表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化、コミカライズ】転生難民少女は市民権を0から目指して働きます!  作者: 鳥助
第五章 冒険者ランクC

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

257/365

257.魔物討伐~ビスモーク山~(12)

 三人で集まって倒したワイバーンを確認する。一人では倒せない敵だったけど、三人で協力してなんとか倒した魔物だ。


「二人とも、良くやってくれた。手ごわいワイバーンをこんなに早く倒せるなんて思いもしなかった」

「ハリスさんの的確な援護がなかったら、ここまで早く倒すなんてできなかったと思います」

「私もだ。二人の援護がなかったら、私の大剣は届かなかっただろう」


 三人とも考えることは一緒で、援護がなかったら倒せなかったという共通意識があった。空を飛ぶ魔物を相手にするのが大変なのは分かっていたが、よく理解していなかった。


「ワイバーンに飛びながら攻撃されている時が一番大変でしたね」

「あぁ、その時は私は手を出せなかった。もっと強ければ、タイミングを見計らって撃ち落とせただろう」

「飛ぶ魔物は総じて手ごわいからな、時間がかかることを覚悟はしていた」


 空を飛ぶ魔物は多くはない。だから戦い慣れていない部分があったから、大変さが際立った。だけど、今後はそういう相手とも戦うことになる。少しずつでもいいから経験を積んで、楽に倒せるようになりたい。


「ワイバーンを早く倒せたのは、それぞれができることを的確にしていたからだと思う。初戦でこんなに早く倒せたのには驚いた」

「ハリスさんの時はどうだったんですか?」

「今の倍以上の時間がかかっていただろう。それどころか怪我もしていた始末だ、辛勝といったところだ。相手にできなくて逃げたこともあるくらいだからな」

「ハリスの時でもそんなに苦戦していたのか。そうか、それだけ強い魔物を私たちは倒したんだな」


 サラさんは勝利の余韻に浸りながらワイバーンを見つめていた。一方、ハリスさんは以前のパーティーのことを思いだしているみたいだ。


「ハリスさんのパーティーは上手くいかなかったんですか?」

「あぁ、好き勝手に動くパーティーだったな。俺の弓も活躍しどころがなかった。だから、俺はパーティーを追放されたんだ」

「えっ、そうなんですか!?」


 ハリスさんを追い出すなんて、信じられない。一緒に戦っていて分かったけど、ハリスさんの弓は攻撃だけじゃなくて利便性も高い。そんな弓の活躍しどころがなかったなんて、どんなパーティーだったんだろう。


「私はハリスの弓には何度も助けられた。だから、そいつらの気が知れない」

「そうですよ、ハリスさんの弓は強いだけじゃなくてとても便利です。なくてはならない仲間です」

「二人とも……ありがとな」


 ちょっと暗い感じだったハリスさんが明るい表情を見せてくれた。前のパーティーでどんな扱いされていたか分からないけれど、今は私たちのパーティーにいるんだから気にしないで欲しい。


「このメンバーでまだまだ戦えると思うんです。きっと戦うごとに強くなっていきますよ」

「そうだな、私もそう思う」

「俺もだ」

「今日もどんどん戦いましょう」


 良かった、二人とも同じように考えてくれている。ワイバーン一体だけじゃなくて、もっと倒せるはずだ。


「次のワイバーンを探して戦おう」

「よし、行こう」


 ワイバーンをマジックバッグに収納すると、私たちは次のワイバーンと戦うためにその場を動き出した。私たちの戦いはこれからだ。


 ◇


 その後もワイバーンを見つけては戦いに挑んだ。まだ戦い始めたばかりなので戦い慣れておらず、苦戦しながらもなんとか倒している。それでも、少しずつ手ごたえみたいなものは感じていた。


 戦闘が終わるとみんなで相談しあい、どんな動きが良かったか確認しあった。そうやって、少しずつ戦い方を学んでいき、次のワイバーン戦に備えていく。そのお陰で、戦うごとに少しずつ苦戦をしなくなってきた。


 夕方になるギリギリまで戦い、夕方前には山を下りる。厳しい戦いの連続だったからかなり疲れていたが、充実感はあった。今日のワイバーン戦を乗り越え、少しは自信がついた。


「最後のワイバーン戦は上手くいったと思います。あと、もう一戦したかったですね」

「あぁ、次のワイバーン戦が楽しみだ」

「この調子でどんどんワイバーンを討伐していこう」


 二人とも自信に満ちた表情をしていて、とても頼もしかった。これだったら次のワイバーン戦はもっと上手くいく、そう思えるくらいの手ごたえを感じる。


 三人でお喋りをしながら休憩所に向かっている時、私たちの前にサラさんの元パーティーメンバーが立ちはだかった。


「よう、サラ。今日は本当にワイバーンを倒したのか?」

「怖くなってCランクの魔物と戦っていたんじゃないだろうな?」


 この間からしつこくサラさんに付きまとっている人たちだ。わざわざ確認にくるなんて、よほど暇をしているんだろうか?


