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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第肆章 異界突入
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肆之拾肆 探知

 イメージが大きく影響する世界に強い興味を惹かれたが、同時に相手の力が強ければ、一方的に……下手をすれば何をされたのかもわからずにやられてしまうのでは無いかという想像が脳裏を掠めた。

 そんな危険な世界に子供達が挑んでいるのかと思うと、自然と体が震えてくる。

 一方で、想像のままにいろんなモノを出現させてこれたことが、自分なら大きな助けになれるかも知れないという考えに繋がった。

 そんなことを考えていると、不意に「卯木くん」と雪子学校長に呼ばれる。

「は、はい」

「今は『神世界』についてあれこれ考えるよりも、花子や子供達に合流することを優先して貰えるか?」

 雪子学校長にそう言われて、私はハッとした。

 そもそもこの実験の切っ掛けは何だったか、こちら側の世界から『神世界』を覗くことでは無かったか、好奇心に流されるままに最初の目的を忘れるところだったことに、溜め息を零して気持ちを改める。

「雪子学校長」

「なにかね?」

「狐の操作に意識を集中したいので、椅子をお借りします」

 私の言葉に、雪子学校長は少し間を開けてから「いや」と否定の言葉を口にした。

「寝ていた方が集中出来るだろう、もう一台ベッドを用意しよう」

 言うなり踵を返した雪子学校長は、一瞬のうちに私よりも高身長に変化する。

 テキパキと迷いの無い動きで、入り口とは別の扉を開くと、そこからガラゴロとベッドを転がしてきた。

 雪子学校長の入った部屋は倉庫になっているようで、ちらっと見た限りでも他に数台のベッド、椅子、机の他に、何かの儀式で使いそうな杖やらお(ふだ)、水晶玉のようなものとオカルトよりな品々も置かれている。

 それから間を置くこと無く、他のベッドに新たなベッドを一直線になるように並べた雪子学校長は、その体を子供に戻しながら「では頼む」と私に向かって頭を下げた。


 ベッドに横になった私は、全身の力を抜いて、意識が『神世界』に突入した狐に移るように強く念じた。

 すると、なんとなくもう大丈夫そうという意識が湧いてきたので、閉じていた目を開く。

 その視界に広がるのは、先ほどスマホで覗き見た桃源郷の光景だった。

 しかも、今意識が狐に移っているからなのか、桃源郷を吹き抜ける風も、僅かに薫る桃の花の香りも、なにより今までいた寒い地下室とは違う春めいた穏やかな温かさが体中から感じられる。

 成功したのだという実感に、安堵と多少の達成感を得た私だったが、こうしてのんびりと『神世界』を体験している場合じゃ無いと、自分の任務を思い出した。

 皆との合流、その為にはまずは皆の場所を知らなければいけない。

 しかし、目に入るのは、どこまでも続く見事な桃林と、遠景の山々、澄んだ青い空ばかりで、およそ災いの『種』と呼べそうなもの、あるいはそれを祓いに向かった皆の姿がどこにあるのかまるで見当がつかなかった。

『どうしたらいい?』

 そう声に出したつもりだが、狐の体だからか、それとも分身だからか、言葉は声に変わらない。

 それどころか、音が発せられた感覚も無かったので、声に出したつもりなだけで、何一つ発声に必要な器官が仕事をしなかったとも考えられた。

 いずれにせよ、今考えるのはそれでは無いと、私は大きく頭を振る。

 だが、如何に気持ちを切り替えようとも、皆を探すという点においての打開策を思い付けずにいた。

 自然と、私の中で焦りの感情が強まっていく。

『居場所がゲームみたいに探知出来れば……』

 そう思った直後、視界に重なるように、縦横に無数の光る直線が引かれた。

『なに?』

 訳もわからず頭の中に浮かび上がったグリッドにと惑っていると、それは大きな正方形の形となり、そのど真ん中中心に○に狐と書かれたアイコンのようなモノが出現しする。

 そのイメージを明確に掴むため目を閉じると念じると、黒一色を背景にグリットとアイコンが綺麗に浮かび上がった。

 私が急に脳裏に浮かんだ光景に驚く間もなく、光の格子の端の方に、○に花、舞、結、那、志、そして東、更にその6つよりも巨大な『種』と書かれたアイコンが出現する。

『これって……』

 私はそんなことを心の中で呟きながらも、答えは一つしか無いと確信していた。

 そして、他に手がかりが無い以上、このゲームのMAP表示であろう脳内のイメージを信じることにして、示された場所を目指すことを決める。

 自分の新たな能力が正しいことを確かめるため、何より皆と合流するため、私は駆けだした。


 走り出しこそ、方角が掴めず迷走しかけたが、自分の見ている方角でクルクル変わるタイプでは無く、方角固定のタイプだと理解してからは、迷わず走ることが出来た。

 当初こそ、半信半疑だったモノの、目指す先、皆と種のアイコンが示す方向へ少し駆けると、私の頭の中のMAPが性格だと言うことを実感する。

 なぜなら、私の向かう先で、突如桃源郷の景色がドーム状に切り抜かれ、そのドームの中には雲に覆われた真っ赤な空の風景が見えたのだ。

 それを見た瞬間に、そこに『種』がいるのを確信する。

 雪子学校長も言っていた通り、イメージの強い方が世界の風景を決めるのがこの世界のルールならば、そこに私のイメージを上塗りする程強いイメージが、『種』が居るのだ。

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