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【書籍化、コミカライズ】転生難民少女は市民権を0から目指して働きます!  作者: 鳥助
第四章 冒険者ランクD

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128.集落のみんなへ(1)

 集落を出るまであと5日。出発の準備を進めないといけないんだけど、今日は用事があって平原までやってきた。目的はメルクボアだ、詳しく言うとメルクボアの肉が欲しくて平原まで来ている。


 お世話になった難民集落のみんなに最後にできることはないかと考えた結果、美味しいものを食べてもらうことを思いついた。配給に大きな肉が入っていたら嬉しいもんね、だから頑張ろう。


 周囲を見渡してメルクボアを探す。平原にはハイアントやDランクのゴブリンもいるから注意しながら進まなきゃいけないし、その中でもメルクボアは中々見つけにくいのが難点だ。


 できる限り他の魔物を避けながら進むけど、全部を避けられることはできない。やっぱり戦闘にはなるし、そのせいで時間は取られちゃう。できれば今日一日で3体のメルクボアを仕留めたいから他の戦闘にあんまり時間をかけられない。


 そうして、平原を彷徨っているとようやく一体目のメルクボアを見つけることができた。メルクボアの前に出ると、向こうもこちらを認識したのか臨戦態勢を取る。地面を何度も蹴り、突進する機会を窺っているようだ。


 私も手を前に構えて魔法の準備をする。水球を作り上げていると、メルクボアが突進してきた。避けるタイミングを見計らい、接触する前に横に飛んで避けた。その時にメルクボアの側面に水球を打ち付けて水浸しにする。


 避けた後も手をかざして水球を作っていく。避けられたメルクボアは大きく旋回をしながら再びこちらに向かって突進を仕掛けてきた。今度も真正面からメルクボアと対峙し、接触寸前で横に飛んで避ける。そして、水球をぶつけて水浸しにした。


 最後に水球をメルクボアの正面にぶつけると準備が完了した。ほぼ全身水浸しになったメルクボアは何も気にすることなく、何度目かの突進を仕掛けてくる。手をかざして雷の魔法を溜めつつ接触寸前までその場で待つ。接触直前になると横に飛んで避けると、かざした手に溜まった雷魔法を放つ。


「ブボッ」


 感電したメルクボアは足をもつれさせ、地面の上に盛大に転がった。地面の上でビクビクと震えるメルクボア、様子を窺っているとよろめきながらだが立ち上がった。どうやらもう一発必要らしい。


 メルクボアはこちらに向き直ると、また突進を仕掛けてきた、だが今度は遅い。手をかざして雷の魔法を溜めていき、ギリギリまでメルクボアを引き付ける。そうして接触寸前まで引き付けると、横に飛んで避けて雷魔法を放った。


「ブボォッ」


 再度感電したメルクボアは体を硬直させ盛大に地面の上に転がった。その体が止まってもしばらく様子を見る、うんこれ以上動く気配がないな。そこでようやくメルクボアに駆け足で近寄った。


 近寄るとメルクボアはビクビクと痙攣して動けなくなっていた。そこで剣を抜き、剣先を頭に添えると、身体強化を体にかける。それから勢い良く剣先をメルクボアの頭に突き刺す。少しの抵抗感はあったが深くまで差すことができ、メルクボアは痙攣しながら絶命した。


「ふぅ、これで一体目」


 剣を抜いて一息つく。メルクボアとの戦闘は気が抜ける時が一度もないから緊張するな。これを後二回は続けないといけないから大変だ、いやその前に探し出すところから始めないといけないからもっと大変だ。でも、これもお世話になった集落の人のためだ、頑張ろう。


 メルクボアをマジックバッグに入れると、再びメルクボアを求めて平原を歩き始めた。


 ◇


 その日の夕方、ちょっと遅くなったけど冒険者ギルドに戻ってきた。遅くなったのには理由があって、実はメルクボアを4体も仕留めることができた。帰り道に運よくメルクボアを発見することができて、狩ることができたから嬉しい。


 でも魔法を沢山使ったから、精神的にも肉体的にもヘトヘトになっちゃった。そんな重たい体を引きずってようやく冒険者ギルドの中に入ると、中はピークを過ぎたのか冒険者がまばらにいるだけだ。


 列に並ぶと眠気が襲ってくるが頑張って起きている。そうやって眠気と戦いながら待っていると、すぐに呼ばれた。冒険者証を差し出し、討伐証明と素材であるメルクボアを差し出す。


