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【書籍化、コミカライズ】転生難民少女は市民権を0から目指して働きます!  作者: 鳥助
第五章 冒険者ランクC

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243.子供たちの先生(5)

 次の日、子供たちは変わりなく元気に学び舎に通ってきている。教室で待っていると、廊下から元気な挨拶が飛んできた。それを返していくと、子供たちは教室に入り鐘が鳴るまで思い思いに過ごす。


 しばらく子供たちの好きにさせていると、鐘の音が鳴った。授業開始だ。


「それでは皆さん、席についてください」


 この一言で席に着くのは少数派、大抵の子供たちは話しに夢中だったり遊んでいたりする。これをどうにかして、早く座らせるようにならないといけない。


 だから、私は作戦を考えてきた。


「今日は先生の魔法を見せたいと思います。皆さんが席に着いてから、魔法を見せますね」

「えっ、魔法!? 本当に!?」

「マジかよ、俺魔法みたことないんだよ!」

「早く座れー!」


 子供たちは魔法の言葉に反応して、急いで着席をした。遊びに夢中になっている子供には他の子供が無理やり席に座らせたりしている。そうして、ものの数分で子供たちは席に着いた。


「今日は皆さん早く席に着けて偉いですね。毎日これだけ早いと先生も助かります。明日も今日みたいに早く席に着いてくださいね」


 早く席に着けたことを褒めると、子供たちはまんざらでもない顔をした。褒められるのは嬉しいよね、私もその気持ち分かるよ。だから、褒めれるところはどんどん褒めていこうと思う。子供たちのやる気を引き出さないと。


「では、今日は先生の魔法をみんなに見せたいと思います。みんなに見せるのは触れる魔法です」

「魔法って触れるのか!?」

「どんな魔法なんだ、気になる!」

「魔法って魔物を倒したりするものじゃない? 私たちが触っても大丈夫なの?」

「気になりますね」


 触れる魔法という言葉に子供たちは様々な反応を見せた。騒がしくなる教室の中、子供たちの会話が途切れない。このままでは話が続けられないので、ここで一つ釘を刺す。


「皆さん、人が喋っている時は喋らないですよ。今は先生が喋っているので、皆さんは静かに聞いてみましょう」

「えー、喋りたーい」

「そうなると話が進まなくて、魔法を見せるのが遅れてしまいますよ」

「早くみたーい」

「それだったら、静かにしましょう。話す機会は後で作りますので、今は静かに聞くことを学びましょう」


 静かにすることを伝えると、教室内はだんだんと静かになり喋る子はいなくなった。この調子で喋るのを我慢することを覚えさせよう。


「触れる魔法を作りたいと思います。先生に注目してください」


 みんなの視線が一斉に私に向く。興味があることだからか、その視線はとても熱い。


「これから使う魔法は水魔法を魔力の膜で覆う魔法です。まずは宙に水の玉を出現させます」


 魔力を解放して、水魔法を発動させる。すると宙に頭くらいの大きさの水の玉ができた。


「これにすかさず、魔力の層を作って覆います」


 水の玉を素早く魔力で包み込み、少し圧縮させる。すると、触れる魔力層に包まれた水の玉ができた。


「これが水クッションと言われる魔法です。みなさん、集まってきて良いですよ」


 それをいうと、子供たちは一斉に前に出てきた。


「すげー、本当に触れる!」

「ぷにぷにしてて気持ちいい」

「手が濡れないぞ、どうなっているんだ?」

「良く分かんないけど、凄い!」


 子供たちは水クッションを手にして、突いたり伸ばしたりして遊んでいる。


「今日はこれを一人一個作ってあげます」

「わーい、やった!」

「今から作るので、席に座って待っていてくださいね」

「早く座ろうぜ!」


 席に座るように促すと、子供たちは急いで席に座った。それを見届けると、私は水クッションを作り始める。一つ一つ丁寧に作っていき、出来上がった水クッションを子供たちに渡していく。


