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【書籍化、コミカライズ】転生難民少女は市民権を0から目指して働きます!  作者: 鳥助
第五章 冒険者ランクC

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231.領主クエスト、魔物駆逐作戦(6)

 魔物と冒険者たちがぶつかり合った。混戦模様となる戦場では様々な声が上がり、一気に騒々しくなる。


「ポイズンアントめっ!」

「うりゃぁ!」

「ロックリザード、くらえっ!」


 一対一で戦う冒険者が多い中、Aランクのラミードさんは複数と戦っている。


「うりゃぁっ!」


 ラミードさんが剣を一振りすると、数体の魔物が吹き飛んでいく。豪快な力技が得意なのか、広い場所に陣取って次々と魔物を討伐していった。


 私はみんなの穴を埋めるように戦おう。ちょっと離れたところで見ていると、間をすり抜けてくるワイルドウルフがいた。すかさず身体強化をして駆け寄り、剣を振るった。


「ギャウンッ」


 首に深い傷を負わせると、ワイルドウルフは地面の上に転がった。すぐに顔を上げると、三体のゴブリンがみんなの脇をすり抜けて駆けてくる。それ以上は行かせない、身体強化をしたまま駆け寄って、剣を振った。


「グギャッ」

「ギャッ」

「ギャーッ」


 縦に一撃、横に一撃、突き刺して一撃。三体いても簡単に一撃で倒すことができる。数は沢山いるんだから、手早く倒していかないと。


 そう思っていると、頭上に火の玉が飛んでいった。見覚えのあるそれは人がいない場所に飛んでいき、盛大に爆発した。


「くそ、小僧か!? 危ねぇだろうが!」

「もっと弱い魔法にしろってんだ!」

「爆発以外に魔法は使えねぇのかよ!」


 比較的近くにいた冒険者たちが大声で野次を飛ばした。確かに、人が戦っている近くで爆発の魔法は危ない。私は持ち場を離れて、タクト君に近寄った。


「あの、爆発の魔法が危ないと思います。近くで戦っている冒険者もいますし、違う魔法は使えないんですか?」

「えー、爆発の魔法が一番多く魔物を倒せると思ったのに、違う魔法? あるっちゃ、あるけど」

「お願いします、違う魔法を使ってください」

「んー……分かったよ。僕が違う魔法もしっかりと使えることを知っておいて欲しいし」


 良かった、違う魔法を使ってくれるみたいだ。するとタクト君は杖を魔物に向かって掲げで、魔力を高めていく。


「ほーら、行くよ!」


 杖の先から無数の氷の刃が飛び出していき、冒険者の頭上を飛び越え、魔物がいるところへ突き刺さる。奥の方で魔物が倒されているみたいで、悲鳴が聞こえてきた。


「これで文句ないでしょ?」

「はい、ありがとうございます」

「じゃあ、このまま魔物をせん滅していくね」


 これだったら爆発に冒険者たちは巻き込まれない。安心して持ち場に戻ると、すでに数体の魔物が冒険者の脇をすり抜けてやってきていた。


 早く倒さなくちゃ、身体強化をして次々に切り伏せていく。すべてを切り伏せた後に顔を上げて前を見ると、続々と魔物たちが姿を現す。倒してもキリのない数、これがスタンピード。


