表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化、コミカライズ】転生難民少女は市民権を0から目指して働きます!  作者: 鳥助
第五章 冒険者ランクC

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

204/365

204.魔力補充と魔法充填(3)

 私の目の前で従業員たちが魔法を放っていく。それを受け止める三枚の魔法の壁、初めて見るそれらの光景に唖然としたまま身動きが取れない。


 これがヒルデさんの言っていた魔法がある光景。魔法の練習をしている訳じゃなくて、仕事の鬱憤を晴らすために魔法を放っているだけの光景だ。


 他人の魔法はほとんどみたことがないから、間近で魔法を見て圧倒される。自分の魔法とは規模が全然違うし、威力だって強そうだ。


 冒険者をやっている自分よりも強い魔法を放つ従業員たちを見て、本当に信じられない気持ちだ。この人たちが外の冒険者をやっていると言われたら信じてしまうくらい。


「みなさん、魔法が使えるんですね」

「まあな。魔法充填っていう仕事があるから、仕事をしていれば自然と魔法を覚えていった感じだな。属性として多いのは火、水、氷、風、光くらいか」


 日常生活に直結する魔法が使われるのが多いみたい。でも、魔法の壁はどういうきっかけで生まれたんだろう? 仕事の中には魔法の壁を作る作業はなかったはずだけど。


「魔法の壁はどうやってできたんですか?」

「あぁ、あれは魔力の固まりなんだ。魔力を圧縮するとあんな壁ができることを見つけたんだよ。見つかったのは偶然だったっていう話さ、終業後にこうして集まって魔法で遊んでいた時にな」


 魔法で遊ぶなんて、なんていうか冒険者らしくない言葉……って、冒険者じゃなかったね。


 そっか、ここで働いている人たちは自然と魔法に関わって、その最中に魔法に興味を持って自分たちだけで魔法を鍛えていたんだ。鍛えていたとは言えないか、遊んでいたけどその中で自然と魔法が強くなったみたい。


 今も目の前で様々な魔法が放たれているのを見ると、呆然としてしまう。だけど、違う感情も浮かんでくる。あんな魔法を使えるようになりたい、と。


「リルも魔法が使えるんだろう?」

「はい」

「だったら鬱憤晴らしに魔法を放ってきてもいいんだぞ」


 鬱憤は溜まってないからいいんだけど、魔法を鍛えるためには魔法を使いたいな。


「ちなみに魔法を放つことは上司には了解を得てやっていることだからな。終業時間になれば残った魔力を好きに使えるようになっているから、その辺りは気にするな」

「普通なら魔力が切れるまで仕事をしろ、って言われそうですよね」

「まぁ、そんなことをしたら離職者が増えるだろうからやってないだけだ。少しでも長く働いてもらうために、ある程度のことは目をつぶってくれるんだ」


 少なくとも前のところはそうだった、ということは前のところはそんなに恵まれた環境ではなかったのかな? やり方に違いがあるのは、その町で重要とされるものが違うからかな。


 だったら、ここでは好きに魔法を放ってもいいんだ。そういうことなら、ディックさんにお願いしてみよう。


「あの、ディックさんにお願いがあるんですが」

「ん、なんだ?」

「魔法は使えるんですが、威力が弱いものしか使えないんです。だから、威力が強い魔法を教えてください!」


 お願いをして頭を下げた。


「威力が強い魔法か……ちょっと一番強い魔法を放ってくれないか?」

「はい」


 私は魔法を放っている人たちの近くに行くと、魔法の壁めがけて手をかざす。魔力を高めて手に集中させると五十センチメートルくらいの火球を作り、それを放った。


 放った火球は魔法の壁にぶつかると、小さな爆発を起こしてしばらく燃え上がり消える。それを見届けるとディックさんのところに戻った。


「あれが一番強い魔法です」

「なるほどね。魔力操作は悪くない、けど出力が弱いと見た。だからリルは出力を鍛えればいいと思う」

「ということは、沢山魔法を使えば威力が強くなりますか?」

「そういうことだ。だけど、効率のいいやり方がある」


 普通に鍛えるよりも効率がいい? すごく気になる。


「どうしてあいつらがこんなに強い威力の魔法を使えるのか分かるか?」

「鬱憤晴らしに魔法を放ち続けた、ということじゃないんですよね」

「そうだ。あいつらが強くなった原因は、魔法充填の仕事にある」

「そっか、魔法充填の仕事で沢山魔法を使ったから威力が強くなったんですね!」

「そういうことだ」


 魔法充填の仕事はまだ詳しくは分からないけど、なんとなく想像できる。直接魔法を魔石の中に入れているから、仕事中も魔法を使っていることになっている。


 しかも魔力回復ポーションを飲みながら仕事をしているので、一日に何度も魔法を唱えていることになる。一日中魔法を使っていることになっているのであれば、自然と魔法の威力も上がる仕組みだ。


 もしかしたら、冒険に出て魔物と戦うよりも魔法を使っているかもしれない。ということは、普通よりも効率よく魔法を鍛えられるっていうこと?


