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【書籍化、コミカライズ】転生難民少女は市民権を0から目指して働きます!  作者: 鳥助
第五章 冒険者ランクC

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187.大農家のお手伝い(1)

「へー、求職者だけじゃなくて外の冒険者もやってるんだ」

「マジかよ、全然そんな風に見えないぜ」

「でもマジックバッグ背負ってるよ、やっぱり本当に冒険者なんだよ」


 荷馬車に乗った三人の十代後半の青年たちが私の姿を見てそんな感想を言った。すると、御者をしていた農家のおじさんも話に加わってくる。


「冒険者ギルドからの紹介状では、町の中や町の外の仕事を請け負っているみたいだよ。珍しい冒険者だねぇ」

「えっ、両方やっているのか? こんなにちっこいのに?」

「うへー、俺そんなに働けないぞ」

「僕たちも定職探さなきゃねー」


 うーん、私もまだまだだな。もっと背が高くなったら、立派な冒険者に見られるかな?


「お兄さんたちは普段何をしているんですか?」

「まぁ、家にいたり、遊んだり、日雇いの仕事をしたりだな」

「求職者として働いているけど、リルみたいにずーっと働いてはいないぜ」

「定職も探しているんだけどねー、実家にいながら時々働くだけっていうのが楽でいいというか」

「それなー」

「うんうん」


 へー、そんなことをして働いているんだ。実家が裕福なのかな、時々働くだけでいいっていい生活しているなー。待てよ、私も別に毎日働かなくても生きていけるのでは?


 でも、何かあった時はお金があったほうがいいし、宿屋のお金もかかるし、食費だって。うーん、やっぱり毎日働いてないと心配だな。


「今回は小遣い稼ぎに三人で一緒に働ける場所を探していたんだ」

「三泊四日だったら、無理なく働けるなーって思ってな」

「それに町の外に出られるから、なんだか楽しそうだなって思ってね」


 なるほどね、色んな働き方があるんだな。私の考えが固すぎるのかな、本当ならこんな風に気楽に働いてもいいのかもしれない。でもなー、子供だから舐められる可能性もあるし安易にそんな風にはできない。


 大人になるのを待つしかないのかな。あと、四年……いや三年で大人に見られるかな。


「リルちゃんはどうしてこの仕事をしようって決めたの?」

「私にもできそうかなって思って応募しました」

「大丈夫かー? 野菜の収穫とか箱詰めとか重労働がいっぱいあるぞ」

「はっはっはっ。その子は身体強化が使えるみたいでね、そういう重労働は苦じゃないらしいぞ」

「えぇー、そうなのか!? 流石は冒険者って感じか」


 三人が羨ましそうな目で見てくる、そんなに見られても何も出てこないよ。


「三人以上に働くかもしれんぞー」

「ぐはっ、こんな子供に負けたらなんだか悔しいっ」

「僕にも身体強化があればなー」

「身体強化なし、使うのなしな!」

「こらこら、それだと仕事にならんべ」


 荷馬車は賑やかだなー、こんなに賑やかな馬車は初めてかも。三人が好き勝手に言って、時々おじさんと私が話に入る感じだ。こういうのは、前世でいう学生のノリみたいなものに近いかも。


「だったら、ハンデだハンデをくれ!」

「えっ、ハンデですか? ちなみにどんなハンデがいいんですか?」

「ど、どうする。どんなのがいい?」

「片手とか片足とかどう?」

「だーかーらー、それだと仕事にならんべ」

「あー、畜生! 冒険者が羨ましい!」


 そ、そんなに冒険者が羨ましいかな。一般の人でも頑張れば身体強化できそうな気がするけど、そういうのはどうなんだろう。


 荷馬車の上は農村に着くまでこんな調子でずっと賑やかだった。


 ◇


 コーバスから四時間の場所に農村がある。そこは酪農もやっていて、畑以外にも放牧地が広がっていた。田舎特有ののどかな空気が流れる農村は大小様々な農家がある。


 その中の一つ、その農村で一番大きな農地を持つ家のお手伝いにやってきた。その農家では作付けから収穫まで求職者を募って、大々的に事業を展開しているみたいだ。


 今日は二つの作物が丁度収穫を迎えるらしいので求人を出したらしい。その求人に応募したのが、三人の青年と私だ。この四人と農家一家で収穫をしてしまうらしい。


 そして、その農家に着いて昼食を頂いた後に仕事が始まった。


「ここが作物を保管する倉庫だ」


 大きな倉庫に連れられて行くと、広い倉庫の端にぽつんと野菜の小さな山があるだけだ。倉庫に比べて作物が少ないのはなんでだろう?


