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【書籍化、コミカライズ】転生難民少女は市民権を0から目指して働きます!  作者: 鳥助
第四章 冒険者ランクD

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109.勧められたクエスト

 もやもやとした気持ちを引きずったまま二週間が過ぎた。私の気持ちが落ち着かなくても日常はいつも通り過ぎていく。討伐をしたり、クエストを受けたり仕事は続けていた。


 変わったといえば、ふとした瞬間に虚しい気持ちが蘇ること。働く意味を考えて、悩んで、答えが出なくて苦しくなる。


 でも、それも一瞬のこと。現実に追われて答えを後回しにしてしまうからだ。そして、ふとした瞬間に思い出しては考えてまた苦しくなる。


 今まではどんなことを考えて働いていたのか分からなくなってしまった。私はどんな風に頑張っていられたんだろう、分からないよ。


 こんなに悩んでいるのに、仕事はきっちりと終わらせることができるのは唯一の救いだ。いや、仕事をしている時は考えなくても済むから楽なんだと思う。


 仕事はいつも通り終わらせることができるのに、どうして答えがでないのか分からない。答えは仕事にはないの?


 このまま何も考えない方がいいんじゃないのかな。答えなんて出さなくても仕事はできるんだし、困っていることはない。このまま集落で暮らせるだけの仕事をするだけでもいいんじゃないかな。


 そう思う時がある。でも、そう思えば思うほど焦燥感にかられてしまい、その考えを否定するような気持ちまで芽生えてきた。一体私はどうしたいんだろう。


 何が自分にとって正しいのか見えてこない。色んなことを考えて、色んな感情に流されても、行きつく先は変わらなかった。


 ◇


 討伐を終えて冒険者ギルドに戻ってきた。気だるい疲労感に耐えながら、列に並んで自分の順番を待つ。ボーッとしながら待っていると、自分の順番が回ってきた。


 いつも通り挨拶をして冒険者証と討伐証明を差し出す。受付のお姉さんは討伐証明を確認して数えていき、清算をする。それで終わりなはずだったんだけど、今日は違った。


「リル様に紹介したいクエストがあります」

「私にですか?」

「はい、お話を聞いていただけませんか?」

「うーん、聞くだけなら大丈夫です」

「では、担当の者が行きますので、待合席で待っていてもらってもいいですか?」

「はい」


 流されるまま頷いてカウンターから離れる。それから待合席に座って担当の人が来るまで待った。


 私に依頼したいクエストってなんだろう。護衛のクエストかな、それとも違うクエストかな。考えても答えは出ないから、ボーッとしながら待つ。


 いつもならワクワクしながら待てるのに、今はそんな気分にはなれない。頑張って働く意義について見失ってしまっているから、前みたいなやる気が起きなかった。


 このクエストも受けなくてもいいんじゃないかな。私にしかできないクエストじゃないだろうし、他のやる気のある人に回して貰ったほうがいいんじゃないかな。


「リル様、お待たせしました」


 そんなことを考えていると担当者がやってきた。席に座ると話し始める。


「リル様に紹介したいクエストは行商の護衛と販売のやり取りです」


 まさかの護衛の依頼だったけど、販売のやり取りも?


「依頼者のファルケ様はエルクト商会の代表者です。エルクト商会は近隣の村に対して定期的に売買をしているところでして、今回はその付き添いとなる人を探しているようです」


 初めてになるクエストだ、行商の付き添いってことで護衛と販売の手伝いもするってことなのかな。


「仕事の内容は近隣の村までの道中、魔物から行商を守る事。村に着いたら村人への販売の手伝いをすることです」


 外の仕事と中の仕事が合わさった感じのクエストだった。これだとできる人は限られてくるので、必然と両方を行っている自分にクエストが回って来たんだなって思う。


「道中の魔物はEランクのゴブリン、Dランクのゴブリン、ハイアント、メルクボアが出てきます。Dランクのリル様はそのランクの魔物を倒してきているので実力は十分にあります」


 今まで相手にしてきた魔物だったら大丈夫そうだ。


「それと町の中の仕事も請け負っているため、販売の手伝いもできると思いクエストを紹介させていただきました。他の外の冒険者には販売のやり取りをするのが難しい方ばかりですし、魔物討伐についても中の人に任せられません」

「魔物も販売も大丈夫だと思いますが、道中で盗賊とか出ませんか?」

「この辺りに盗賊が出るという話は聞きませんね。行き来の少ない道ですから、盗賊としても割に合わないと思いますよ」


 この町から村までの道に盗賊がいないか心配だったけど、どうやらいないみたいだ。そっか、行き交う人が少なければ奪う機会も少ないから旨味はない。


「詳しい話はファルケ様から聞いていただく事になりますが、このクエストを受けてみませんか?」

「そうですね……」

「あ、すいません報酬の話をしていませんでしたね。一日2万2000ルタ、十日間の予定だそうです」


 報酬は丁度いい感じだ、悪くはない。期間はそこそこ長いができないということはない。


 できそうではあるけれど、何が何でもこのクエストを受けないといけない、という感じではないが。私の心ひとつで決まる。


 ずっと悩んでいると、担当者が声をかけてきた。


「正直申しまして、リル様以外に自信をもっておすすめできる冒険者がいません。私共としては、リル様に是非受けてもらいたいクエストになります」


 うっ、そんなことを言われたら断れないよ。というか、断る理由もなかったんだった。


 いつもと同じ環境にいたらまたうじうじ悩んじゃうし、ここは町を離れてみようかな。そしたら、自分の気持ちが固まるきっかけなんかにも出会えたりしてね。


 まぁ、そんなに美味しい話があるわけないんだけど。ここでこうしていても仕方ないしね、よし受けよう!


「私で良ければ受けます」

「そうですか、良かったです。詳しい話は、明日の朝にファルケ様が冒険者ギルドに来られますのでその時にお願いします」

「分かりました、明日の朝ですね」

「はい、よろしくお願いします」


 話し合いは終わり、担当者は一礼するとカウンターの奥へと戻っていった。


 新しいクエスト受けちゃったな。今は悩みを置いておいて、クエストに集中しよう。


 ◇


 次の日、約束通りに冒険者ギルドへやってきた。朝の早い時間だから、冒険者はまばらだ。列に並んで自分の順番を待つ。


「お待たせしました、次の方どうぞ」

「おはようございます。昨日受けたクエストの話し合いに来ました」

「リル様ですね、おはようございます。ただいま確認をとりますのでお待ちください」


 冒険者証を差し出すと、受付のお姉さんが後ろを向いて何やら作業をする。しばらく待っていると、お姉さんがこちらを向いた。


「お待たせしました。行商の護衛と販売のやり取りのクエストですね。まだファルケ様がこちらに来ていませんので、待合席でお待ちいただけますか?」

「分かりました、待ってます」


 やっぱり朝早いのか代表者は来ていなかった。お姉さんとやり取りをした後、待合席で座って待つ。


 どんな人が来るんだろうか。男の人っぽい名前だけど、女の人が来ることもありそう。とにかく、気難しい人じゃなかったらいいな。


 ボーッと列を眺めている。それらしい人は見当たらず、時間だけが過ぎていった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 依頼者のファルケ様はエルクト商が 商会ですよね
[一言] へぇ面白そうだね、楽しみ!
[一言] 内容の割に依頼料はあまり高くないよな。 護衛と販売補助で1日討伐&狩りをしてる方が高いのはいまいち。
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