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【書籍化、コミカライズ】転生難民少女は市民権を0から目指して働きます!  作者: 鳥助
第四章 冒険者ランクD

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140.領主さまのクエスト

 見上げるほどに背が高く、筋肉隆々な体格をしている冒険者がそこにいた。年齢は30代後半くらいで髭はなく、短い黒髪をした男性だ。その男性は難しい顔をしながらこちらを見下ろして話しかけてくる。


「領主さまのクエストをお前みたいなちっさいヤツが受けられるとでも思うのか?」


 どうやら私みたいな小さな子供が領主さまのクエストを受けようとするのが気にくわないらしい。不機嫌そうな態度を露わにして私に絡んできた。どうしよう、なんて答えるのが正解なんだろう。


 ここは正直に言っちゃえ!


「ホルトではこんな私でも領主さまのクエストを受けられました」

「ホルトだってぇ、そんなところに領主さまのクエストがあるわけがねぇよ」

「あります! 難民の集落周辺の魔物の捜索と討伐っていうクエストを受けました」

「難民だと?」


 難民の言葉に冒険者は反応した。どうしてその言葉に反応したかは分からないけど、難民の話題を出した方がいいのかな?


「私もホルトでは難民だったんですけど、領主さまの難民対策のお陰で難民を脱却して冒険者になれました。そして、そんな難民でも領主さまのクエストを受けられました」

「ルーベック様が違う町の難民まで手をつけていたなんてなぁ」


 冒険者は感心したように唸った。その口ぶりから察するに、他の町の難民にも手をつけているようだけど……そうだったら流石は領主さまだ、すごい。


「ラミード様、他の冒険者に絡むのは」

「細かいことは気にするなよ。別に何をするわけじゃねぇ、現実を教えてやろうと思ったまでよ。どうせお前らは規定のことしか伝えられねぇだろ」


 腕組をした冒険者は私を見下ろしながら話を続けた。


「いいか、よーく聞け。この町では領主さまのクエストは人気なんだよ。ご立派な領主さまに少しでも近づこうと思う輩がわんさかいる。そんな輩にお前みたいなちっさい冒険者が敵うわけねぇから、さっさと諦めた方がいいぞ」

「領主さまのクエストがあるなら諦めません。難民の時に受けた恩を少しでも返すために、ホルトからコーバスまでやってきましたから」


 怖いけど引き下がらない。おじさんを見上げてじっと見つめると、おじさんもじっと見下ろしてくる。しばらく無言のままでいると、先に目を逸らしたのはおじさんのほうだった。


「ふぅ、そこまでいうんだったら仕方ねぇけどよ。本当に領主さまのクエストを受けるのは難しいぜ。実力だけじゃなくて、運も必要なんだからな。まぁ、俺は実力があるからそれを買われてクエストを受けられるんだが」

「それだったら、運はあるほうなのでいけると思います」

「冒険者ランクも必要なんだぞ、低いとそれだけでダメな場合もある」

「そろそろCランクに上がると思うので、それじゃダメなんですか?」

「こ、こんなちっさいヤツがそろそろCランク、だと?」


 おじさんはランクの話を聞くと驚いたような顔をした。もしかして、私がまだ子供だから低いランクだと思われたのかな。戸惑っているみたいだし、ここは押しの一手だよね。


「Cランクになったら文句はないですか?」

「まぁ、Cランクなら妥当だとは思うが。本当なのか?」

「はい、外の冒険にも出て討伐もしてますし、町の中でも働いています」

「町の外と中を両立している奴なんていねぇのに」


 信じられないような顔をして見下ろしてくるけど、本当なんだもん。現実を教えるつもりが、私の現実を知って驚いたみたい。


「わりぃな、まだ低ランクの駆け出しかと思っちまった。お前、大したヤツなんだな」

「分かってくれて良かったです」

「でも、これは言っておくぞ。領主さまのクエストは人気が高いから、受けようと思っても中々受けられないからな」

「それでも諦めません。領主さまのお役に立ちたいと思っているので」


 どうやらこのおじさんは親切心から苦言を言ってきたみたい。良かった、無意味に突っかかってくる人じゃなくて。それにしても領主さまのクエスト、人気だから競争率が高そうだ。


