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遅くなってしまい申し訳ありません

「えいやっ」


「お兄ちゃんすご~~い」


 下の方に置いてある面子を簡単にひっくり返すと俺の周りにいる子供達から歓声が上がる。

 現在の時刻は1時30分、柚子ちゃんのクラスで面子大会終了後、ベーゴマの時と同じように子供達と面子勝負をしている。

 先程窓から飛び降りたあと、佐伯さんから折檻というなの虐待を受け酷い目にあった。

 具体的にどこをどうされたとはいえないが俺の右の頬に貼られている大きい絆創膏と体に出来たあざを見てもらえれば折檻がどれほどすごいものなのかわかってもらえるだろう。

 折檻の後は柚子ちゃん達のクラスに戻り、羽村さん達に今までの一連のことを話し謝罪をした。

 窓から飛び降りるまでの一連の行為はクラスに人を呼び込むためのパフォーマンスと彼女が先生達に説明してくれたらしい。

 羽村さんはそのことで先生から注意を受けたらしいので、羽村さんには頭が上がらない。

 そのことで謝ると羽村さんは‥‥。

 

『別に気にしなくても大丈夫ですよ。お兄ちゃんこそそんな大変な時に私達の出し物を手伝ってもらってすいません』


『そんな謝られても‥‥結果的には羽村さん達に多大な迷惑かけちゃったし‥‥』


『じゃあ私達に迷惑かけた分を面子大会で人がいっぱい来るようにしてくれればいいです』


 そう言われたので張り切って面子大会を行った。

 その結果先程よりも人が来たので羽村さんの要求はかなえたと取るべきだろう。


「あ~~また負けた」


「お姉ちゃん、弱い」


 俺から少し離れた方を見ると遠野姉妹が面子で対戦している姿が見えた。

 ただ、周りから見ても今の2人の姿は異様である。

 片方はウエイトレスのひらひらな衣装にもう一方は赤い浴衣。

 両極端な服を着ている2人にクラスに来たお客さん達も興味津々である。

 多分彼女達の周りにいるのが高校生やら大学生のお客さんが多いのは彼女達の衣装が異質だからだろう。

 逆にそれが好評だったのかも知れない。

 

「柚子、もう1回やるよ」


「何度やっても、同じ」


 2人は楽しそうに面子勝負を行ってる。

 雪菜にも楽しんでもらえて何よりだ。

 先程涙を流した時はどうなるかと思ったが一安心である。

 

「お兄ちゃんの作戦、大成功ですね」


 俺の隣に現れたのはうれしそうな表情をした羽村さんだ。

 

「確かに人が来たという点は大成功だね」


「いいんですよ、朱里のことは。それに今は高校生や大学生のお客様もたくさん来ているので彼女も満足しているでしょう」


 羽村さんは水谷さんの方を一瞥すると俺の方に笑顔を向けてくる。

 水谷さんはというと今はクラスに来た高校生ぐらいの人達と楽しそうにおしゃべりしていた。

 高校生ぐらいって言うのは話している人達が私服を着ているので俺の推測である。

 

「羽村さんはあっちに行かなくていいの?」


「私は別にいいんです。軽薄な人はタイプではありませんので」


 羽村さんはどうやらナンパとかしてくる男性は嫌いならしい。

 確かに彼女の上品な雰囲気からしてみればそういう人は嫌いな部類に入るのだろう。

 

「羽村さんらしいね」


 そういい2人で笑いあった。

 俺の方はどこか苦笑いだが彼女はそんなことはお構いなしに笑う。

 

「それよりもお兄ちゃんは本当に大変ですね。クラスの人に疑われるなんて」


 羽村さんが話すのは昨日と今日起きたクラス内の事件のことだ。

 昨日のクラスを荒らした事件は俺も知っていたが、今日も同じような事件が起きているという事実は先程雪菜経由で初めて知った。

 どうやら今日の方も俺が犯人だと疑われているらしくそのことを聞いた俺は途方にくれてしまう。

 俺今日ギリギリの時間に学校にきたんだけどそんなことはクラスの人達には関係ないのだろうな。

 

