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【書籍化、コミカライズ】転生難民少女は市民権を0から目指して働きます!  作者: 鳥助
第四章 冒険者ランクD

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124.はじめの一歩

 ホルトの町についたのは昼過ぎ頃だ。馬車の中から久しぶりに見たホルトの町に少しだけ胸が高鳴った。ようやく戻ってこれたんだ、嬉しさが込み上げてきた。


 馬車はゆっくりと南門を抜けたところで止まる、どうやらお別れの時間がやってきたみたい。ファルケさんが御者台から降りるのを見ると、私も馬車の後ろから地面に降りて馬車の前へと移動する。


 ファルケさんはにっこりと笑って迎え入れてくれた。


「リル君、お手伝い本当にありがとう。君と一緒に仕事ができて良かったよ」

「はい、私もです。ファルケさんと一緒にお仕事ができて楽しかったです」

「これが報酬とクエスト完了の報告書だ、受け取って欲しい」


 マジックバッグの中からお金が入った袋と一枚の用紙を出して渡してきた。私はそれを受け取ると、すぐに自分のマジックバッグに入れる。


「また一緒に仕事がしたいと思っていたけど、コーバスに行くんだったよね。僕的には残念だったけど、向こうに行っても頑張るんだよ」

「ありがとうございます。ファルケさん、お元気で」

「リル君もね。またどこかで出会えたらいいね、じゃあ」


 ファルケさんは御者台に乗ると、手を振った後に馬を歩かせた。離れていく馬車を見て寂しい気持ちが溢れてきたが、それをぐっと堪える。いい人に出会えて本当に良かったな、ありがとうございます。


 馬車に向かって一礼をすると、私も冒険者ギルドに向かって歩き出す。まずはクエストの報告、入金だ。それからコーバスに行く手段を見つけないとね。


 ◇


 久しぶりにやってきた冒険者ギルド、中にいる人は疎らで空いていた。早速空いている受付に並ぶとすぐに対応してくれる。


「どうぞ」

「冒険者証とクエスト完了の報告書です」

「お預かりしますね、ただいま処理をしますのでお待ちください」


 それらを受け取った受付のお姉さんは後ろを向いて作業をする。しばらく待っているとお姉さんがこちらを向いた。


「お待たせしました、報告書の処理が終わりました。あとは何かありますか?」

「コーバスに行きたいと思っているんですが、どうやって行くか分かりますか?」


 コーバスの話をするとお姉さんはとても驚いた顔をした。


「リル様はコーバスに移られる予定なんですか?」

「一度行ってみようかなって思ってまして」

「そうですか、寂しくなりますね。……すいません、私語しちゃいましたね。コーバスに行くのには二つ方法があります」


 寂しそうにちょっと俯いたお姉さんだけど、すぐに顔を上げていつも通りに戻った。


「徒歩と馬車の二つの方法があります。まぁ徒歩で行く人は稀なので馬車で行かれるほうがオススメなのですが、リル様はどちらの方法で行こうと思っていますか?」

「馬車で行こうと思います」

「そうですか、良かったです。馬車はひと月に二回、コーバス行きが運行されています。お店の場所は北側の大通りにありますので、馬車の看板を目印に見つけたら良いですよ」


 徒歩は流石に厳しいので馬車で行こう。北側の大通りか、この後行ってみようかな。お金もどれくらいかかるか分からないから、とりあえず貯金はしないで全部持っていこう。


「後の詳しい話はお店の人に聞いてくださいね」

「はい、分かりました。色々と教えてくださってありがとうございます」

「お役に立てたなら良かったです。また何かありましたら何でもお聞きくださいね」


 丁寧に優しく教えてくれて本当に助かるな。お姉さんに向かってお辞儀をすると、受付を離れた。


 ◇


 冒険者ギルドを出て、北門に続く大通りを進んでいく。注意深く辺りを見渡しながら馬車の看板を探していった。中々見つからず戻ってもう一度確認しようか、と悩んでいると馬車の看板を見つけた。