 子供たちは嬉しそうに受け取ると、その感触を楽しんでいた。町に住んでいると魔法と関わることがないからか、物珍しそうに水クッションを見たり触ったりしている。


 そして、全ての子供たちの手元に水クッションを届けることができた。


「はい、静かにしてください」


 水クッションを片手に盛り上がっていた子供たちを静かにさせる。すぐに静かになる子はいるけれど、やっぱりまだ騒がしい子はいた。だけど、その子たちは責めないで違うことを伝える。


「静かになった子は偉いですね。良くできました」


 静かになった子を褒めると、その子はとても照れ臭そうにしていた。それを見ていた騒がしかった子たちも次第に静かになっていく。


「わー、凄いですね。どんどん静かになっていきます。皆さん、やればできるんですね。先生、見直しました」


 さらに静かになった子たちを褒めた。教室が静かになっていくと話す子は減っていき、教室の中に喋る子はいなくなる。


「皆さん、とても良くできました。こうして先生が喋る時には、お口を閉じて静かに聞きましょう」


 口を閉じていた子供たちは分かったように頷いた。こういう時は「はい」と言った方が良いんだけど、今はまだ大丈夫か。静かにすることを覚えてからでもいいよね。


「では、この水クッションですが、クッションという名がついているのでお尻の下に敷いてみましょう。とても柔らかくて気持ちがいいですよ。みなさん、やってみてください。喋ってもいいですよ」


 喋るのを解禁すると、子供たちは好きなように喋り出す。


「お尻の下に敷くってよ」

「えっと、こうかな……わっ、なにこれ!」

「凄い気持ちがいい!」

「ぷにぷにしてるー!」


 水クッションをお尻の下に敷くと、子供たちから歓声が上がった。イスの上で左右に揺れたり、お尻でジャンプしてみたり、強く押さえつけたり。様々なことをして水クッションの感触を楽しんでいた。


「水クッションはどうですか?」

「気持ちがいい!」

「この魔法、すごい!」

「もっと沢山欲しい!」

「食べてみたい!」

「流石に食べられませんので、食べないでくださいね」


 そういうと、教室内ではドッと笑い声が上がった。


「今日はこの水クッションに座りながら、人の話を聞くことを覚えましょう。人の話を聞く時は喋らないで静かに聞く、立ったり歩いたりしない、これが重要です」

「立って歩いてもダメなのー?」

「はい、ダメです。しっかりと席についていないと、先生が何を喋っているのか聞き逃してしまいますからね。教室内で授業をする時は、しっかりと席に座っていること、喋っている時に喋らないことが重要です」


 まだちらほらと喋っている子はいるけれど、喋らない子もいる。私が喋るとハッと気づいたように口を閉じる子もいるから、注意したことが少しずつ浸透していっているように思える。


「今日は物語を話そうと思います。多分、皆さんが聞いたことないような内容だと思いますので、きっと楽しいですよ。もちろん、先生が喋っている時は喋らないこと、いいですね」


 水クッションで子供たちをイスに座らせながら、楽しい話をして喋らない我慢もさせる。立って歩かないこと、喋っている時に喋らないことを学ばせる機会だ。これができるようになると、子供たちも授業が受けられるようになる。


 子供たちが静かになるのを見届けると、私は物語を話し始めた。物語は前世であったものをそのまま話すことにした。できるだけ長くないような物語を話して、飽きる前に話を止めるつもりだ。


 話し始めたばかりだから子供たちは集中して話を聞いてくれている。あとは、私が飽きさせないように話していくだけだ。私は感情豊かに話を盛り上げていった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] この状態ということは授業は進んでるようだったけど 一からやり直すのかな? [一言] 更新感謝!体調不良でコメント控えるコメントを読んでこれは全員がコメント控えるまで3話かかりましたとか…
[一言]  グリム童話とかかな? 日本昔話は世界観違いすぎて馴染まないと思うし。  君の魔法大人気だぞ、タクト!(笑)
[一言] 授業の前にまずしつけからですか。本当に大変ですね。
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