「その犯人は本当に許せませんね。お兄ちゃんに罪を着せて裏では笑っているなんて」


 そういう羽村さんはどこか怒っているようにも見えた。

 先程俺の経緯を話した時も柚子ちゃんと羽村さんは相当怒っていた。

 2人して俺のクラスに乗り込もうとするのを水谷さん達と一緒に必死に止めたことがある。

 それだけ彼女達も俺のことを心配しているのだろう。

 うれしいことである。

 

「羽村さんは俺が犯人だと思わないの?」


「絶対に違うと思います。心優しいお兄ちゃんがそんなことをするはずありません」

 

 そう断言する彼女は自信に満ち溢れていた。

 

「心優しいか‥‥‥‥少し過大評価じゃないのかな?」


「過大評価なんかじゃありません。むしろクラスの人達がお兄ちゃんのことを過小評価しすぎなんですよ」


 羽村さんは今度ははっきりと怒った表情を見せる。

 

「先程柚子のお姉ちゃんから聞きましたよ。クラスのためにわざわざダーツ盤を借りてきたこともダーツの安全対策を考えたことも、その上友達のために社会人の男の人とダーツ勝負したことも聞きました」


「あいつ余計なことを言ったな」


 雪菜のほうを見るといまだに柚子ちゃんと面子で戦っている。

 彼女と目が一瞬合った際にウインクをされるが多分彼女はこっちの事情をわかっていない。

 そんな雪菜に対して苦々しい表情を浮かべ、再び羽村さんに向き直る。

 

「それに私達だってお兄ちゃんに助けてもらったんですよ。そんな人が気安く教室の装飾を壊せるはずなんてないです。むしろクラスの人達はよく平気でお兄ちゃんが犯人だといえましたね。逆に感心します」


 羽村さんは完全に怒っていた。

 眉間に青筋が浮かんでいることからも彼女の心情は察せる

 俺はどうやら彼女はおしとやかな女の子だということを訂正しなくてはならないらしい。

 こうやって人のために怒る所は柚子ちゃんの友達なんだなとも思えた。

 

「クラスの人達に会ったら一言文句を言わないと収まりません」


「そこまではしなくてもいいよ。それにクラスの人なんてここに来るわけないし‥‥」


 俺がフラグめいたことを言った瞬間、後ろからとある人物の声が聞こえてきた。

 あまりにも大きな声に後ろを振り向くとそこには雪菜と同じウエイトレス姿のひらひら衣装を着た宮永さんが立っていた。

 

「こら、雪菜。何してるの?」

 

「飛鳥‥‥どうしてここがわかったの?」

 

「佐伯さんと戸田さんから話を聞いたの。橘君もここにいるんでしょ?」


 そういうと宮永さんは首を左右に振りながら俺のことを探している。

 幸いこのクラスには人が大勢いるため、まだ俺のことは気づいていないようだ。


「あれはお兄ちゃんのクラスの人ですか?」


「そうだけど‥‥」


「じゃあちょっとお話してきますね」


 この時宮永さんに近寄っていく羽村さんが何かやるんではないかと嫌な予感がよぎる。

 彼女は元々柚子ちゃんの友達であり、彼女が親友と自負する人である。

 しかも彼女は本質的には柚子ちゃんと非常に似ている。

 もし柚子ちゃんが俺の立場を知っていたらどんな行動をとるのか手に取るようにわかる。

 それを考えたら今すぐにでも彼女を止めないといけない。

 

「あの、あなたはお兄ちゃんのクラスの人ですか?」


「お兄ちゃんって橘君の事?」


「そうです。お兄ちゃんを迎えにきたんですか?」


 羽村さんは笑顔で話しているようだが、言葉の節々にとげが感じられる。

 それに後ろから放たれているオーラがおぞましい。

 一刻も早く彼女を宮永さんの所から離さないと。

 

