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【書籍化、コミカライズ】転生難民少女は市民権を0から目指して働きます!  作者: 鳥助
第五章 冒険者ランクC

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246.魔物討伐~ビスモーク山~(1)

 ヒルデさんに向かって、剣の連撃を繰り出す。


「力が弱くなっているぞ、気を緩めるな」

「はい!」


 私の剣を簡単に受け止めるヒルデさんのアドバイスだ、私は体に力を入れて剣を振るう。先ほどよりも重くなったはずの剣だけど、ヒルデさんの表情は全く変わらない。この人、どれだけ力があるんだろう。


「ほら、また余計なことを考えているぞ。今は集中しろ」

「すいません」

「一撃に必殺を込めろ、そうじゃないと無駄に戦いを長引かせて好機を失うかもしれない」

「分かりました」


 私のことはヒルデさんにはお見通しなようだ。私は意識を剣に集中させ、剣を振っていく。


 ◇


「大分以前の癖が抜けてきたな。今のリルに合った戦い方になっていると思うぞ」

「本当ですか? 強くなっていると思いますか?」

「強くなっている、というより変化してきていると言ってもいい。その変化を強さに変えるのはリル自身だ」

「変化を強さにですか……なんだか難しいです」


 鍛錬後、町のオープンカフェで二人でお茶とデザートを楽しむ。ヒルデさんは今日の総まとめをしてくれているが、難しいことを言われて困ってしまった。


「難しく考える必要はない。リルはもっと感覚的になってもいいと思っている」

「考える癖があるから、感覚的になるのは難しそうですね。もっと経験を積めば分かるようになりますかね」

「そうだな、経験という下地があるからこそ感覚の裏付けができる。一つずつ感覚を確かめていって、自信に繋げるのがいいだろう」


 経験か……沢山積んだように思えたんだけど、私はまだまだということかな。ヒルデさんに比べれば大したことのない経験だからなぁ、どれくらい経験を積めばいいんだろう? 感覚的なことが分かるところまでかな?


「そろそろ新しい経験を積んでも良い頃合いだな」

「新しい経験ですか?」

「ここから馬車で二日行ったところにビスモーク山がある。そこは冒険者にとっての狩場となっているところだ」

「ビスモーク山、冒険者の狩場ですか」


 そういえば、遠く山が見えていたけれどそれがビスモーク山だったんだろうか。


「そこで、新しい魔物と戦って経験にすればいい」

「じゃあ、ヒルデさんも一緒に来てくれるんですか?」

「山はなー、こんな足だと歩くのも辛い。だから、今回は討伐パーティーを組んで行け」

「討伐パーティですか」

「一人でも大丈夫だろうけど、誰かと競い合うのも悪くない。リルはもっと色んなことを知っておいた方がいい」


 新しい場所に新しい討伐パーティーを組んで行くのか、いい経験になりそうだ。他人の戦い方を知るのはいい経験だって、前の領主様クエストで分かったから。


「リルの目標はその山でBランクのオーガとワイバーンを倒すことだ」

「えぇ!? Bランクですか!? 私、まだCランクですよ!」

「何を言っている、すでにBランクのズールベアを倒しているし、この間だってAランクのゴーレムを倒したじゃないか」

「ゴーレムは私一人の力じゃないですよ、みんながいたからこそ倒せたんです」

「魔物のランクと冒険者のランクは必ずしも一致するような強さじゃない。だから、大丈夫だ」


 大丈夫だ、って言われても不安だな。うーん、私にできるかな?


「ちょっと、待ってください。そしたら、パーティーを組む人たちもBランクの魔物と戦うことになりますよね。そしたら、Bランクの冒険者と組むってことですか?」

「BでもCでもいい、ようはそれくらい倒せる強さを持つ冒険者と一緒に戦った方がリルのためにもなるんだ」

「確かに強い人と一緒に戦うのは、自分の勉強にもなります」

「強い敵と戦うのは色んなうま味があるということだ。強い魔物と戦うことで得られる経験値とお金、強い魔物と一緒に戦う冒険者たちとの協力で得られる経験値だ。ほら、強くなりそうな気がしてきただろう?」


 うーん、ヒルデさんにいいように丸めこまれているような気がする。でも、強い魔物と戦うこと、他の冒険者と一緒に戦うことで得られる経験値は正直言って魅力的だ。


 ヒルデさんの顔を見ると、少しニヤついていた。きっと、私が心を動かしていることに気づいたからだ。今回もヒルデさんには負ける、一つため息をついて私は口を開いた。


「分かりました、やってみます」

「その意気だ。今回の討伐が終わる頃には、また成長しているだろうな。まずはパーティー募集からだ、募集コメントをしっかりと考えるんだぞ」


 こうして、私の新しい挑戦が始まった。


 ◇


 次の日、混み合う時間を避けて冒険者ギルドへと行った。受付に並んで、冒険者証を差し出す。


「今日のご用件はなんですか?」

「冒険者パーティーの募集をしたいんですけれど」

「分かりました。少々お待ちください」


 受付の人が引き出しから何かを取り出した。


「こちらが冒険者パーティーの募集する用紙になります。必要な項目を記入して、受付に出してください。こちらがペンになります」

「ありがとうございます」


 紙とペンを受け取ると、待合席のところに行き席に座る。えーっと、何が書いてあるのかな?


 代表者名、冒険者ランク、パーティー募集人数、パーティー募集コメント。意外と項目が少ないんだな、代表者名と冒険者ランクはすぐ書けそうだ。


 次はパーティー募集人数か、何人ぐらい募集すればいいんだろう? うーん……そうだ! ゴーレムとの戦いで三人で連携した時は良かったなぁ、よし募集人数は二人にしよう。


 最後にコメントか、目的をはっきりしたほうがいいよね。ビスモーク山での魔物討伐です。Bランクのオーガやワイバーンを討伐したいと思っているので、その魔物を倒せる人を募集しています。私はCランクですが、Bランクのズールベアは何度も討伐したことがあるので、安心してください。


 と、こんなものでいいかな? よし、これを受付に出そう。


 私はもう一度受付に並び、自分の番を待った。しばらく待っていると、自分の番が回ってくる。


「お待たせしました」

「こちらの冒険者パーティーの募集をお願いします」

「ただいま確認しますね」


 紙とペンと冒険者証を渡すと、受付のお姉さんが処理を始める。


「はい、確認しました。それでは、処理が終わり次第こちらの紙を募集掲示板に貼らせてもらいますね。数日おきに冒険者ギルドに来て、応募があったかどうか確認してください」

「分かりました、お願いします」


 これで手続きの完了だ。後のことは任せて、私は冒険者ギルドを出ていった。


 ◇


 それから、毎日冒険者ギルドに行って応募がないか確かめた。まだ募集したてなので、応募はなかった。そうして、冒険者ギルド通いをして五日目にしてようやく応募が来た。


「先日の冒険者パーティーの募集の件ですが、応募があったみたいです」

「本当ですか!?」

「はい、Bランク冒険者とCランク冒険者から応募がありました。この二名とお会いになりますか?」

「はい、会います!」

「では、詳しい日にちはいつ頃になりますか?」

「明後日の十一時頃でお願いします」

「かしこまりました。応募者にはそのように伝えておきますね」


 良かった、応募があったみたいだ。面会の日を伝えると、話はそれで終わった。私は受付を離れて、冒険者ギルドを出ていく。


 BランクとCランクか、どんな人なんだろう。面会の日が楽しみだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 意外とロイだったりして
[一言] これでタクトくんがツンデレの称号をタクトくん二あげようw
[一言]  1人はタクトかな?
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