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【書籍化、コミカライズ】転生難民少女は市民権を0から目指して働きます!  作者: 鳥助
第五章 冒険者ランクC

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251.魔物討伐~ビスモーク山~(6)

 三人で森の中を歩いていく。時々、立ち止まって聴力強化をして音を探ってみた。


「音は大分近くなっているみたいです」

「私の目には魔物の姿は見えないな。ハリスはどうだ?」

「俺も見えない。音も聞こえないし、リル頼りになってしまうな」

「うーん、こっち側でしょうか」


 耳を傾けて音が聞こえている方向へと歩いていく。だけど、歩けど魔物の姿は見えない。音は聞こえているのに不思議だ、もしかしたらこの音は魔物じゃない可能性もある。


「もう少し歩いてみて、何もなかったら違う魔物を探しましょうか」


 三人で少し離れながら森の中を進んでいく。確実に音は大きくなっているのに、魔物の気配はない。やっぱりおかしい。もう少し歩いてみて、聴力強化をしてみると音が良く聞こえてきた。この近くにいる。


「ここの場所が良く音が聞こえます。この周辺にいるはずなんですが」

「この周辺か……何も見えないぞ」

「敵が見えない……まさか! みんな木の上を見てみろ!」


 ハリスさんが声をあげ、私たちは木の上を見た。すると、木の枝にジャイアントスパイダーが何体もいたのが見える。上からこちらを見て、攻撃する隙を狙っていた。


 私たちは咄嗟にその場から離れる。その瞬間、ジャイアントスパイダーたちのお尻から糸が吐き出された。間一髪、その糸から逃げ出すことができる。


「なるほど、固い音というのはこいつらの顎が鳴る音だったんだ」

「うかつだった。こいつらがそんな音を出していたなんて、気づかなかった」


 そういうことか、だから音だけはして声は聞こえなかったんだ。このジャイアントスパイダーたちはここで冒険者がくるのを待ち伏せしていたんだろう。


 私たちは武器を構えて、ジャイアントスパイダーと対峙した。


「全部で何体だ?」

「……五体です」

「どうする、やるか?」

「このくらいの数を相手にできないと、Bランクの魔物と戦うのは夢のまた夢になってしまう」

「では、やりましょう」


 ジャイアントスパイダーが木から下りてくる光景を見ながら、みんなの意思確認をした。数は多いが、こちらだって数がいる。逃げるのは弱者のすることだ、と言わんばかりに好戦的な態度をとった。


 ジリジリとにじり寄り、顎を鳴らすジャイアントスパイダー。そのジャイアントスパイダーに始めの一撃を与えたのは、ハリスさんだった。


 シュッ


 バァン!


 弓矢が飛んできたと思ったら、その弓矢はジャイアントスパイダーの体に刺さり爆発した。その瞬間、ジャイアントスパイダーが一斉に飛び掛かってくる。こんなに一度に飛び掛かられると、対処が!


「私に任せろ!」


 前に出てきたサラさんが大剣を構え、タイミングよく剣を振るった。すると、飛び掛かってきたジャイアントスパイダーは剣圧に負けて弾き飛ばされる。


「ナイスです、サラさん!」

「一体ずつ、確実に仕留めていくぞ!」


 吹き飛ばされたジャイアントスパイダーは地面に転がった。その隙に陣形を整える。最前衛はサラさん、その後ろに私、後方にハリスさんだ。さて、この陣形で私がするべきことは……


「サラさん、大剣でジャイアントスパイダーに向かっていってください。私はハリスさんへの護衛に回ります」

「私は大暴れしてもいいということだな」

「なるほど。では、俺がジャイアントスパイダーにトドメを刺していく」


 二人の攻撃力は高い、それを生かして私は援護に回る予定だ。話しが終わると、ジャイアントスパイダーが起き上がり、広がってこちらに向かってきた。


「ここから先へは行かせないぞ!」


 サラさんが大立ち回りで大剣を振るう。ジャイアントスパイダーは大剣に当たってまた吹き飛ばされたり、大剣からジャンプして逃げたりしていた。


 大剣にぶつかったジャイアントスパイダーは地面に転がる。その隙にハリスさんが弓矢を射る。真っすぐに飛んだ弓矢は仰向けのジャイアントスパイダーの腹に刺さり、爆発した。


