くキツくなってきていた。


「おい! そっちもしっかりと戦え! このままだと崩れるぞ!」


 堪らずにサラさんが隣で戦っている冒険者たちに声をかけた。すると、その冒険者たちは戦いながら言葉を返してくる。


「仕方ないだろう! こんなに数が多くちゃ、手が足りなくなる!」

「すいません、私の魔法があまり通じなくて!」

「いつもなら、こんなに苦戦しないのに!」


 隣にいた冒険者たちも精一杯戦っているのは分かるけど、上手く連係が嵌っていないように見える。きっとパーティーを組んでいない冒険者が隣同士になっただけなのだろう。


 火と風の魔法を使う魔法使いが一人、剣士が一人、槍使いが一人か。魔法使いは火魔法や風魔法を使ってオークを攻撃しているが、肉の厚いオークにはあまり通じているようには見えない。というか、肉の厚いところばかり狙っているように見える。


「あの、魔法を当てる場所を変えたらどうでしょう。足元を重点的に狙って、立てなくする方法もあります」

「えっ、それでどうするの?」

「立てなくなったところを槍で突き殺すんです。剣士の人は魔法を食らわなかったオークを相手にしてください」

「上手くいくのか?」

「今まで連係らしい連係をとっていなかった、やってみよう」


 アドバイスをすると、その三人は分かったように頷いた。そして、早速魔法使いが風魔法でオークたちの足を攻撃する。風の刃がオークたちの足を切り裂くと、オークたちは痛みで立てなくなりその場に倒れ込む。


「行くぞ!」


 倒れたオークたちに槍使いが向かう。そして、即行でオークの頭を突き刺して討伐した。倒れたオークを槍使いが倒している一方、剣士は魔法を受けなかったオークを相手にする。


「倒れろ!」


 剣士は振った剣はオークの頭をかち割り、その場でオークが倒れた。大勢のオークを魔法使いと槍使いが倒し、漏れたオークを剣士が倒す。そのやり方に変えると、少しずつだが戦線を押し上げられた。


「すごい、オークの数が減っていきます!」

「どんどん、オークに魔法を放ってくれ! 俺がトドメを刺す!」

「これだったら、なんとか対応できる! ありがとな!」


 三人の連係が上手く回ると、溢れていたオークの数が目に見えて減ってきた。そのお陰で、私たちのところに来るオークの数が減ってサラさんの負担が減る。


「リル、ありがとう。おかげで戦いやすくなった」

「流石だな、良く見ている」

「これで戦線が維持できますね。さぁ、私たちは目の前のオークに集中しましょう!」


 まだ、オークは数えきれないほどいる。このまま戦線を維持して、第二波を打ち破ろう。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] (返信不要) そうかタクトくん人気なしか残念、新魔法のクッションが遺産になってしまったweb版上致し方ない [一言] 周囲と連携もさすがね、ここからが正念場だねMP切れや休憩なしだと瓦…
[一言] 自分の戦線を維持しつつ崩れそうな戦線にアドバイスできる余裕がある時点で 上澄みにいますよねリルちゃん
[一言] 足を狙えとか子供に指摘されるような事を今まで気付かない冒険者ってランクはいくつなのやら。 足止めなら土魔法で堀とか事前に用意できていたらよかったですね。
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