「どうだ、良かったら明日から魔法充填の仕事をしてみないか?」

「はい、よろしくお願いします!」

「そうか、魔法充填の仕事は魔力補充の仕事よりも負荷が強いから大変だと思う。でも、慣れてくれば負荷も軽くできるし、早く充填が終わることだってできる。リルの頑張り次第で楽になる仕事だ」


 魔力補充よりも魔法充填のほうが負荷が強いのか、それでもやりたい。


「分かった、じゃあ明日からよろしくな。そうそう、使えない属性とかあるか?」

「氷と光が使えないです」

「そしたら、その二つの属性は終業後の今に教えてやるから」

「今教えてくれませんか?」

「後二十分でこの魔法の会が終わるから、それまで教えてやるよ」


 ディックさんが移動をすると、そこには一つのベンチが置いてあった。二人でベンチに座ると早速講義が始まる。


「簡単な光から教えるな。光を魔法として具現化するには、光をイメージすることが大事だ。光には二つの出力のやり方があって、一瞬でピカッと光らせるか、じんわりと光らせるかのどちらかだ」

「はい」

「俺の指を見てて、まずは光を一瞬で光らせる。この時の魔力操作は、少量の魔力を瞬時に出すことが重要だ」


 人差指を立てると、その指先がピカッと光った。


「次にじんわりと光らせるぞ。これは少量の魔力を少しずつ外に出すイメージでやる」


 今度は指先がじっくりと光を放ってきた。


「魔法充填の時はどちらかのやり方で充填をするんだ。やりやすい方でやってもらっているんだけど、リルはどっちがいいかはまだ分からない。だから、両方できるようになるのが目標だな」

「やってみてもいいですか?」

「ああ、良いぜ。光をイメージして魔力を操作することを忘れるなよ」


 人差指を立てて、魔力を高めていく。光をイメージしながら魔力を出していく。まずはピカッと光るやり方をやってみよう。


 瞬時に魔力を出して指先を光らせようとするが、まだ光らない。きっとイメージが足らないからだ。強い光がパッとつくようにイメージをしつつ、魔力を放出させていく。


 でも、まだつかない。


「んー……ちょっと力みすぎかな? もっと柔らかい感じで、瞬時に魔力を出す」

「柔らかい感じで、魔力を……」


 イメージを強めて、柔らかく魔力を出す。むむむ、いけっ!


「お、今少し光ったぞ!」

「はい!」

「まだこれからだ、もっと魔法を発動させていくんだ」


 意識を集中させて、さっきの感覚を忘れないうちに……指先を光らせる!


「いいぞ、その調子だ!」


 もっと魔力を出す感じで、強い光をイメージして……光らせる!


「うん、いい感じに光っている。次はじっくりと光を出す感じでやってみろ」


 ふー……じっくりと魔力を出して、光もじっくりと光らせるイメージで。指先に魔力を集めて、少しずつ光らせる。


「……お、来た来た! 光ってきたぞ。そのまま光を強めていくんだ」


 ディックさんが言った通りに出す魔力を増やして光を強めていく。すると、人差指の光が強くなった。これって光魔法の成功っていうことでいいのかな?


「よくやったな、あとは繰り返し練習するだけだ。練習を繰り返していくと、光の出力や操作が楽になるからな。さて、そろそろ魔法の会は終わりだ、今日はここまでにしようか」

「教えてくれて、ありがとうございます」

「こっちこそありがとうだぜ。少しでも使える魔法が増えてくれると仕事が楽になるからな、こういうことならいくらでも頼ってくれ。氷の魔法は明日以降教えるからな、楽しみに待っててくれ」


 残った魔力で宿屋で光魔法の練習をしてみよう。明日には使えるようになったらいいんだけど、そこまで上手くはいかないよね。


 魔法の会は終了して、その日は終わった。明日から魔法充填の仕事があるから、魔法が鍛えられるね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