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今回は視点変更が多いです。

健一→雪菜→健一→雪菜の順番で視点が変更されますのでそれを踏まえてお読みいただければと思います。

 お客さんが集まっている輪をかき分けてダーツ台の前に行くと、みんなの視線が俺の方に集中している気がした。

 壁側の方に目を向けると雪菜や柚子ちゃん達も俺の方に視線を向けているのがわかる。

 2人の視線は他の視線とは違い俺のことを心配しているようにも見えた。

 

「健一、緊張してるのか?」


「緊張なんかしてませんよ」


 戸田さんが横から小声で俺に話しかけてくる。

 その様子はこの状況を楽しんでいるようにも見えた。

 

「そうだよな。お前は雪菜ちゃん達から期待されてるんだからがんばらないといけないよな」


「そうですね。俺は戸田さんと違って期待されているので」


「失礼な。水谷さんは俺のことを応援してくれてたじゃんかよ」


 俺の憎まれ口に戸田さんは敏感に反応してくる。

 戸田さんが子供っぽいのは今に始まったことじゃないのでこの対応も驚きはない。

 それよりもこれだけお客さんの視線を集める状況で、自分が予想以上に落ち着いてることに驚いていた。

 

「それではこれからスペシャルマッチを始めます。ゲームは701-STANDARD CRICKET-CHOICEのルールで行い、先に2Leg選手した方が勝利です。ラウンドリミットはCRICKETは20ラウンド、701が15ラウンド。今回はプロとの試合ということで戸田プロが常に後攻というハンデ戦になります」


「あちゃ~~、健一相手に後攻からかよ」


 ばつの悪そうな顔をする戸田さん。

 戸田さんがそんな顔をするのにもそれなりの理由がある。

 ダーツにおいて先攻は後攻に比べて、圧倒的有利に立てるため戸田さんがそう思うのも無理はない。

 先に上がった方が勝利な以上、先攻が圧倒的に有利である。

 

「それでは始めてください」


 叔父さんのセリフの後、俺は目の前の戸田さんと握手をする。

 周りは騒がしいが、俺は非常に落ち着いているので、戸田さん相手に互角以上の勝負をすることが出来る。

 この時の俺はそう思っていた。







☆★☆★







「プロと一般人の勝負って、この試合誰が得するんだろうな」


 私の隣で達也君が退屈そうにあくびをしていた。

 達也君と飛鳥が2人に冷ややかな視線を送るのに対して、周りのお客さん達はヒートアップしている。

 佐伯さんから今日の参加者はお店の常連客が多いと聞く。

 だから戸田さんのことや健一君のことを知っている人が山ほどいるため、この勝負も熱を帯びているのだろう。

 周りから2人に対しての声援がすごい。

 

「意外とあの店員さんもダーツが上手いんじゃないかな? 見るからに自信がありそうだし」


「でも相手はプロだぞ。いくら店員だからってプロより上手いわけがない。この勝負もやるだけ無駄って所だろ」


「そうね。プロより上手い一般人がいたらもうプロになってると思うし」


 2人の事情を知らない達也君と飛鳥はリラックスムードで試合を見物している。

 それに対して私の隣にいる柚子達は3人一塊になって健一君達の試合の話をしていた。

 

「柚子は今のお兄ちゃんの様子を見てどう思いますか?」


「いつもと違う」


「そうか? 私にはいつも通りにしか見えないけど。文化祭の時と同じで」

 

「あたしは余裕がない様に見える」


「柚子がそう思うならそうなんでしょう。柚子はお兄ちゃんと長い時間いるんですから」


 柚子もどうやら私と同じ考えのようだ。

 今の健一君は緊張しているのか、肩に力が入りすぎている気がする。

 戸田さんと何を話しているのかこちらからはわからないが、先程カウンターで話している時とは様子が違って見えた。

 

「雪菜どうしたの? そんな不安な顔してるけど」


「えっ、その、何でも‥‥‥‥何でもないよ」


 飛鳥は私のことを心配そうに見てくるができるだけ気丈に振舞う。

 

「それにしても雪菜が今日ここのダーツ大会に出るなんて知らなかったよ」


「ごめん。飛鳥がここの大会に出てると思わなくて」


「別にいいよ。私は今日雪菜に会えてうれしかったし。それに雪菜は今日健一君とデートしてるものだと私は思ってた」


「でっ、デート!?」


 飛鳥の発言に私は驚いてしまう。

 

「だって健一君も今日は出かけるって行ってたじゃない。だからてっきり雪菜とどこか行くのかなって」


 私はその時ばつの悪い顔をしていたと思う。

 本人が目の前で戸田さんと試合をしているから、この状況はデートととってもおかしくないのかな。

 ちなみに大会の後のクリスマスパーティーも呼ばれてるし、ある意味デートって言っても過言ではないように思えてきた。

 

「んっ? そういえばさっき誰かがあの店員さんのこと健一って‥‥‥‥」


「あっ、飛鳥、戸田さんの試合始まるよ。早く見ないと」


 そういい私は飛鳥に試合を見るように促した。

 私の発言に飛鳥は不思議そうに首をかしげながらも、試合の方に集中する。

 この時私も健一君の様子を伺うが、肩の力は全く抜けていない。

 大丈夫かなと不安に思う私と柚子をよそに健一君と戸田さんの試合が始まった。








☆★☆★







 試合が始まったのはいいが1Rから俺の調子はすこぶる悪い。

 1投目はかろうじてブルに当たるが2投目と3投目が1のシングルに当たった。

 大して戸田さんは1投目、2投目とブルに入れ、3投目は20のシングルに当たる。

 これで俺の残りスコア649に対して戸田さんの残りスコア581。

 かなりの大差が出来てしまった。

 