「今日はワイバーンを討伐してきた」

「それは本当か? だったら証拠を見せてみろよ」

「そうだ、どうせないんだろうがな」

「Cランクの魔物が出てきても、俺たちは驚かないぜ」

「サラじゃワイバーンと戦うのは無理だからな」


 そういって笑いだす元パーティーメンバー。私たちは顔を見合わせると、マジックバッグを取り出した。そして、中に入っているワイバーンを外に出す。


「な、にっ」

「うそだろ……」


 出てきたワイバーンを見て元パーティーメンバーは驚愕した。信じられないものを見るような目でワイバーンとサラさんを見てきている。そこにサラさんが二人に声をかける。


「どうだ、本当にワイバーンを倒してきたぞ。この大きな傷が分かるか、見慣れた傷だろ? これは私の大剣で刺したものだ」


 ワイバーンを大剣で刺した痕を見せると、元パーティーメンバーは絶句した。こんなことになるとは思ってもみなかったのか、しばらく絶句したまま動かなくなる。


 しばらく静かだったが、元パーティーメンバーの一人が動いた。サラさんに近づき、片手を掴んだ。


「オーガもワイバーンも倒せるんなら、俺たちのところに戻って来いよ」


 その言葉にサラさんも私も驚いた。まさか、誘ってくるなんて思ってもみない。呆然としていると、サラさんが正気に戻ったのか、その手を振り払った。


「今更何を言うんだ。私を使えない者扱いしてたくせに」

「そんな力を隠していたんなら、なんで俺たちの時に発揮しないんだ? それこそ、俺たちを騙していたことになるじゃないか」

「俺たちに力があることを隠して騙していたんだな。全く、ズルい女だぜ」

「許してやるから、戻ってこい。そしたら、好きなだけオーガとワイバーンを倒してもいいぞ」


 なんて勝手な言い分なんだ、この人たちに怒りがこみ上げてくる。サラさんには十分に倒せる力があったのに、それを周りの人が生かし切れていないだけじゃないか。


「冗談もそこまでだ。私はお前たちのところには戻らない。今の仲間たちと討伐をしていくつもりだ」

「いいから、お前は俺たちとくるんだよ!」


 またサラさんの手首を掴んで、強引に引っ張った。これ以上は見過ごせない!


「止めてください、サラさんは嫌がっています!」

「うるせぇ! 元々サラはこっちの仲間だったんだ!」

「今は私たちの仲間です!」

「うるせぇって言ってるんだよ!」


 すると、もう一人の元パーティーメンバーが剣を抜いて、こちらに襲い掛かってきた。だけど、動きは遅い。私はすぐに剣を抜き、相手が剣を振り下ろした瞬間に強烈な一撃で剣を攻撃した。


 ガッキーン!


 元パーティーメンバーの剣を弾き飛ばしてやった。すぐに剣先を元パーティーメンバーに向けると、その人は驚いて地面に尻もちをつく。


「サラさんには元々Bランクの魔物と戦える実力はありました。だけど、それを生かしきれなかったのは周りのせいです。だから、サラさんが戻ったとしてもBランクの魔物が倒せるかどうかは分かりません」


 サラさんの実力を生かしきれなかったところに戻すなんて嫌だ。毅然とした態度で話すと、元パーティーメンバーは思い当たる節があるのが気まずそうな表情をした。


 すると、サラさんが前に出る。


「もうお前たちとはやっていけない。私は、私の力を必要としてくれる今の仲間といる」

「くそっ!」

「あとで後悔しても知らないからな!」


 元パーティーメンバーはそう言い残すと、走って去って行ってしまった。残されたサラさんは去って行った方向を睨むと、こちらに向き直る。その表情は穏やかなものだった。


「二人とも、面倒かけてすまない。どうか、これからもよろしく頼む」


 サラさんは頭を下げてお願いをしてきた。そんなことを言わなくても大丈夫なのに、私たちは仲間なんだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
普通に逃がしちゃうのかぁ〜
[一言] >「あとで後悔しても知らないからな!」 >元パーティーメンバーはそう言い残すと、走って去って行ってしまった >「二人とも、面倒かけてすまない。どうか、これからもよろしく頼む」 >サラさんは頭…
[一言] 剣を抜いて攻撃されたのにけっこうあっさりしてるね 殺されても文句言えない行為だと思うんだけど
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