「あの、お願いがあるのですが」

「はい、なんでしょうか」

「このメルクボアの肉を解体処理後に買い取りたいのですが、どうしたらいいのでしょうか?」

「それでしたら一度こちらで買い上げて、解体処理が終わってからお引渡しする時にお金を払ってもらえばいいですよ」


 良かった解体されたメルクボアの肉を買い取ることができるんだ。


「それでお願いしたいです」

「はい、引き受けました。今日中の解体は無理なので、明日の昼頃に来て頂けますか?」

「分かりました」

「ただいま必要な書類を纏めますので少々お待ちください」


 もう夕方なんだし、これから4体のメルクボアの肉を受け取るのは無理だよね。明日のお昼か、ついでに他の用事も済ませておいた方がいいかな。でも買うものっていっても食料くらいしかないし、んーやることがない。


 そんな事を考えている間に書類ができた。その書類にはメルクボアの買い取りの事が書かれており、判が押されている。それから解体所の場所を教えて貰い、最後に今日討伐した報酬を受け取ってお姉さんとのやり取りは終わった。


 ということは、明日はお昼に冒険者ギルドに行って、お昼は町で食べて、食料以外で買い揃えるものを買って、カルーのところに行こうかな。お肉が食べられるようになるのは二日後になりそうだね、みんな喜んでくれるかな。


 疲れた体を引きずって、町の飲食店を目指して歩いていく。


 ◇


 翌日、昼までの時間を集落で過ごしてから町を目指した。まだお手伝いには早いけど水汲みをしておいた。そういえば、魔法で出した水って飲んで良いのかな、そしたら水汲みに行く必要もないんだけど。早めにそのことに気づいていれば良かったな。


 いつも通りに門を進み、町を歩いて冒険者ギルドにやってきた。いつも来ない時間帯だからか中は閑散としていて、とても静かで珍しい。でも、今日はここには用事がない。ホールの奥にある通路へと進み、教えて貰った解体所を目指して歩いていく。


 角を一つ曲がった先に扉がある、そこが解体所だ。扉を開けて中に入ると、そこはカウンターと奥に大きな机が幾つも並べられた場所だった。奥の方では動物や魔物の解体が進められていて、部屋の中に血の匂いが充満する。それでも窓を開けているから、匂いはそれほど籠っていない。


 中へ進むとカウンターの前に座っていたお兄さんがこちらに気づいていくれた。


「いらっしゃい。どんな用事かな?」

「あの、お肉の買い取りをしたいんですけど」


 そう言って用紙を手渡すと、お兄さんは用紙を確認した。


「あー、はいはい。話は聞いているよ。メルクボアの解体も終わったから、肉の引き渡しはできるよ。ちょっと待っててね、今持ってくるから」


 お兄さんはそういうとカウンターの奥側に進んでいった。待っている間、奥の方で解体をしている光景を見る。おじさんたちが大きなナイフを持って皮を剥ぎ、部位を切り分け、余分な肉を削ぎ落している。その動きは洗練されていて職人に見えた。


 その光景を見入っていると、お兄さんが台車を押してやってきた。


「おまたせ、4体分のメルクボアだね。ここに並べていくよ」


 お兄さんはカウンターにメルクボアの肉を並べ始めた。その肉は昨日の原型を留めておらず、美味しそうな肉の塊に見えた。どれも骨付き肉になっていて、焼いて食べたら美味しいだろうなぁ。


「これで全部だ。清算してもいいかい?」

「はい、お願いします」


 メルクボアの買い取り価格を聞き、その金額を支払っていく。買い取る時よりも値段が高くなっているのは仕方ないよね。これで安かったら逆に心配しちゃうよ。


「はい、ありがとね。これ全部持っていける?」

「マジックバッグがあるから大丈夫です」

「そうか良かった。これ全部君が食べるの?」

「お世話になった人に食べてもらうんです」

「へー、それいいね。いい肉だから、絶対に美味しく食べて貰えるよ」


 そっか、いい肉なんだね。そう聞くと早く食べてもらいたくなるな。肉をマジッグバッグに入れると、お辞儀をして解体所を後にした。

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― 新着の感想 ―
ギルドに提出しないでそのまま持って帰れば良かったのでは? 解体とか難民の誰かが出来るのでは?。
[一言] 解体には興味なさげ?
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