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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第参章 下地構築
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参之拾玖 着席

 私が『神格姿』を得ようとした切っ掛け、『神世界』に挑む覚悟を決めたのは、東雲先輩の腕を失った姿を見たからだった。

 それを思いだした私は、みるみる表情が硬くなるのを感じる。

「凛花?」

 私の表情が変わったのを心配したのであろう東雲先輩が、覗うように声を掛けてきてくれた。

 そんな東雲先輩の優しさに、私は覚悟を決めてその手を包むように握る。

「東雲先輩、それはダメです」

「だ、ダメ?」

 戸惑いの声を上げる東雲先輩に、私は「女の子ばかりだし、男の自分が頑張らなきゃと思ってるかも知れませんけど、だからって、先輩が常に矢面に立つ必要は無いんです」と告げた。

 それから、息を軽く吸い込んで、一番伝えたかった言葉を一気に言葉にする。

「だから、私を護ってくれる先輩を護ります。お互いにお互いを護り合って、皆で乗り越えていきましょう!」

 言い終えたところで、私は軽い満足感に浸ったものの、すぐに東雲先輩の反応が気になってその顔を見上げた。

 こちらを見詰めたまま動かない東雲先輩は、私の言葉について考えてくれているんだと思う。

 自分の言葉を否定するような返しであっても、ちゃんと聞き入れて考えてくれる東雲先輩の誠実さに、私は素直に感心した。

 東雲先輩と同じ中学一年生だった頃の()()は、自分の言葉を否定するような相手の意見を聞いただろうかと考えると、彼の凄さがわかる。

 どんな反応をされるのかという期待とそして大きめの不安を抱いて東雲先輩を見詰めていると、その口元に笑みが浮かんだ。

「凛花は護られるだけじゃ嫌なんだな?」

「嫌……じゃなくて、誰一人欠けずに乗り越えたいんです」

 私の答えに、東雲先輩は「そうか」と頷く。

 それから、東雲先輩は「じゃあ、一緒に皆を護ろう。全員無事に乗りきるために」と言ってくれた。

 私は理解を示してくれたことが嬉しくて、自分でも驚く程明るい声で「はい!」と答えてしまう。

 そんな私の反応に対して、東雲先輩に笑みを深められてしまったのが、もの凄く恥ずかしかった。


「『神格姿』禁止だからね、なっちゃん!」

「仕方ないわね~~」

 舞花さんのジト目での念押しに、那美さんは頬に手を当てて溜め息交じりに返した。

 が、続く志緒さんの「なっちゃん?」という笑顔なのに、ゾクリと背中が冷える声に、流石の那美さんもたじろぐ。

「だ、大丈夫、ちゃんと、普通に引くから!」

 表情を引きつらせつつ志緒さんにそう宣言してから、那美さんは花子さんに向き直って「花ちゃん、お願い!」と伝えた。

「はい、じゃあ、どうぞ」

 花子さんは頷きつつ、私の体操着袋を利用した即席のくじ引き袋の口を腕が通せる程度に広げて、那美さんに向ける。

「意外と緊張するわね~」

 そんなことを言いながら、那美さんは手を突っ込むとすぐに一枚の紙を抜き出した。

 それから、私の方に視線を向ける。

「それで、中を開けて良いのかしら、学級委員さん?」

「え? 学級委員?」

「適任だと思うけど、経験者なんでしょ?」

 那美さんの何を言っているのという顔に、むしろ急に役職を押し付けられた私の意見なのではと思っていると、結花さんが「ユイはリンちゃんが学級委員で良いわよ」と言い出した。

「舞花も賛成!」

「リンちゃん、私、手伝うからね」

 舞花さん、志緒さんと賛同者が現れ、最後に東雲先輩が「適任だと思う」と言い出す。

 雪子学校長は「がんばりたまえ」と言い、花子さんもニコニコと笑って頷いた。

 こうなってしまえば、私の答えは一つしか無い。

「頑張ります」

 多少腑に落ちないながらも、一応中身は大人だし、歴は短くとも教員でもあったので、橋渡し役を無事務めようと、私は強く心に誓った。


 結局皆一斉に開くことになり、ジャンケンで決まった順番で花子さんからくじを引いていった。

 そうして、最後の志緒さんが引いたところで、私たち六人は円を描くように立つ。

「それじゃあ、一斉のせ、で見せ合いましょう」

 少し間延びした結花さん、舞花さん、那美さんの「「「は~い」」」という声に、東雲先輩の「わかった」という返事と志緒さんの「はいっ!」という返事が重なった。

 皆の表情が期待と軽い興奮に輝いて見える。

 ただの席決めなのに、もの凄くテンションが上がるのを実感しつつ、私は皆を見回しながら合図の言葉を口にした。


「よろしくね……リンちゃん」

「凛花、よろしく」

 私は二列目の真ん中の席となり、右手に志緒さん、左手に東雲先輩となった。

「これは観察しにくいわー」

 少し不満げにそう言った那美さんは私の前に座っている。

「舞花と離れるの初めてかも」

 首を傾げながらそう言った結花さんは私の左前、東雲先輩の前の席だ。

「お姉ちゃんが遠いのは良いけど、リンちゃんの隣が良かったなぁ」

「ちょっと、舞花!」

 私の隣が良かったなんて可愛いことを言う舞花さんは志緒さんの前、私の右斜め前の席で、自分を軽視するような発言に、結花さんが噛み付く。

 凄く楽しそうに、結花さんと舞花さんの間に挟まれる形になった那美さんが「私を挟んでじゃれつかないで~~」と声を上げると、それを切っ掛けに教室内に笑いが起こった。

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