 近づいて見上げてみると、確かに馬車の絵が書かれてある。きっとここだ、店の扉を開けて中へと入って行く。


「いらっしゃい」


 するとすぐ脇に受付があり、お姉さんがイスに座って声をかけてきた。私はお姉さんに向き直り、さっそく話を始める。


「あのコーバス行きの馬車があるって聞いて来たんですけど」

「コーバス行きかい、ならここであっているよ。何人で乗るんだい?」

「一人ですが、大丈夫ですか?」

「珍しい小さなお客さんだね、お金さえ払ってもらえば一人でも大丈夫。今だったら7日後と21日後が空いているけどどっちに乗っていく?」


 ここがコーバス行きの馬車のお店らしい。どうやら二つほどコーバス行きの馬車が出ているらしいけど、どっちがいいだろうか?


「あの事前に何か用意するものはありますか? それによって行く日にちを考えようと思います」

「なら始めから説明しようか。コーバスには馬車で6日かかる。昼食は係の者が作るけど、それ以外は用意してない。寝泊まりは馬車の中だったり、外だったりするね。必要なものは小腹が減った時用の食料と簡単な寝具くらいだね」


 なるほど、コーバスには6日かかるんだね。昼食しか出ないらしいけど、朝と夜は自分で用意するしかないか。あと寝具か、寝具は今回の旅で買った物を使えば凌げそう。ということは、用意するものは食べ物と飲み物くらいだね。


 なら用意するのにそんなに時間がかからなさそうだ、7日後にしよう。


「7日後でお願いします」

「はいよ、お代は55000ルタだよ」


 うわっ、結構高かった。


「ふふ、高いって顔しているね。護衛費用とかも入っているから高くなっているんだよ」

「安全に旅をするにはお金がかかりますものね……えーっと、これでお願いします」

「はい、毎度あり」


 マジックバッグからお金を取り出して支払うと、お姉さんはそれを受け取って数える。


「はい、丁度頂くよ。それでこの木札を乗車の時に出して欲しい。これを持っていればお客とみなされて、馬車に乗れるんだ。出発は朝だよ、早めに北門まで来てね」


 赤い木札に馬車の焼き印が押された木札を貰った。これが乗車券代わりなんだろう、大切にもってないとね。


 でも、これでとうとう引き下がれなくなったんだね。決めたことは変えないけど、ちょっとした不安はまだ残っている。コーバスに行って本当に生きていけるんだろうか?


「ふふっ、もしかして馬車の旅は初めてで怖い?」

「あ、いえ……そういうのじゃなくて」

「なら、この町を離れるのが怖いのかい?」

「……そうかもしれません」


 そう、まだこの町を離れるのが怖いって思っている。早い馬車に乗っちゃったけど、21日後の馬車でも良かったんじゃないかってちょっと後悔もしている。


「コーバスについたらそんな不安なくなると思うんだけどねぇ」

「えっ、そうなんですか?」

「そうだよ。コーバスはすごいところさ。この町なんてちっぽけに見えるくらい大きくて、人がいっぱいいて、賑やかな場所だよ。ここよりいい場所さ」

「そっか……」


 コーバスってここよりも大きな町だったんだね。そうだよね、領主さまがいる町なんだもん、色々発展していても可笑しくはない。


「きっとお客さんも気に入るはず」


 そう言ったお姉さんは笑った。それだけで不安は薄れていって、楽しみな気持ちが湧き上がってきた。ここよりも大きくて、人がいっぱいいて賑やかな町、か。一体どんなところなんだろう。

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― 新着の感想 ―
ぼくしんぐがはじまりそうなさぶたいとるだとおもいました まる
[一言] こっちも寂しい気持ちになっちゃうなぁ。 物語の移り変わりが綺麗で良いな。次の街の物語も楽しみだ
[一言] 次はあいさつ回りかな~?お別れしなくちゃね
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