「まっ、次があるさ。気張れよ」


 こちらに戻ってくる戸田さんは既に余裕の笑みを浮かべている。

 悔しいが始めにここまで大差をつけられてしまっては何も言い返す気が起きない。

 むっとした表情を浮かべて俺はスローイングラインに向かう。

 しかしいまだに考えがまとまらず、なんでこんなに上手くいかないのかがわからないままスローイングラインに立つ。

 

「健一、落ち着いていけ」


 カウンターの方で佐伯さんが叫んでいるが、そんなことはわかっているし俺は至って冷静にダーツをしている。

 2Rの1投目は20のシングルに当たり2投目も20のシングル。

 落ち着いて投げたと思った3投目は5のシングルに当たった。

 

「当たらない」


 思わず小さく小声でつぶやいてしまう。

 弓長さんと戦った時はもっと上手くやれていたものが、今回は全くといっていいほど上手くいかない。

 対して戸田さんは3投ともブルに当たりハットトリック。

 俺が調子を取り戻せない間にも、その差がどんどん開いていく。

 こうして俺が原因不明の不調に悩んでいる間にも試合は進んで行き、1Leg目は戸田さんに取られてしまった。







☆★







 私と柚子の予想は的中してしまい、健一君が非常に苦しんでいた。

 肩に力が入りすぎているせいか、ブルに矢が全く集まらない。

 腕の位置やリリースポイントを修正してはいるみたいだが、そのことが逆にフォームを崩す結果になり完全な悪循環にはまっている。

 そしてそのことに気づかないうちに1Legは戸田さんに取られてしまう。


「やっぱり戸田さんってすごい。圧倒的大差で勝っちゃった」


「まぁ、素人相手だしな。あの店員も善戦したほうじゃないのか?」


 達也君はつまらなそうに試合の感想を話す。

 本当は健一君もすごいのに変な緊張のせいで、そのすごさがわかってもらえない。


「お兄ちゃん大丈夫でしょうか‥‥」


「あれは相当グロッキー状態だぞ。目が死んでる」


 茜ちゃんと朱里ちゃんそれぞれ反応が違うが、どちらも健一君のことを心配しているように見えた。

 

「雪菜、これなら私達の試合ももうすぐかもね」


「うん‥‥‥‥」


「どうしたの? 歯切れが悪い返事だけど‥‥」


「何でもないよ」


 私は飛鳥にそう返事を返した。

 

「それにしてもあの店員さんは気の毒ね。プロと対戦させられて」


「宮永さんはあの店員の肩を持つの? 俺はどう考えても自業自得だと思うんだけどね」


 達也君はいまだに健一君に対して冷ややかな視線を送っている。

 2人はまだあそこでダーツをやっている店員が健一君だってことに気づいていない。

 

「でも、あの店員さん格好いいよね。ダーツも左投げだし、なんかいい感じ」


「宮永さんは、あの店員みたいなのがタイプなの?」


「戸田さんも格好いいけどあの人も大人っぽくてすごくいいと思う」


 そのように話す飛鳥は目を輝かせて健一君のことを見ていた。

 それは見ようによっては恋する乙女のようにも見える。

 

「私はやめた方がいいかなって思う」


「雪菜はあの店員さんのこと知ってるの?」


「いや、私もさっきちょっと見ただけだけどさ‥‥‥‥その‥‥‥‥飛鳥とは合わないんじゃないかなって」


「ほっ、ほ~~。雪菜はあの店員さんにお熱なんですかな」


 私に語りかけてくる飛鳥は目を輝かせて私のことを見てくる。

 

「ちっ、違うよ。あの人とはそんなんじゃなくて‥‥」


「わかってるって。雪菜は健一君一筋だもんね」


「ちょっと、飛鳥」


 飛鳥はそう言うと笑顔でこちらの方を見ていた。

 

「やっぱり雪菜ちゃんは健一のことが好きだったのか」


「達也君、何でそんなにがっかりしてるの?」


 飛鳥の隣にいる達也君はがっくりと肩を落としていた。

 

「それよりも雪菜、柚子ちゃんどこ行ったの? さっきから見当たらないんだけど」


「えっ?」


 私は茜ちゃん達の方を見ると確かにさっきまでいた柚子の姿が見当たらない。


「茜ちゃん」


「柚子のお姉さん? 何でしょうか?」


 羽村さんは先程とは違い、冷静に試合の行く末を見守っている。

 

「茜ちゃん、柚子どこ行ったか知らない?」


「柚子なら先程、佐伯お姉さんに呼ばれて‥‥‥‥今はあそこに」


 羽村さんが指を指す方向に確かに柚子はいた。

 私はそこにいた柚子の姿を見て心底驚く。

 理由は柚子があんな所にいる理由が全くわからないからである。

 

「何で柚子がお店のエプロンつけて健一君達にドリンク持って行ってるの?」


「それは私達にもわかりません」


 私が見た柚子はお盆に2人分のドリンクを持ち、健一君達がいるテーブルに近づいていく。

 その時の柚子はまるで何かの使命を負って健一君達のほうに向かっているようにも見えた。


ご覧いただきありがとうございます。


感想をいただければうれしいです。


外側から見る試合の視点もほしいと思い書いていたらこんな風になってしまいました。

申し訳ありません。

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