「俺はラミードっていうんだ、これでもAランクの冒険者だ。領主さまのクエストは何度も受けているぜ」

「私はリルっていいます。領主さまのクエストはホルトで一回受けたことがあります」

「中々根性のあるやつじゃねぇか。ホルトから来るだけのことはあるわ」


 お互い自己紹介をすると、ラミードさんは豪快に笑った。最初は怖かったけど、こうして話すとそんなに怖くない人で安心した。本当にお節介をかけただけなんだ、ふー何事もなくて良かった。


「そうそう、話を中断させちまってすまねぇな。領主さまのクエストを受けたいんなら、話を聞いてみたらどうだ?」

「そうですね。あの、領主さまのクエストが出たらどうしたらいいですか?」

「まったく勝手に話を進めないで下さいよ」


 受付のお姉さんは呆れたようにため息を吐いた。そうだよね、お姉さんそっちのけで話していたんだから、そうなるのは無理もないかな。それでも、そんな呆れた表情をした後、すぐに笑顔を作って説明してくれた。


「領主さまのクエストは青い紙でクエストボードに張り出されます。領主さまのクエスト用紙は剥がさずに直接受付に申し込んで下さい」

「分かりました」

「ラミード様が言っていた通り、応募者は殺到します。実力で選ぶこともありますが、それだと一部の人に偏ってしまうため公平を図るためにくじで決めることもあります。その時のクエスト内容次第ですけどね」


 私が狙うのはくじでの冒険者選定かな。実力は……まだちょっと自信がない。でも、私にも領主さまのクエストを受けられることが分かった。あとは機会を待つだけだね、目標を見失わずにすんで良かったよ。


「まぁ、あの人数の中でくじで当たるなんてことは滅多にないことだからな。実力をつけたほうが早いかもしれねぇな」


 そう言ってラミードさんは笑ったけど、領主さまのクエストって狭き門なんだね覚悟しておかなきゃ。今の内に運を鍛えておこう、っていっても運の鍛え方なんて分からないしなぁ。


 とりあえず、領主さまのクエストを受けるにはCランクに上がった方が良さそうだ。手っ取り早くランクを上げるなら町の中の仕事を請け負ったほうがいいかな。慣れない討伐だと時間がかかりそうだから。


 うん、先に町に慣れておいた方がいいし、まずは町の中の仕事を請け負おう。外の冒険に出るのは町に慣れて、Cランクに上がってからでも良さそうだ。しばらく討伐しないから体が怠けないか心配だけどね。


「領主さまのクエストについては以上となります。他に何か質問などはありますか?」

「今は大丈夫です。また何かあった時に質問させてください」

「それでは、何かありましたらお話しください」


 お姉さんとのやり取りはそこで終了して、お辞儀をしてから離れた。そして、なぜかラミードさんが付いてくる。


「俺も迷惑かけてすまなかったな。その詫びなんだが、何かあったら相談してくれ。力になってやるぜ」

「初めて来た町だったので助かります。困った時は相談させてください」

「おうよ、じゃあ俺は帰るわ」


 親切な人だなぁ、なんだかいい人に出会っちゃったみたい。何か困ったことがあったら相談させてもらおうかな。来たばかりだったから、顔見知りができてなんだか嬉しい。


 去って行くラミードさんを見送ると、私はクエストボードに近づいていく。とりあえず、冒険者ギルドを見て回らないとね。

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― 新着の感想 ―
なんか主人公珍しいタイプかも。ここまで領主様の為にって転生者がいただろうか
[一言] ラミードさん根負けしたないいおっさんだ
[一言] 外と中の両立ができるのは一応前世の記憶のおかげなのかな。 前世ほとんど覚えてないみたいだけど受けた教育分の知識は残ってるんですよね? 数学の知識が残ってるならこの世界で必要とされる算数レベル…
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