 ぐっ、と気を引き締めて漏れ出した魔物に立ち向かっていく。


 ◇


 私たちと魔物の戦いは、少しずつではあるが魔物の数が減らされていった。冒険者たちはお互いを意識しあい、協力体制で魔物討伐に当たっている。


 このまま順調に戦っていけば、せん滅が見えてくる。誰もがそう思った時、新たな魔物の影が奥からやってきた。


「火食い鳥だ、Bランクの魔物が現れたぞー!」


 今まではCランク以下の魔物ばかりだったが、ここに来てBランクの魔物の群れが現れた。場は騒然となり、思わず攻撃の手を緩める冒険者もでるほどだ。


「くそっ、Bランクの魔物の群れか!」

「とにかく、周りの魔物を一掃するぞ!」

「火食い鳥はどうする!? もうすぐそこまで来ているんだぞ!」


 現れたのなら戦うしかない、誰もがそう思っているのに簡単には頷けない。それだけ敵が強くて厄介だから、みんな尻込みし始めている。


「Bランクの魔物を討伐したことがあるヤツが火食い鳥と戦うんだ! 他は今までの魔物と戦えばいい!」


 ラミードさんの声でざわめきが収まりつつあった。適材適所っていう奴だよね、だったら私は火食い鳥と戦おう。


「火食い鳥と戦える奴は、この魔物たちよりも奥に行け!」


 その指示を受けて、私は魔物たちの間を進んで奥へ行った。よし、ここからは火食い鳥との戦いだ、気を引き締めてかからないと。


「あれ? リルもBランクの魔物と戦えるの?」

「え……タクト君もですか?」

「僕はCランクだけど、Bランクの魔物を倒した経験があるからね。リルこそ平気なの?」

「はい、Bランクのズールベアなら何度も倒したことがあるので大丈夫です?」

「ズールベアだけ? それって本当に大丈夫なのー? 足を引っ張らないでよね」


 ズールベアだけだけど、大丈夫かな? そう言われるとちょっと不安になってきちゃった。


「ちっ、なんでここにお前がいるんだよ」

「ガキも一緒かよ」


 他の冒険者の声が聞こえてきた。その人たちはタクト君を見て嫌そうな顔をして捨て台詞を吐く。もしかして、この人たちも一緒に戦うの? 雰囲気が悪い、大丈夫かな?


「お、リルもいるじゃねぇか。まぁ、お前なら大丈夫か」

「精一杯頑張ります」

「おう、期待してるぜ。じゃあ、ここにいる五人でBランクの魔物と戦うことになるか。頼んだぞ」


 ラミードさんが現れて、場に役者が揃った。火食い鳥と戦うのは全部で五人、思ったよりも少ない人数だ。この五人でどうにかして協力しあわないといけない。


「俺らはこいつとなんか協力しないからな」

「間違って魔法をぶつけられたら、堪ったもんじゃねぇ」

「おいおい、こういう時こそそういう感情は捨てねぇと」


 早速問題が起こってしまった。タクト君を嫌がっていた冒険者が協力しないと言ってきたのだ。ラミードさんがいうように、今はそういう時じゃないのに。


 でも、ここは個々で戦うよりも誰かと協力して戦った方がいいよ。ラミードさんが説得をするが、その冒険者たちはまったくいうことを聞かない。一方のタクト君は知らん顔をしているし、これはどうしたらいいんだろう。


 そうこうしている間にも火食い鳥は距離を詰めてきている。地面を走るタイプの鳥型の魔物で、走る速度は速い。早くしないと接敵になっちゃうよ。


 ここは一肌脱ぎましょうか。


「あの、私がタクト君と協力して戦いますから、ラミードさんは他の冒険者と協力して戦ってください」

「……しょうがねぇ、それしかないか。タクトの事、頼んだぞ」

「分かりました」


 戦力が分割されちゃうけど、緊急事態だからしょうがないよね。


「というわけで、一緒に戦いましょう」

「僕一人でも大丈夫なんだけど。一人で戦うのが怖いの?」

「いいえ、何かあった時のために二人で戦うんです。タクト君の身に危険があったら私が、私の身に危険があったらタクト君が。そうやって協力しあえれば不測の事態もなんとかなります」


 渋い顔をするタクト君。しばらく考えていると、何かを思いついたようにハッとした。


「そうだ、だったら僕のやりやすいようにしてよ」

「例えば?」

「魔物の近くに居られたら、魔法の邪魔なんだよね。だからさ、先制攻撃は僕がして、その攻撃から漏れた魔物と戦ってよ」


 先制攻撃はタクト君、その攻撃から漏れた魔物を私か。それなら、なんとか連携が取れそう。こっちに向かってくる魔物を倒せばいいんだよね。


「分かりました、それでいきましょう」

「よし、決まり! これで思う存分魔法を放てるぞ」


 嬉しそうな顔をして杖をブンブンと振り回す。さっきまで制約された中で魔法を使っていたからかな、解放されて嬉しそうだ。


 ここは私が譲って、連携をしっかり取れるようにしないとね。火食い鳥の接敵はもう少しだ、今度も後ろにはいかせない。

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― 新着の感想 ―
このままだとタクトはCランク止まりかな 今回の件で報告上がったら協調性なさすぎてソロでの討伐以外やれることないし多様性を求められるっぽい高位ランクには審査で落ちるでしょ
[一言] タクトはずっとソロだったのかな? リルは女の子だから言うこと聞いてそうだな戦力もあるし わりとムッツリな子なのかねぇw
[一言] 火魔法改造っぽい爆発はそいつに効くのか?
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