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【書籍化、コミカライズ】転生難民少女は市民権を0から目指して働きます!  作者: 鳥助
第五章 冒険者ランクC

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221.井戸掘り(2)

 辿り着いた地面には一本の杭が埋まっていた。どうやら、この場所を掘るらしい。すると、おじさんはマジックバッグを開けて中から何かを取り出した。紐の付いた木の枝?


 おじさんは紐を杭に括り付けると、引っ張りながらぐるりと一回転させた。すると木の枝が地面に円を描く。


「よし、この円の中を掘ってくれ」

「随分と小さい円ですね」

「それが体が小さい奴を募集した理由だ。掘るのはいいが、水が出るとは限らない。水が出ないとなると穴を埋めなおさなくちゃいけない。穴を掘る労力と穴を埋める労力を少なくするために、小さな穴を掘るんだ」


 なるほど、体が小さい人を募集していたのはそのためだったのか。水が出るとは限らない、井戸を作るのに必要な大きさを掘る必要は始めからないんだ。


「とりあえず、水が出るか確認しないといけないから、余分なことはしないようにしている」


 おじさんはまたマジックバッグを漁ると、中からスコップを出してきた。それを手渡される、原始的なやり方だ。


「リルが穴を掘って、俺がサポートに回る。よろしく頼むな」

「はい、分かりました」


 スコップ一本で井戸なんて掘れるんだろうか、ちょっと不安になってきた。でも、今までもこれで井戸を作ってきたんだし、大丈夫だよね。よし、やるぞ。


 地面に埋まった杭を抜くと、スコップで土を掘り返し始めた。スコップの先はとんがっていて力を入れてスコップで掘れば、深いところまで掘れた。


 一番弱く身体強化をして掘り始めると、スコップの先が全部埋まるくらいに埋まる。そこから土を掘り返せば、かなり深いところを掘り返せた。


「おお、凄い掘れているな。これなら、早く下まで行くんじゃないか?」

「身体強化のお陰ですね。このままサクサク掘っちゃいますね」

「おう、頼んだ。土はこの辺に置いておいてくれ」


 おじさんも驚くほどの掘り返しみたいだった。おじさんに指示された通りの場所に土を捨てると、どんどんスコップで掘り進めていく。


 私が掘っている間、おじさんはマジックバッグから色んな物を取り出して何やら準備をしているみたいだ。私はそんなおじさんを横目に見て、自分の仕事を進めていく。


 掘り返していくと時々石に当たって掘り辛い時がある。きっと掘り進めていくと石とか沢山出てくるんだろうな、土だけじゃない掘り作業に悪戦苦闘しながら続けていく。


 膝下くらいまで掘り。腰まで掘り進め。胸まで掘った。案外サクサク掘り進められたね。この調子でどんどん掘り進めていくと、おじさんが作業を開始した。


 穴の周りに何かを突き刺し、滑車のようなものを取り付けた。なんだろう、と上を見上げているとおじさんが顔を出した。


「そろそろ、土を出しにくくなっただろ? この滑車を利用してバケツを下ろすから、そのバケツに土を入れてくれ。そしたら、俺が引っ張り上げて土を捨てるから」

「分かりました」


 滑車にはバケツが二つついていて、どちらかが下がるとどちらかが上がる仕組みになっている。なるほど、こうやって土をかきだしていくんだね。


 私は落ちてきたバケツを拾って、早速中に掘り返した土を入れた。しばらく入れていくといっぱいになったので、紐を引っ張る。すると、土の入ったバケツは上に昇っていき、代わりに空のバケツが降りてきた。


 これで待ち時間なく掘り進めることができる。私はせっせと土を掘り返して、バケツを土でいっぱいにした。また紐を引っ張るとバケツが上へと昇っていき、空のバケツが降りてくる。


 これは結構しんどいぞ。休みなく続く作業だから、疲れが溜まってきそうだ。


「そうだ、忘れてた。これを頭につけておけ」


 おじさんの声がして上を向くと、バケツに何かを入れて下ろしてきた。バケツの中を見ると輪っかに何かがついたものを渡してくる。


「それは頭につける光源だ。足元が暗くなるから掘り辛くなるだろう、その明かりを頼りに掘り進んでいってくれ」

「ありがとうございます」


 早速頭につけてみる。スポッと頭にかぶり、付属の部品が前になるように動かす。それから部品を触っていると、スイッチのようなものがあったので点けてみる。すると、光が向いている方向を照らし出した。


 これなら暗がりでも作業できそうだ。私はその光源を頼りに、どんどん掘り進めた。


 ◇


 掘り進めて何時間経っただろう、なんだか掘りだす土が重たくなったように感じた。なんだろう、と手で触ってみるとなんと土が水で湿っていたのだ。もしかして、これは水を掘り当てたのでは?