「まずは一体!」

「さぁ、どんどん来い!」


 サラさんは大剣を構え、ハリスさんは弓を番える。散らばったジャイアントスパイダーは様子を見ていた。


 しばらく睨み合いが続くと、ジャイアントスパイダーはお尻をこちらに向けた。お尻から糸を吐き出す。


「なんのっ!」


 飛んできた糸を大剣で切り裂く。だが、粘着性があった糸の二本が大剣に絡んでしまった。


「くっ!」


 サラさんは大剣を引くが、ジャイアントスパイダーの引きも強く思うように大剣を動かせない。その隙に残りの二体のジャイアントスパイダーがこちらに向かってきた。


「俺は左を、リルは右を頼む!」

「分かりました!」


 ジャイアントスパイダーに向かって手をかざし、魔力を高める。使う魔法は氷、氷の刃を作るとそれをジャイアントスパイダーに向かって放った。


 氷の刃はジャイアントスパイダーに向かって飛んでいった。だけど、分かりやすい軌道だったからか、ジャイアントスパイダーは後ろに飛びのけてそれを避ける。


 もう一方の手を向けると、同じように氷の刃を放つ。その氷の刃は逃げるジャイアントスパイダーに掠り、一本の足を砕くことができた。


「リル、仕留めたか!?」

「いえ、まだです!」

「こっちも弓矢を避けられた」


 お互いにまだジャイアントスパイダーを倒せていないらしい。サラさんはまだジャイアントスパイダーの糸と格闘しているようだ、どうにかしてあの糸を断ち切らないと。


「サラさん、大剣をこちらに向けてください!」

「分かった!」


 サラさんの体が動くと、大剣が良く見える。その大剣に手をかざすと、火球を作って大剣に向かって放った。火球は飛んでいき、大剣を燃やす。すると、糸に火が燃え移り、糸は切れて大剣から外せることができた。


「ありがとう、リル。これで大剣を振り回せる!」


 これで、サラさんは大丈夫だ。私はさっきのジャイアントスパイダーと対峙する。距離を取ってこちらを観察しているように見える。一気に攻撃を仕掛けないところが賢いところだろう。


「ハリスさん、そっちは大丈夫ですか?」

「一対一なら援護は必要ない。どうにかできる」

「じゃあ、私はこっちのジャイアントスパイダーに集中しますね」


 流石Bランクの冒険者だ、弓使いであってもこういう状況は大丈夫らしい。頼りになる冒険者が近くにいると、こんなにも心強いんだね。


 改めてジャイアントスパイダーと対峙する。相手は闇雲に襲い掛かってくるタイプじゃないから、ちょっと面倒だ。そっちがその気なら、こっちが攻め立ててあげる。


 片手をジャイアントスパイダーに向けると、火球を作る。そして、それを放つ。だが、それで終わりじゃない、またすぐに火球を作って放つ。当たるまで連続攻撃だ。


 ジャイアントスパイダーは襲い掛かってくる火球をジャンプして避ける。何度も避けるのだが、少しずつ避けるのが間に合わなくなってきている。そして、火球がジャイアントスパイダーの足に当たり、燃え上がった。


「キシャァァ!」


 ジャイアントスパイダーが奇声を上げて、地面にひっくり返った。今がチャンスだ。身体強化をすると、一気に距離を詰める。剣を上段に構えると、地面でジタバタ動くジャイアントスパイダーの頭を切り落とした。


 頭を切り落とされたジャイアントスパイダーは絶命して動かなくなる。これでこっちのジャイアントスパイダーは仕留めた、あとの二人はどうなっているんだろう。


 ハリスさんに顔を向けると、相手をしていたジャイアントスパイダーは風穴ができていて絶命している様子だった。どうやら無事に倒せたみたいだ。


 サラさんに顔を向けると、大剣を振り回してジャイアントスパイダーを追い詰めていた。一体は仕留めたらしく、最後の一体を相手にしている様子だ。


「そこだ!」


 タイミングよく大剣を振るうとジャイアントスパイダーに当たり、真っ二つに切られた。最後のジャイアントスパイダーも倒せたみたい、周りに敵がいないか聴力強化をする。うん、いないみたいだ。


「周りに敵はいないようです」

「そうか、ありがとう」

「よし、討伐証明を刈り取ろう」


 周りに敵がいないことを告げると、二人は緊張を解いた。それから、ジャイアントスパイダーの討伐証明を刈り取り始める。私も刈り取らないと。ナイフを持って、倒したジャイアントスパイダーに近寄った。

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― 新着の感想 ―
[一言] 弓兵より索敵上手いとか! 敵探すのも楽だし聴力強化は昔から使ってきたしね~
[一言] 戦闘お疲れ様でした。森の中で火球を乱射したので避けられたあたりや蜘蛛が燃えたあたりの下草とか落ち葉とかが燃えていないかチェックして燃えていたら急いで消火しないとですね。森の中で火は危ないです…
[良い点] 糸を火で焼いたこと。 [一言] まだ連携といえる程ではないですね。 更新ありがとうございます。
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