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「やっと終わった~。」


机に突っ伏して俺は呻いた。


今日こうして呻くのもしょうがない気がする。

何故なら面倒くさい定期テストが今日終わったのである。

なのでテストが終わった直後ぐらい、だらけるのも仕方のないことだろう。


そして今日は俺のバイトの日であり、柚子ちゃんがうちの店にご来店する日でもある。

久々の柚子ちゃんとのご対面ということもあり、今から会うのがとても楽しみだ。

ちなみに今日は学校が午前中終わりなのでバイトのシフトは2時からとなっている。

家に帰って一息ついてからバイトに行けるので気が楽で助かる。


「おい、健一。今日は暇か?」


「達也、またお前か。悪いがバイトだ、あきらめてくれ。今日もどこかに遊びに行くのか?」


「おう、当たり前だ。テストが終わったんぞ。今日は皆でパーっとやろうぜパーっと。」


こいつは、俺が今バイトだって言葉を聞いていなかったのだろうか。

達也の耳は本当に都合のいい耳である。


「また、宮永さん達とか?」


「あぁそうだよ。だからお前も一緒に行こうぜ。」


清々しいほどの笑顔で達也は俺の質問に答えた。

この表情を見るにどうやら宮永さん達との関係は順調に進展しているようだ。


これはこいつの恋人いない歴=年齢もこのままうまくいけばなくなるかもな。

ついに達也にも春が来たか。

このリア充め、爆発しやがれ。


そうこうしてるうちに宮永さんがこちらに向かって歩いてくる。

どうもこの人が来る時は俺にとってよくない話が多い。

だからここはさりげなく離れるべきだろう。

さっそく準備をしよう。


「達也君、こっちはメンバー集まったよ。」


「こっちも準備はできてるよ。」


いつからこの2人はこんなに仲良くなったのだろうか。

宮永さんなんか達也のことを下の名前で呼んでいるし。

まぁ、友人に彼女ができることはいいことかもしれない。

これでバイトに集中できるし、遊びに無理やり誘われることもないし、俺としては最高の環境になる。

後は俺がこの場を離脱するだけだ。


「橘君もどう?今日一緒にやってかない?」


「お前何やってるんだ?」


気付かれた。ひっそりと気配を消して机から離れていたのになぜ気がついた?

達也なんか俺が机から離れたことなんか全く気付いていなかったのに。

宮永さんはこれからは俺の天敵と認定しよう。

天敵と書いて友とは読まないからね。

俺、宮永さんと友達じゃないし。


「俺はやめておくよ。2人の邪魔しても悪いし。」


ここぞとばかりに押してくる宮永さんに対して、ここは毅然とした態度で『NO!!』ということが重要だ。

今の日本人は『NO!!』という言葉を言わないからな。

ひっそりと逃げようとして失敗したから作戦を切り替えたんじゃない。

絶対に違うからな。


「えー、そう言わずにさ。一緒に行こうよ。橘君のダーツやっているところ見たいよ。ダーツ上手いんでしょ。」


「宮永さん……その話は何所から聞いた?」


その時、俺の身体から冷や汗が大量に出ていたかもしれない。

表情は変わってないと思うが内心かなりヒヤヒヤしてる。

もしかしたら、俺がダーツ&ビリヤードの店でバイトをしているのがばれたのか。

いや、達也は俺がそこでバイトをしているのをしらないはずだからこの情報は漏れないはずだ。

でもどこかで店に入って行くのを見られていたら………。


「いや、達也君が『あいつはダーツが上手いんだせ。』って言ってたよ。それで『今日のメンバーに橘君もいるからあいつにダーツのことを教えてもらえよ』って言われてたんだけど?」


達也の方を見ると、あからさまに顔を俺から逸らしていた。

あの野郎、俺をだしにして宮永さんのきをひいていやがったのか。

さっきまではこいつ頑張っていたんだなとか思っていたが前言撤回だ。

こんな奴の恋なんて、どこかのゴミ箱に捨ててしまえばいいんだ。

燃えるゴミに出して、クリーンセンターの焼却炉で燃えてしまえ。

バイト先がばれる心配して損したわ。


「だからさ、1度橘君のダーツやってるところ見たいなって。だからさ、たまにはどうかな。」


上目使いでお願いする宮永さんはとても美人でかわいい。

ついお願いを聞きたくなってしまう人の気持ちもわかる。

現に俺の隣にいる裏切り者なんかはもう宮永さんしか見えていない。

ただ、このお願いだけはどうしても聞けない。

今日は柚子ちゃんがお店に来るのだ。

柚子ちゃんとの約束を裏切るわけには行かない。


「ごめん。俺は他の所ではダーツをやらないんだ。それに今日はバイトで重要なことがあるからそっち優先じゃないとだめなんだ。だから宮永さんには申し訳ないけど今日はなかったことにできないかな?」


俺の言葉を聞いて、何やら思案している宮永さん。

そして、1回うなずくと「わかった。」とだけいう。

宮永さんは意外に物分かりがいいのかもしれない


「じゃあさ、駅まで一緒に行こうよ。それぐらいならさ、橘君もバイトに間に合うから大丈夫でしょ。」


物分かりはよくありませんでした。

誰だよ、意外と物分かりがいいかもって言ったの。

全く引き下がる気配がないよこの子。


「俺は自転車だから駅行っても仕方ないよ。それに俺なんかいなくたって充分に楽しめるでしょう。」


「お願い。そこを何とかしてほしいの。忙しい橘君には申し訳ないけどお願い。」


そういって、宮永さんは手を合わせてお願いをして来た。


俺にはここまで彼女が俺にお願いをする理由がわからない。

第1に俺と彼女はそこまでの面識がないのになぜここまで俺に絡んでくる?

そんな面識のない相手にここまで頭を下げてお願いしてくるとは一体どういうことなのだろう。


ふと脇腹にコツンと何か固いものが当たるのがわかる。

横を見ると達也は俺の脇を肘でつつきながら、「一緒に行こうぜ。」といってくる。

ここで俺が無理やり断ったら、きっと俺は悪者だろう。

まぁそれでもいいとは思う。

俺はクラスでも影が薄いし、いてもいなくてもいい存在なわけだしね。


「申し訳ないけど……。」


「橘君お願い。私のためだと思って。」


今度は宮永さんは俺に深々と頭を下げた。

美人の女子生徒が何のとりえもないダサくて地味な少年に頭を下げる行為をしたことで、周りの生徒ががやがや言ってる。

クラスで1、2を争う美少女が頭を下げて、しかもその約束を断ったとなったらさすがに大問題になるだろう。

ここまで言われたらさすがに俺も行かないわけにはいかない。


「わかった。わかったから頭を下げないで。途中まで一緒に帰るから頭を上げて。」


「ありがとう。じゃあさ、みんな呼んで準備するからちょっと待ってて。」


そういうと笑顔を浮かべる宮永さんは、俺の顔を一瞥し軽くウインクをして女子グループの方へ向かって行った。

これはもしかして彼女の策略なのか?

俺としたことがまんまとはめられてしまった。


「何なんだ、あれは。」


「健一、俺がお前に言えることはただひとつだ。お前なんか爆発してしまえ。」


こちらを見る達也が冷たい視線を投げてきたのはこの時はよく覚えている。

はて、俺はやつに何をしたんだろうか?

それがわからないまま渋々俺は達也とともに教室を出た


ご覧頂きありがとうございます。


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