「すいませーん、土が湿っているんですけれど。これは水が出る証拠ですかー?」


 かなり深くなった穴から声を上げると、おじさんが顔を出してきた。


「何、本当か!? よし、俺が下に降りて確認をするから、ここを昇ってこい。ちょっと待ってろ、今準備するから」


 おじさんは一度引っ込むと、すぐに顔を出してきた。


「このロープを伝って昇ってきてくれ」


 おじさんは一本のロープを垂らしてきた、原始的だ。私はそのロープを掴むと、土の壁に足をつけながらぐいぐいと昇っていく。そうして昇っていくと、久しぶりの地上に出た。


「よし、降りて確認するな」

「はい、いってらっしゃい」


 おじさんにロープを渡すとするすると降りていく。私は上から覗いてみると、おじさんはすぐに底についた。しゃがんで土の状態を確認、かと思ったらスコップで掘ってまた土を確認した。


 結果が凄い気になる。ドキドキしながら待っていると、おじさんの声が聞こえた。


「これは当たりだ、掘ったら水が出るぞ!」

「やった!」


 良かった、当たりの場所を引き当てたみたい。おじさんが底から這い上がってくると、次の作業が始まった。


「掘って水を出す前に、井戸の中を石で補強するんだ。井戸の中に石を埋める作業だ」

「井戸の中全体に石を埋めていくんですね。届かない場所とかはどうするんですか?」

「吊るして作業をするんだ。専用の装着具があるからそれをつけて欲しい」


 おじさんがマジックバッグを漁ると、革ベルトが何本も繋がった物を渡された。


「こっちが上な。まずは足を入れて、腰につけて、最後に肩を入れるんだ」

「足……腰……肩、これでいいですか?」

「そうそう、それでいい。あとは留め具をしっかりと固定してくれ」


 言われた通りに装着具をして、留め具を止めた。なんだか、前世にあったバンジージャンプをするような装具に似ている気がする。


 おじさんは私の背中にある装着具に二本の紐を装着すると、それを滑車に括り付けた。


「まずは底から作業だ。滑車を使ってリルをそこまで運ぶぞ」

「はい、ちょっと怖いですね」

「はははっ、何なれれば自分でロープを使って登るよりは簡単だぞ」


 紐を掴みながら穴の中に入ると、体が宙にぶら下がった。


「よし、下ろすぞ」


 おじさんの声の後、体がゆっくりと底に下りていく。ちょっと怖いけど、慣れたらこれは楽ちんだ。すぐに底に着くと、頭につけていたライトをつける。


「道具を下ろすぞ」


 声が聞こえると、もう一つの滑車が動き出す。下りてきたのは石と木槌が入ったバケツだ。


「木槌を使って石を叩いて、壁にめり込ませるんだ」

「分かりました」

「とりあえず、必要な分だけ石を下ろすな」


 バケツの中に入っていた石を全部下ろすと、バケツが上に上がっていく。そして、反対側についていた石入りバケツが下りてきた。同じく石を取り除くと、またバケツが上に上がっていく。


 それを三回繰り返すと、足元が石でいっぱいになった。


「とりあえず、今はそれを使って石の壁を作ってくれ」

「作業開始しますね」


 よし、地道な作業の開始だ。しっかりと石の壁を作っていかないとね。

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― 新着の感想 ―
[一言] 2巻も楽しく読ませて頂きました。 作者様が色々と思案された結果の、前向きで向上心が高いリル、そして物語に登場する皆との心がほんわかする話作りがとても素晴らしく、ストレス無く愛読させて頂いてい…
[一言] 身体強化便利だな~現実でも欲しい、あと腰が痛そうw リルは土魔法使えないんだっけかあると石砕いたり土避けたり便利そうなんだが
[一言] 最初の一発で水源を掘り当てるなんてさすがプロですね。身体強化でけっこうサクサク掘れたみたいですけれど何メートルくらいの深さになったのやら。 ちょっとした疑問なのですが、マジックバッグがあるの…
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