「橘君よりも私は雪菜の様子を見にきたんだけど‥‥‥‥橘君には今日は手を出さない方がいいって言われてるし」


「そうですか。今日だけでなく明日もお兄ちゃんは私達のクラスを手伝ってもらう予定なので、そちらのクラスの手伝いは出来ないんです」


 わざとらしく言う羽村さんに対して宮永さんは口をひくつかせていた。

 笑顔のまま怒らないのは上級生の意地だからなのかもしれない。

 

「そうなんだ。でもごめんね。橘君は私達のクラスの一員だから明日は私達の所を手伝ってもらわないといけないんだ」


「そういってまたお兄ちゃんに苦痛を与えるんですか? 散々こき使って都合の悪いことは全て押し付けたくせに」


 いかん、羽村さんもどうやらやる気満々みたいだ。

 宮永さんの表情は蒼白で怒っているというよりも自分を責めているように感じる。

 俺も人の波をかきわけやっとのことで2人の側にかけよることが出来た。

 

「あなた達のしていることはゴキ「ストップ」‥‥」


 後ろから羽交い絞めにするように羽村さんの口を押さえることに俺は成功する。

 前では雪菜が宮永さんを必死になだめていた。

 俺の方を見上げる羽村さんはこちらをひたすら睨みつけている。

 その表情は鬼のように怖い。

 

「宮永さん久しぶり。いきなりごめんね。この子がこんなこと言い出したりして」


「いや、大丈夫よ。この子は正しいことしか言っていないから」


 どうやら宮永さんも雪菜がなだめてくれたおかげで落ち着いたらしい。

 こんな所で喧嘩にならなくてよかった。

 

「橘君には今回の件で迷惑をかけたと思ってるから。本当にごめんなさい。私にもう少し力があれば‥‥」


 目の前で俺に謝罪をする宮永さんは落ち込んでいるみたいだ。

 正直彼女がそこまで背負い込む必要はないと思う。

 悪いのは全て犯人なのだから。

 

「宮永さんが落ち込むことじゃないよ。全部犯人が悪いんだから」


「橘君‥‥」


「それにしても犯人は誰なんだろうね。見つけたら絶対にクラスのみんなの前で謝罪をさせてやるんだから」


 笑いながら俺は彼女の方を向いた。

 こうすることで彼女の罪悪感が少しでもなくなればいいと思う。

 宮永さんも少しは元気が出た様なのでよかった。

 彼女もやっぱり笑顔が一番似合う。

 

「でも、本当に誰なんだろうね‥‥犯人」


 雪菜がそんなことを言った後に「証拠でも見つかればいいんだけどね」と言ってみんなで笑った。

 ただ1人羽村さんだけは神妙な表情をしていた。

 彼女の口を塞いだ手を離すと「お兄ちゃん」と彼女は俺のことを呼ぶ。

 

「そういえば監視カメラって見ましたか?」


「監視カメラ?」


 監視カメラ等は俺は聞いたことがない。

 というかこの学校に監視カメラがあること自体初耳である。

 

「でも、監視カメラはクラスに設置されてるわけじゃないわ。それこそ昇降口とか裏口とかならあるはずだけど‥‥」


「昇降口とかの映像を見れば目星だけでもつくんじゃないですか? 犯人が2日連続で犯行を行ってるなら2日連続で夜遅くに帰宅しているか朝早くに学校に来ている人が怪しいと思うんですけど‥‥」


 羽村さんの言っていることは確かに正しい。

 全員監視カメラの方までは頭が回っていないようではっとした表情をうかべている。

 

「それなら私がカメラを見せてもらえるように先生にお願いしてみるわ。先生も今回の件は相当頭を悩ましているみたいだし」


「じゃあそっちは宮永さんにお願いするね」


「任せて。絶対こんなことをした犯人を捕まえてやるんだから」


 そういう宮永さんどこか気合が入った声を聞かせてくれるのだった。

 こうして雪菜や宮永さんが登場した波乱含みの2日目も過ぎていき、文化祭も3日目を残すのみとなった。

ご覧いただきありがとうございます。


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