「ここにあるのは前に収穫してあった作物だ。明日から作物を収穫してここに貯蔵する。その新しい作物が入る前に、古い作物をこれから出荷するんだ」


 そうか、これから新しい作物が入ることになるんだ。ということは、今日の作業は古い作物の出荷作業っていうところかな。


「ここの紙に書かれてある商店の注文を確認して作物を木箱に入れて、倉庫の端に積んでおいてくれ。そうそう、この商店の名前が書かれた木札も一緒に入れておいてくれな。これがなきゃ、どこに卸していいか分からなくなるからな」

「分かりました」

「じゃあ、あとは頼んだぞ」


 説明を終えたおじさんは倉庫を出ていった。残された私たちは、渡された紙を見る。


「ふんふん、結構あるな。あそこにある木箱に入れていけばいいんだな」

「じゃあ、早速やろうよ。手分けしてやる?」

「いいや、ここは対決しようぜ!」


 また何か可笑しいことを言い始めた。対決かー、どんな形がいいんだろう。


「身体強化が使えるリルはずるいから、ここは三対一の勝負をしよう」

「三対一ですか?」

「お、それいいな。それだったら、俺たちにも勝てそうだ!」

「女の子相手に三対一っていうのは卑怯なんじゃ」

「いいや、身体強化のほうが卑怯だ!」


 そんなに身体強化がすごいのかな? まぁ、重たいものを持つには必要な力だけど、出荷のお手伝いに必要な能力なんだろうか。


「というわけでリル、三対一の勝負だ!」

「負けたらどうなるんですか?」

「特にない! 勝負は勝負だ!」

「こーなったら、やるっきゃないよね」


 圧倒的に不利だと思うんだけど、でもなんだか楽しそうだ。仕事に支障が出ないように、話に乗ってみますか。


「じゃあ、勝負ですね。負けませんよ」

「どっちが多くの商店を終わらせることができるかの勝負だ」

「間違えないように気を付けるんだよ」

「よっしゃ、負けないぜー!」

「よーい、始め!」


 三人の青年対私の勝負が始まった。


 ◇


 仕事は簡単だけど、とにかく量がある。木箱に規定の作物を入れて、所定の位置に置き、最後に商店の名前の入った木札を入れる。これだけなのに、簡単には終わらなかった。


 あれだけ喋っていた青年たちも黙々と作業をして、真剣に仕事をしているみたいだ。勝負だからか、その熱意は凄かった。そして、お互いに最後の商店の荷造りを終える。


「こちら終わりました」

「こっちも終わったぜ。で? どっちが多く荷造りしたんだ?」

「ちょっと待ってね。えーっと……うん、僕たちのが一つ多いよ」

「ということは、俺らの勝ちだぜ! 身体強化の冒険者に勝ったぞー!」


 紙を見せてもらうと、本当だった。まぁ、三対一で手数の多いほうが勝って当たり前だよね。残念だけど、ここは仕方がない。


 青年たちが抱き合って喜んでいるのを見て、心はほんわかした。負けたのに、そんな気がないのはなんでだろう。


「あ、でも三対一で差が一つって」

「言うな、そこは言うな!」

「俺たちが勝ったんだ、それでいいじゃねぇか!」

「なんだか、試合で勝って勝負に負けた感じが……」


 あんなに真剣にやっていたのに、差が一つだもんね。それでも勝ちは勝ちで、負けは負けだ。仕事に支障がないのが一番いいことだから、そこに注力しておいて良かった。


「でも、疲れたー……やっぱり冒険者はずるいよ。まだピンピンしてる」

「あはは。体力勝負なところがありますからね」

「リルちゃんに負ける僕らって……」

「いうなー、勝った余韻がどこかにいっちまったよー」


 青年たちは地面にへたり込み、ぐったりとしている。うん、やっぱり負けた気がしないな。ちょっとだけ、それが気持ちが良くて笑った。


「くっそー、俺ら笑われてるぞ」

「明日は、明日こそは負けんぞ!」

「えっ、勝負はまだ続くの?」

「次は負けませんよ。じゃあ、おじさんを呼んできますね」

「お願いしまーす」


 もう、ちゃっかりしているな。でも、楽しく仕事ができるのはこの人たちのお陰だね。いつも以上に気が楽だから、体も軽く感じる。三泊四日か、一緒にしっかりと働けるといいな。

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― 新着の感想 ―
[一言] 雰囲気がいい職場は気持ち上がるからいいよね 愚痴はあれどある程度は空気読んでしまってくれるし
[一言] 魔力感知のお手伝いクエストを指名依頼で出してもらえばいいのに
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